ソロモンの偽証 映画レビュー 圧倒的な引き込み力が素晴らしすぎる

投稿者: | 2022年4月11日

評価

☆4/5

中盤までの引き込み力が半端ない作品。とにかくグイグイと読者を引き込んでいくのが特徴。映画は前編と後編に分かれていて、前編の事件編を見たら後編の裁判編が気になって仕方なくなってしまい、一気に観てしましました。

原作は宮部みゆき先生の同名小説。宮部みゆき先生の作品はデビュー作から何作か読んでいますが、ソロモンの偽証は未読です。ただ、流石宮部みゆき先生だなあと感じさせる内容でした。

ただ、オチ的なところは若干弱めかなあという印象。よく言えば現実的というか、丸く収まっているとうか、読後感がほんわかしているというか。

本作もその点でやはり評価が分かれるところかなと。個人的には前編が圧倒的な面白さで☆5、後編が☆4という感じです。

話としては

ウサギの世話のために朝早く学校へ登校した藤野涼子(藤野涼子)と野田健一(前田航基)は、通用口で柏木卓也(望月歩)が雪に埋もれ亡くなっているのを発見してしまう。事件は自殺として片付けられたのだが、柏木がいじめっ子たちに屋上から突き落とされたという匿名の告発状が届き、さらにマスコミ報道によって情報が錯綜し事件にしこりが残っていた。

藤野は生前の柏木からいじめを見て見ぬ振りをしたことを指摘された記憶がずっと心に残っており、この事件についても自身の中で消化しきれないでいた。そこで友人たちや柏木の葬式に来ていた他の学校の生徒で柏木の友人 神原和彦(板垣瑞生)と相談し、学校内裁判を開くことで真実を暴くことにした。果たして柏木は自殺だったのか? それとも殺されたのか?

はじまりは学校裁判の23年後。主人公の藤野が母校に先生として赴任し、校長と過去を振り返るというはじまりです。ですので、事件自体は23年前の話。公開当時は2013年なので、時間軸的には1990年代という感じでしょうか。

そのあたり細かいところも配慮されていて、90年代を思わせる描写が結構あります。逆に言えば、90年代を知らないと、違和感はあるかも。

生徒たちの演技が素晴らしい

本作のために生徒のオーディションが開催され、主役の藤野涼子役が藤野涼子として女優デビューという異例の採用。グッと引き込まれる素晴らしい演技でした。

また他の生徒役も多くの方があまり知られていないこともあり、変なリアル感もありましたね。

個人的には先生役の黒木華さんがやはり光っていたなあと。作品ごとに違った顔を見せてくれるので、素晴らしいですね。


宮部みゆき先生の素晴らしさ

これは個人的にですが、宮部みゆき先生はとにかく設定の上手さや文章の読みやすさから、序盤から中盤が群を抜いて圧倒的に素晴らしいです。とにかく、どの作品を読んでもグイグイ引き込まれていくんですよねぇ。

本作でもそれをすごく感じました。設定が秀逸で、構想15年、執筆9年というのもうなずけます。

個人的に宮部みゆき先生は、この手の引き込み力が日本でトップじゃないかと勝手に思っています。ただ、序盤から中盤の盛り上がりに比べると終盤が若干弱めというか、オチが若干インパクトに欠ける印象があります。これは難しいところで、突飛なインパクトのオチだから良いというわけではなく、好みの問題もあるかなと。

また、宮部みゆき先生のオチというか、小説の読後感って、どの作品も「いやあ面白かったあ」という感じなんですよね。あまり心を抉るような終わり方が無いというか。これは勝手な想像ではありますが、読者に楽しんで読み終えてもらいたいというようなポリシーがあるのかもしれません。

そういう意味では宮部みゆき先生は面白い小説の王道を書く作家なのかなと思います。全作品読んだわけではありませんが、個人的に読んだ作品はすべてハズレは無かったので。

ソロモンの偽証は韓国でもドラマ化され、日本でも2021年にWOWOWでドラマ化されています。

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