すべてがFになる ミステリ小説レビュー

投稿者: | 2021年6月23日

すべてがFになるとは

天才工学博士 真賀田四季が住む孤島の研究所にゼミの一貫で向かったN大助教授 犀川創平と学生 西之園萌絵が、部屋から出てきたウエディングドレス姿の死体に遭遇し、密室殺人事件に巻き込まれるという話。

森博嗣先生のデビュー作で1998年作品。現在も続いておりミステリ小説好きなら誰でも知っているメフィスト賞 第1回受賞作で、メフィスト賞はすべてがFになるに賞を与えるために創設された。

フルタイトルはすべてがFになる THE PERFECT INSIDERでその後に続くS&Mシリーズの1作目。

ゲーム、ドラマ、アニメ化された人気作品。

評価

☆5/5

個人的に小説が面白いとはじめて思った作品で、かなり思い入れがあります。まず、表紙がシンプルでセンスが良くて格好良いのが印象的でした。

犀川創平先生はほとんどキャラクターとしては塩味という感じなのですが、そこが理系の読者にとっては理解しやすいところかなと思います。真賀田四季も含め、登場人物がかなり理系寄りで、理系の人であればその思考回路に共感できるでしょう。本作の最大の魅力は個人的に、この理系の人の考え方が結構リアルに描かれている点だと思っています。

もちろんミステリ小説としても面白いのですが、特に派手な演出があるわけではなく、トリック自体も論理的で淡々としているので、エンタメを期待するとちょっと違うかもしれません。当時、講談社のミステリ2枚看板でった京極夏彦先生の作品に出てくる京極堂や榎木津礼二郎などと比較すると、よりそれが顕著に感じます。ですので好みが少し分かれるのかなと。

個人的には全体的に冷たいソリッド感のある文章やストーリーが好きで、その後のシリーズもすべて読んでいますし、発売後すぐに購入していました。

個人的にS&Mシリーズで一番好きな作品は、今はもうないなのですが、それもこのすべてがFになるから読み進めないと面白さが伝わりにくいので、ぜひすべてがFになるから読んでほしいなと思います。

20年以上前の作品なので、内容で古さを感じるところがありますが、個人的には名作ミステリの1つと言えるでしょう。


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