目次
評価
☆3/5
評価が高かったので読んでみました。本書の要点としては、認知の4点セットを使い自身についてメタ認知し、自分の経験などから自身の成長を目指すというもの。
認知の4点セットとは、
- 意見
- 経験
- 感情
- 価値観
で、ある事象を上記4つに切り分け可視化することでメタ認知ができるという話。
本書では自身の成長だけでなく、他者に対しても同じように行い対話しながら、チームとしての成長を促す方法(学習する組織)について例を元に解説されています。
実践は難しい
本書を読んで感じたのは実践がかなり難しいということ。数回行うのは可能だと思いますが、これを続けるのはかなり厳しいのではないでしょうか。
実際に本書の最後の「おわりに」では、様々な企業への導入に失敗し、「大人では遅すぎる」という結論に達し、子どもたちへの教育に舵を切っています。
つまり、現状の問題解決には役立たないと筆者自身が述べているのです。
本書で気になったというか問題な点
本書の手法は個人的に面白いなと思いますし、とても勉強になりました。しかし、実は本書を読んで個人的にちょっと違うかなと感じた点がいくつかあります。
もっともわかりやすいのは、「的を射たフィードパックをする」の項目で、資料を期日に提出しない社員に対しての対処方法です。
認知の4点セットを使い対話をして、本人との合意まで持っていくのですが・・・、そもそも前提条件として何度も期日を過ぎて資料を提出する社員は、何かしら課題を抱えている可能性が高いです。
もっと具体的に言えばうつ病です。というか、自分も以前そのような部下がいました。仕事の期日が一切守れず、仕事の切り分けをして1つずつ処理するようにしても、全然うまくいきませんでした。結果としてうつ病だったのです。
そのような人に対して、追い詰めるようなやり方は、ちょっといただけません。
うつ病はわかりやすい例ですが、人間というのは感情のある生き物で、様々な外的要因でメンタルが変化し、メンタルによって仕事のパフォーマンスが大きく変化します。そして多くの場合、解決すべきは論理的な仕事の仕方ではなく、メンタルの方なのです。
ある大企業の離職率が高い部署の問題
自分は大企業にも所属していたことがあります。その企業の中でもダントツで離職率が高い部署は、全体的にどんよりしており、閉塞感をすごく感じるところでした。しかし、そのことに部長たちは一切気づいておらず、なぜ離職率が高いのかがわかっていませんでした。
議論されているのはタイムカードの時間と労働時間でしたが、実際そこに記載されていない労働時間が多く、表面上は労働基準法を守っているだけだったのです。そりゃあ辞めていきますよ、何も言わずに。
問題はフレームワークなのか?
結局、人間関係がうまくいっていないと、どんなに素晴らしいフレームワーク(ツール)であっても機能しません。
つまり何が言いたいかというと、この筆者の方は実務経験が不足しているのではないか?ということです。
人の心を蔑ろにして、フレームワーク(ツール)を無理やり導入しようとしても、うまくいきません。そこが本書で大きく欠けているところかなと。正直、資料を何度も忘れる社員に本書のやり方で追い詰めたら確実に休職か、退職、下手したら最悪の事態になる可能性もあります。
まあ、あくまで個人的経験からの意見なので、参考程度に。ちなみに、自分も当事者になったことがあり、どれほど魅力的な内容であっても全く興味が湧かず、動けない日もありました。そういう人がいることを認識した上で本書の実践がされると良いなと思いました。
私的メモ
その他私的メモ。
リフレクションとは
リフレクションとは(REFLECTION)とは、自分の内面を客観視、批判的に振り返る行為。
認知とは
認知とは外界にある事象を知覚し、それが何なのかを判断するという心理学の用語。
感情は不要か必要か
筆者が職場で感情について尋ねると、ビジネスの場は論理的で冷静な判断が求められるので不要という反対があるそうです。しかし、ビジョンもやる気も感情の塊だから不要ではないと力説します。しかしながら、前述したように知識として感情は必要としか認識していないのかなというのが個人的感想。
モチベーション3.0
ダニエル・ピンク氏が提唱。誰もが本来の能力を開花させ、創造性を活性化させることができる内発的動機付けをモチベーション3.0とした。
不満や課題の認識
人は動機の源(大切にしている価値観)が満たされていないときに、不満や課題認識をするという話。
会社のビジョンが社員に伝わらない理由
会社のビジョンと個人の動機の源が紐付いていないため。個人的には心理的安全性が確保されていないことが、根本的な原因ではないかなと思っています。
会議の理想形
本書では会議で反論がでないのが理想的と書かれていました。これはちょっと個人的に疑問があります。というか、自分が会社で経験したことは、会議前の根回しです。つまり、反論が出ないのではなく、事前に反論を封じ込めてしまうことが多いです。それが理想的なのかはわかりませんが。そういう意味でも現場との知識の間に乖離があるように思います。
アンラーン
アンラーン(Unlearn)とは過去の学び(成功体験)を手放す行為。これはとても重要ですね。自分も過去の栄光や成功にすがりついて、頭が凝り固まってしまっている時がありました。
オーセンティック・リーダーシップ
オーセンティックとは「自分に限りなく正直である」という意味で、オーセンティック・リーダーシップとは「自分らしさを体現したリーダーシップ」ということ。正直というのはリーダーに求められる要素ですね。ただ、リーダーが自分の我を出しすぎると代替うまくいきません。というのも、リーダーからボスになってしまうことが多いため。
ホラクラシー組織
「ホラクラシー組織における上司は、人間ではなくパーパス(組織の存在理由)である」
「誰もがパーパスと繋がっている組織では、一人ひとりのクリエイティブテンションが課題を発見し、解決することができる」
確かに理想的な組織。
ティール組織
ティール組織とはヒエラルキー構造を持たず、組織のパーパスがボスの代わりを務めるフラットな組織。
これが実現できれば素晴らしいですね。ただ、多くの場合、特に男性の場合、自分が上とか下とかをとても気にするので、結局階層構造というか、力関係とか、派閥みたいなものができて、最終的にうまくいかなくなります。
GEの幹部候補者研修
GEではジェック・ウェルチの時代から幹部候補者の研修講師はCEOが行うそうです。これは興味深いですね。多くの組織では、CEOを神的な存在、なかなか会えない存在にすることで、価値を高める方向にいきます。確かに対外的にはその方が良いですが、個人的に内部的には親しみが合ったほうが良いのでは?と思っています。こうして直接指導を受けられるというのはそれだけで貴重な経験ですしね。
人材育成の鉄板
相手に求める前に自らがその言動でモデルを示すことだそうです。個人的に思い出したのは、山本五十六の
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。 話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。 やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。」
ですね。あらゆることが詰まっている名言。
人の話を聴くとき
本書では多くの人が「相手の意見」に意識を集中させていると述べています。100%得する話し方では「人はあなたの話にまったく興味ありません」と書かれています。個人的には後者の方が一般的かなと。そう考えると、本書の筆者はかなり真面目で誠実な方なのかなと思います。理想と現実は結構大きな乖離があるものです。
小さな事実を探して褒める
褒めるところが無い人は小さな事実を探して褒めるのが良いとのこと。褒めるところを探す時は100%得する話し方の方法が良いかもしれません。