殺戮にいたる病 – 事前に調べずに読んで欲しいサスペンス・ホラーの傑作

投稿者: | 2023年6月8日

評価・レビュー

☆5/5

女性をターゲットにした猟奇的連続殺人事件を犯人 蒲生稔、元刑事 樋口や関係者の視点で追ったサスペンス・ホラー。

今しがた読み終わったのですが、カタルシスというか、呆然感が半端ない傑作でした。

結構グロい表現も多いので、そのあたりの耐性があり、ミステリやサスペンス好きなら楽しめると思います。

ただ、事前に情報は入れずに読みたい作品かなと。というのも、ある程度わかった上で読むと面白くありません。

ですので、未読であれば、情報を調べずに読んで欲しいなと思います。

結構前に書かれた作品なので、時代背景などは少し古めかしさがありますが、そこは歴史モノを読むような感じで考えれば、問題無いかなと。


ちょいネタバレありの感想

冒頭で本作をサスペンス・ホラーと書きましたが、実際にミステリです。これね、ミステリとして読んだら、面白さが半減してしまうので、敢えてサスペンス・ホラーと書きました。

著者の我孫子武丸先生は、綾辻行人先生などとともに当時新本格と言われたミステリ作家の1人です。自分も当時は1、2冊、我孫子武丸先生の本を読んだ記憶があります。詳細は覚えてないけど。

で、最初ミステリかなと思って読んでいたのですが、犯人も明示されているので、ハードボイルド系のサスペンスなのかなぐらいの感じで、読み進めていたところ、最後に「!」という感じでやられました。

ああ、感じていた違和感はコレかと。

言ってしまえば叙述トリックと言われるもので、わかって読んでしまうと、アラ探ししてしまうので、つまらないんですよね。

何だろうな、マジックのタネがわかっている状態で、マジックを見るみたいな感じになるので、確認作業になってしまうわけ。

だから、叙述トリックが面白いという情報から手に取った人は、面白さが半減しちゃうだろうなと。ネタバラシされているに等しいので。

自分がめちゃくちゃミステリを読んでいた頃だったら、結構すぐに気づくなと。ただ、20年ぐらい本を読む時間がなかったこともあって、久しぶりに読んでいるので、そのあたりの感覚が結構鈍くなっていて、逆にそれが本作のカタルシス感、呆然感を高めてくれて、とても良かったです。

そういう意味で、前情報無しで読んで欲しい作品だなあと感じました。

今は、殊能将之先生のハサミ男を読んだ時みたいな感覚があって、余韻を楽しんでいます。いやあ、素晴らしい傑作。

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