比較すべき七条件 主、将、天地、法令、兵衆、士卒、賞罰 孫子を学ぶ

投稿者: | 2020年12月16日

故校之以計、而索其情。曰、主孰有道、将孰有能、天地孰得、法令孰行、兵衆孰強、士卒孰練、賞罰孰明。吾以此知勝負矣。

故に、これを校(くら)ぶるに計を以ってして、その情を索(もと)む。

曰く、主孰(いず)れか有道なる、将孰れか有能なる、天地孰れか得たる、法令孰れか行わる、兵衆(へいしゅう)孰れか強き、士卒孰れか練(なら)いたる、賞罰孰れか明らかなる、と。吾、これを以って勝負を知る。

私的意訳:

まずはこの五事の情報を集め、次の7項目について比較する。

  • 主(君主)はどちらが道(道徳的な規範や民の意)を有しているか?
  • 将(将軍)はどちらが有能か?
  • 天地(タイミングと地の利)はどちらが得ているか?
  • 法令はどちらがしっかり実行されているか?
  • 兵衆(軍隊)はどちらが強い(数が多い)か?
  • 士卒(兵士)はどちらがより訓練されているか?
  • 賞罰はどちらが公正に行われているか?

この7項目を比較すればどちらが勝利するかわかる。

比較する七条件

五事(道、天、地、将、法)をもって、自分と相手の戦力状況を調査し、七つの比較条件に照らし合わせていきます。

具体的には、

  • 主(君主)はどちらが道(道徳的な規範や民の意)を有しているか?
  • 将(将軍)はどちらが有能か?
  • 天地(タイミングと地の利)はどちらが得ているか?
  • 法令はどちらがしっかり実行されているか?
  • 兵衆(軍隊)はどちらが強い(数が多い)か?
  • 士卒(兵士)はどちらがより訓練されているか?
  • 賞罰はどちらが公正に行われているか?

です。これらの比較によって勝敗がわかると言います。

兵衆については、強さと書かれていて、訳も強さとされることが多いですが、個人的には、数だと思います。士卒で訓練の話が出ているので、それが兵士の強さ。だから兵衆は数のことではないかなと。そう考えると、結構スッキリします。

適用範囲が広い七条件

例えば、サッカーで考えれば、主は監督ということなるでしょうか。将はもちろん選手ですが其の中でも中心になるリーダーと言えるでしょう。天地は天候やピッチコンディション、ホーム・アウェイですね。

法令はチーム内のルール規範と言えそうですが、チームの戦術がしっかり固まっているか?とも言えそうです。兵衆はトータルのチーム戦力と表現できそうです。士卒選手たちの戦術理解度とそれを実践できるかどうか。賞罰は言わずもがなですね。

それらを比較すれば、試合の結果が見えてくるというわけです。実際に、サッカーの試合では、弱小と言われているチームが、ビッグクラブを倒すジャイアントキリングが起きることがあります。

1回だけなら運が良かったということもあるでしょうが、それが何回も続いたときは、やはり実力と言えます。そのような時に、そのクラブの強さをはかる上で7つの条件から掘り下げていくと、わかりやすいかもしれません。

テクニックがある素晴らしい選手ばかりを集めたとしても勝てないのがサッカーです。それは単純に将の項目しか比べていないからと言えるからかもしれません。

留之と去之の解釈

上記に続いて以下の文言がある。

将聴吾計、用之必勝。留之。将不聴吾計、用之必敗。去之。

もし、吾が計を聴かば、これを用いて必ず勝たん。これに留まらん。もし吾が計を聴かずんば、これを用うるも必ず敗れん。これを去らん。

孫子の上記教えを聴けば必ず勝ち、聴かなければ必ず負けるという意味。

ここで、留と去については、諸説あるようです。留(とどまる)というのが、孫子自身であるという説が一般的なのかなと思います。

その場合は、将が「もし」と訳されるようです。

ただ、個人的には流れとして、留まるのは、将軍自身のことかなと思います。つまり、孫子の言う五事と7つの条件を比較し、勝てる場合のみ勝負を挑む将軍は必ず勝ち国にずっと居ることになるだろうし、孫子の言うことを聞かない将軍は必ず負け国を去ることになるだろうという意味。

というのも、孫子の兵法は、孫子がいなければ勝てないという話ではないので、孫子が留まるかどうかに意味はないというのが個人的解釈です。

じゃないと、孫子がいなければ戦に勝てないという結論になってしまうからです。

孫子が呉王 闔閭(こうりょ)に仕えたときには、孫子の兵法は現在の十三篇が出来上がっていました。しかし、孫子の兵法は、現代に伝わっていく中で一部改変されたのではという話があり、この文言は孫子自身が呉王に謁見した時の話ではないか?という説になっているようです。

個人的にはそのまま受け取って良いのかなと思います。実績を常に上げている人はその組織に留まることになると思いますし、損失を与えてばかりいる人はその組織を去ることになるというのは、普通のことですよね。

曹操と袁紹

三国志の中で、曹操と袁紹が戦う際、兵力では袁紹軍が圧倒的でしたが、曹操と袁紹を比較すると、曹操の方が10の点で優れているから、曹操が勝つと郭嘉が述べます。

10とは、道・義・治・度・謀・徳・仁・明・文・武です。

「道」においては面倒な礼・作法に縛られる袁より自然体である曹が優れており、「義」においては天子に逆する袁より奉戴を目指す曹が優れており、「治」においては寛(締りの無さ)を以て寛を救おうとする袁より厳しい曹が優れており、「度」においては猜疑心と血縁で人を用いる袁より才能を重んじる曹が優れており、「謀」においては謀議ばかりして実行しない袁より曹が優れており、「徳」においては上辺を飾る人々が集まる袁より栄達と大義を目指す曹のほうが優れており、「仁」においては目に触れぬ惨状を考慮出来ぬ袁より曹が優れており、「明」においては讒言が蔓延る袁より曹が優れており、「文」においては信賞必罰な曹が袁より優れており、また、「武」においては虚勢と数を頼みにする袁より要点と用兵を頼みにする曹が優れている

郭嘉 – Wikipedia

天地以外の六項目をより詳細に比較しているように個人的には感じました。

あとは、タイミングと戦う場所だけという気がしますね。

リンク

孫子を学ぶ 始計篇 | ネルログ

孫氏を学ぶ 作戦篇 | ネルログ

※本内容は個人的に調べてまとめたものです。一般的な内容とは若干異なる点があることをご了承ください。