100%得する話し方 書籍レビュー 話し方についてあまり書かれていない話し方の本 これは良書

投稿者: | 2022年2月7日

評価

☆5/5

話し方とありますが、本書は話し方の方法はほとんど書かれていません。それが本書の最大の特徴でしょう。

無理に話すのではなく、まず相手の話をちゃんと聞くというスタンス。

冒頭で「人はあなたの話にまったく興味ありません」と述べていて、これは概ねそうだと自分も思います。言葉としては人は自分の話をしたがるなどと表現されることがありますね。そして相手にスポットライトを充てることをメインにしています。

個人的にはかなり学びの多い本でした。多くの人に読んで欲しい一冊。

本書で個人的に興味深かった点を3つ取り上げるとしたら、

  • 人は基本的に自分の聞きたいようにしか相手の話を聞いていない
  • 三角巾メンタル
  • リアクションはオーバーくらいがちょうどいい

です。

人は基本的に自分の聞きたいようにしか相手の話を聞いていない

これは言われて初めて気づきました。確かに自分の場合、人の話を聞いている時に、話をどうもっていくかとか、どうしたらみんなが話をしてくれるかとか、会話のバランスを考えていることが多いです。

場をコントロールするという感じ。ただ、別に自分の主張をしたいわけではなくて、一方的に1人の言い分が通らないように意識しています。

ただ、それによって自分自身が相手の話を聞いていないというのも確か。一時期ファシリテーションという言葉が流行りました。会議を活性化させるファシリテーターを置くというのが一般的かなと。ただ、このファシリテーターって結果としては話を聞いて無いんですよね。司会進行みたいな感じなので。そう考えると、ファシリテーターはその会議に全然関係ない人が適切なのかもと思いました。

三角巾メンタル

これは初めて聞きました。人と話す時に相手が死んでいるところをイメージするという手法です。野菜に見立てるとかは聞いたことがありますが、まさか死んでいるところをイメージするとは。

三角巾を頭に付けると死んでいるところのイメージしやすいという話で、いわゆる定番の幽霊的なやつです。

そうすると、この人死んじゃうのに自分のために時間を使ってくれてありがたいという気持ちになり、自然と会話の舞台から降りることができ、さらにその人の話が通常よりも尊く感じられるというもの。

はあ、これは凄い考え。

でも、ふと思ってみると、正しいかもしれないと思いました。その典型例が親。自分が若いときは親の言うことなど一切聞く耳持たない状態でしたが、親が歳を取り、亡くなる可能性が出てきた歳になったら、親の話をちゃんと聞こうかなという気になっています。昔よりも素直に親の話も聞けるようになりました。

そう考えるとアリだなあというのが個人的見解。

リアクションはオーバーくらいがちょうどいい

本書では、映画 マトリックスのように仰け反ったり、目を大きく見開いて驚いたり、相槌を大きくしたり、笑いを増やしたりという方法が書かれています。

個人的にも話を盛り上げようという時は、かなりオーバーアクションをするようにしています。自分の場合は、実は本からの知識ではなく、学生時代の苦い思い出から得られた経験です。

ある女性に好意を持っていいて、別なルートから相手も自分に対して悪い印象はないということを聞いていたのですが、なかなか一歩が踏み出せずにいました。そうこうしていたら、その女性は他の男性と付き合うことになってしまいました。まあ、そこまではよくある話。

ただ、その付き合った男性というのが、別にイケメンとかではなく、高卒のフリーターだったんですよね。その男性は結構モテていました。で、それが何故なのか?と疑問に思い、かなり観察しました。いろいろな要素はあると思いますが、個人的に一番印象的だったのがオーバーリアクションです。彼はよく手を叩くことがあり、個人的にもそれを真似してみました。そうすると、周りからの印象が結構変わったんですよね。

本書でも手を叩くというオーバーリアクションが紹介されていて、かなり納得できました。


私的メモ

その他個人的に気になった点などのメモです。

会話の舞台から降りる

意識的に降りることで、話している人にスポットライトを当てやすい。役割を明確に分けることで、話を聞く立場になれるということかなと。

自己肯定感の低さ

著者は話すのが苦手だった理由として話し方などではなく「自己肯定感の低さ」を挙げています。確かに、個人的にも以前は自分なんてという意識が強く「自己肯定感の低さ」があったように思います。

人は「あなたが真剣に話を聞いているかどうか」だけを見ている

これも概ねそうだと思います。話しているときって、相手の反応が気になりますからね。

返報性の原理

これはよく出てきますね。ここでは自分にスポットライトを当てて話を聞いてくれる人に好感を持ち、その人に恩を返したくなるという文脈で出てきます。言われてみるとそのとおりと思いますが、結構気づきにくいなと感じました。

人は、過大な期待をして、自分をコントロールしようとする人から逃げるものです

これもまさにそのとおりですね。なんとなく心理的安全性と通ずるところがあるかなと。心理的安全性が確保できない場所からは逃げたくなるということ。

スポットライトを相手に当て自分と比較しない

これは結構修行が必要かも。ただ、自分がインタビュアーの仕事をしていた時は、結構うまく出来ていたかもと思いました。というのも、インタビューする人が凄いプロフェッショナルたちばかりで、そもそも自分と土俵も違いますし、比べるのもおこがましいというのがありました。また、仕事でしたし自分の言葉は編集部という名前で載るので、自分とは関係ないという意識もありましたね。

教えるのではなく、自分で考えるように導く

上司部下の話で出てきた言葉。これは正にその通り。自分も上司だったときに部下を育成しようと何とかしようとして躍起になっていましたが、それを諦め部下中心で動き始めたらうまくいくようになりました。求められれば答えることはありますが、基本的には部下本人に考えてもらい、自分はあくまで補助という感じ。部下のやりたいことを実現するために上司の権限を使うみたいな。

自分の言い分を聞いて欲しいなら最初に旦那さんの言い分を聞く

これは結構わかりますね。ついつい自分も話したがるのですが、なるべく相手の言葉を先に聞くように心がけています。話の腰を折らないように全部言ってもらい、まずそれを受け入れる感じです。

相手のビジョンを聞きなさい

営業の話。自分の商品やサービスの話は聞かれるまで言わないというのがポイントだそうです。確かに営業営業している人だと、最初の段階で壁ができちゃいますよね。たまたまその商品が欲しいと思っていれば別ですが、基本的にはそういうケースは少ないです。だから、営業は数が大事と言われるわけですが、本書の方法なら数をこなさなくても良さそうです。営業をしている時に知っていれば、もっとうまく行ったろうなあと思います。

合いの手を制するものは会話を制する

これは様々な書籍で言われていますね。相手の話すペースに合わせて相槌を入れる(ページング)のと、「は・ひ・ふ・へ・ほ」を使うという手法が紹介されています。「は・ひ・ふ・へ・ほ」は「へぇー!」が一番わかり易いですね。また、自分の場合、「ほう」も結構使っていました。

オウムリターンの法則

いわゆるオウム返し。オウム返し自体は相手を馬鹿にしていると思われることもあるので、単純なオウム返しは良くないと言われています。本書では、「は・ひ・ふ・へ・ほ」を加えたり、「それ素敵です!」「そんなの聞いたの、初めて!」などの言葉を組み合わせて、単純なオウム返しを避けています。一般的に言われている「さしすせそ」と似ています。

また、オウムリターンは怖い上司ほど効くとのこと。簡単に言えば、オウムリターンをすることで相手の頭の中が整理され、支離滅裂なことを言っていることに気づくからだそうです。オウムリターンは自分の考えを述べるわけではないので、ある意味危機回避能力を高めるのにも使えそうです。

褒めるのが基本だが褒めるところが無い時は?

著者は褒めるところが無い人などいないと断言します。これは個人的にも同意です。その例として本書ではマイナスのバイアスについて述べています。つまり、相手をマイナスのバイアスがかかった状態で見ているとマイナスなところしか見えないということです。BRAIN DRIVEN パフォーマンスが高まる脳の状態とはでも語られていましたが、人間というのはそもそも相手のネガティブな面を見つけやすいもの。ですので、意識して相手の良いところを見ないと、普通にしているだけでは相手の良いところが見えないですね。

写真を撮る

これは非常に特殊というか、著者の方のセンスかなと思います。会った人と写真を撮り、次回会う前にその写真を見て、会った時に前回と違っている点を指摘するという方法です。最近ではSNSなどで会った人との写真を上げる人もいますし、昔に比べると写真を取られることへの敷居は低くなったのかなと思います。

有名人にも効く

本書の聞く技術は有名人にこそ効くと筆者は述べています。というのも、有名人の場合、「くれくれ」で接してくる人が多いため、逆にしっかり話を聞いてくれる人がほとんどいないからです。いやあ、これは確かにそうですね。多くの人が有名人に対して何らかのメリットを求めて会いにいくわけで、純粋に話を聞いてくれて面白がってくれる人に対して好感を持たないわけはありません。

縦軸思考と横軸思考

相手と話す時に縦軸思考ではなく、横軸思考で接すると相手と比較をしなくなるので良いという話。どうしても相手との人間関係を上下関係(縦軸)で考えがち。そうなると、どっちが偉いとか、どっちが凄いみたいな感じになり比較してしまうというもの。男性の場合は特にそうですが、どっちが上かみたいなことを意識する人がめちゃくちゃ多いので。筆者は「それぞれが自分の場所をチョイスしてなりたいものになっている」と横軸で考えると比較しにくくなると述べています。ある意味、人は人、自分は自分ということですね。

会話の内容は覚えられないのでメモする

確かにそうですね。その時に、相手の価値観についての話をメモせよと書いています。

セミナー講師をクライアントにする

これは非常に面白いアプローチだなと思いました。セミナーというのは所謂客商売なわけです。そこに参加するというのは、自分がお客なわけですが、それを逆にしてしまうという手法。詳しくは本書をご覧いただければと思いますが、これは新しい手法だと思いました。ある意味、ミイラ取りがミイラになる感じ。

自分の意見を付け加えない

超一流の雑談力では相手の話を返すときに自分の意見を付け加えることで、話を聞いているように相手が感じると書かれていました。しかし、本書では「オウムリターンをする場合には、絶対に自分の意見や考えを付け加えてはいけない」とまったく逆の意見を書いています。これは興味深いですね。

本書ではその例として会話泥棒を出しています。言うなれば相手の話にのっていたのに、いつの間にか自分の話がメインになってしまうということ。前述したように、多くの人は相手の話を聞きながら自分が何を話すかを考えいるわけです。そして、それを話していまいがち。結果として、相手にスポットライトを充てるべきなのに、いつのまにか自分にスポットライトが充たってしまうわけです。

会話泥棒のデメリットとしては、相手が話したかったことが話せず終わってしまうためストレスが溜まることでしょう。これはいろいろと感じるところがありますね。

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