FF16 ゲームレビュー – ゲームとしては凡作だがエンタメ作品としては良作

投稿者: | 2023年7月2日

評価・レビュー

☆4/5

結論から書くと、ゲームとしては微妙だがエンタメ作品としては不満点はあるけど良作だと思います。

FFシリーズの挑戦的な試みもしっかりと感じることができましたし、ドラマティックな演出は非常に良かったです。

ゲームをクリアすることを至上に考えている人だと、たぶん楽しめないし、凡作だと感じるかなと。逆にゲームをエンジョイすること、ゲームの世界観を楽しむことをメインに考えている人なら、かなり楽しめる作品だと思います。

以下はFF16をプレイして感じたことです。あくまで個人的に感じたことでなので、ご了承ください。

そもそもFFらしさとは?

個人的なFFらしさは、

・美しいグラフィック

・新しいことへの挑戦

の2つだと思っています。

今回は特に、新しいことへの挑戦にフォーカスして感想を書いていきます。

大きなポイントは3つ

個人的には以下の3つがポイントかなと。

  • よりドラマティックなRPGへ
  • パーティーとの絆から世界の人々との絆へ
  • 没入感や演出によってゲームから新しいエンタメへ

よりドラマティックなRPGへ

もともと美麗なグラフィックが特徴で、その美しさでユーザーを引き込むのがFFではありました。今作でもその路線は踏襲しつつも、戦闘でQTEによるフィニッシュを入れることで、よりドラマティックな演出になっています。

元来、RPGでは映画などに比べるとボス戦のドラマティックさに欠けるというのがあったと個人的には思っています。例えば、黒魔道士が10ダメージを与えてボスを倒してしまった場合、ドラマティックさが欠けてしまいますよね。その後にムービーがあったとしても、それはあくまでイタチの最後っ屁みたいなものがほとんどです。

しかし、FF16では通常のアクション戦闘でボスの体力が残っていてもQTEになってフィニッシュという流れが多いです。これはアクションで倒れた敵に特殊なアクションでダメージを与えて倒すことができるのも一緒。SEKIROで言えば忍殺のような感じです。

これは従来のRPGでは表現しにくかった点ですが、アクションRPGになったことでそれが実現しやすくなり、さらにボス戦のQTEも考えれば、かなり狙ってやっていることがわかります。

つまりこれまでは、ストーリーによってドラマティックさを演出していたのが、戦闘でもドラマティックな演出をすることにより、これまで以上にドラマティックなRPGになったと言えるでしょう。

パーティーとの絆から世界の人々との絆へ

2つ目のポイントとして、FF16は主人公クライブを扱って戦うという戦闘方式になりました。仲間はいますが、トルガルが少し扱えて、一緒に戦うことが多いですが、その他の仲間は入れ替わりになることも多く、戦闘ですごく役立つということもありません。

これは何を意味するのかというと、パーティー主体のゲームではなくなったということです。当たり前のように思えるかもしれませんが、これはFFシリーズにおいては、結構な英断で挑戦だったと思います。

これまではパーティーの強さ、仲間との絆によって、強大な敵を打ち破るというのが、いわゆるJRPGの王道だったわけです。

アクションRPGになったのだから当然なのでは?という意見もあるでしょう。ただ、個人的には、これはかなり狙っていると思っています。

その理由が、無駄に多いサブクエです。

無駄に多いサブクエは何を意味するのかというと、単純に世界観をより味わってもらいたいというのもありますが、一番は世界の人々との絆を作ることにあると個人的には思っています。

つまり、これまでは世界を救うといっても、パーティーの仲間が主軸であって、その絆が大切であり、世界の人々はモブでしかなったのが、無駄に多いサブクエによって、主軸が世界の人々であり、その絆が大切と変化しているのです。

コンセプトとして世界観が先だったのか、単体のアクション戦闘が先だったのかはわかりませんが、少なくともFF16では、世界の人々とクライヴの関係性が最重要視されていることは、ストーリー展開やエンディングから間違いないでしょう。

「オラに元気を分けてくれ!」じゃないですけど、FF16ではより多くの人の想いを背負って戦うからこそ、負けられないし、それがクライヴが戦う意味でもあるわけです。

没入感や演出によってゲームから新しいエンタメへ

次に没入感という点では、前述した戦闘やサブクエの多さ、R2ボタンを押すことで開く扉や押しっぱなしにしないといけないチョコボなど、プレイヤーを世界に引き込むための手法がいくつも使われています。

R2ボタンを押す扉は個人的にめんどくさいなと思っています。ただこれは、デトロイト ビカム ヒューマンのような感じを実現しようとしているのだろうなと感じました。

特にPS5ではR2ボタンにアダプティブトリガー(ボタンが重くなる)が使われていて、従来よりもより重さをダイレクトで感じることができます。

重い扉を開けるのにR2ボタンを押さないといけないのは、もう1つ別な理由がありますが、少なくとも没入感を高めるための演出であることは間違いありません。

また、本作では本当に細かな演出が多くて、映画好きやドラマ好きなら、その細かな演出だけでも結構楽しめる作りになっています。

個人的に一番衝撃を受けたのは、死の表現かなと。とあるキャラクターが亡くなった時の映像は、頭で論理的に考えるよりも先に、感覚的に死んでいると感じました。これはまさに映画とかドラマの演出なんですよね。それがゲームの世界でも実現されつつあるんだなと。もちろん、美しいグラフィックがあってこそというのもあるとは思いますが。

で、これらの没入感や演出によって、FF16はゲームという枠組みを越え、エンタメになりつつあるのかなというのが個人的感想です。

感覚的には、異世界転生体験型アトラクションみたいな感じ。

それが個人的にFF16が目指そうとした大きなテーマなのかなと思いました。

ゲーマーには凡作に感じる理由

FF16のレビューをYoutubeで見たりしましたが、評価はかなり分かれているなあと個人的に感じています。

でもこれは当然なのかなと。

前述したように、FF16はゲームの枠を越えようとしていると個人的に感じたからです。つまり、ゲームとして捉えてしまうと評価が上がりにくいのは当然かなと。

個人的にもゲーマーなので、つまらないという意見はすごく理解できて、ゲームとして評価すると正直50点です。でも、エンタメとして捉えて評価すると、90点は超えるかなという感じで、かなり感覚に差があります。

これが評価が分かれている理由の1つかなと思います。

逆に言えば、それほどの挑戦的なタイトルだったと言えるのです。そして、その挑戦こそが、やはりFFなんだなと個人的には感じました。

開発者の自己満足が伝わってくるという意見もあると思いますが、どんな作品も開発者の自己満足はあると思いますし、そもそもユーザーに媚びを売りまくるようなFFをプレイしたいか?と言われてたら、多くの人のノー!と言うでしょう。

また、自分がプレイしたいゲームをFFに求めるのも違うかなと。それはFFじゃなくて、自分がプレイしたいゲームをすれば良いわけで。

そういうことかなと個人的には思っています。

戦闘は無双シリーズみたいで楽しい

戦闘は単調と言われていますが、個人的にはコーエーテクモゲームスの無双シリーズみたいて、俺強ぇーーーー!、召喚獣のスキル強ぇーーーー!、オーディンのスキルかっちょええ!って感じで楽しめました。

2週目はプレイしていないので、アクション性の高さはどの程度あるのかはわかりませんが、少なくとも1週目は爽快に戦えたのは楽しかったです。

レベル上げみたいなこともしなかったので、バランスは結構考えて作られているなと思いました。正直、個人的にレベル上げするの好きじゃないので。

不満点は2つ

細かい不満点はいくつかあるのですが、これはちょっとキツイかなと個人的に思った点は2つあります。

  • ジルにもっとフォーカスせい
  • 最後の怒涛のサブクエ多すぎ

ジルにもっとフォーカスせい

まず今作のヒロイン ジルの影が薄すぎる。。。FFの人気ヒロインといえば、FF7のティファとFF10のユーナを挙げる人が多いかなと。

それらのヒロインに比べると、ジルとの関係性が弱く感じました。前述したように、世界の人々との絆を重視するあまり、相対的にジルのエピソードが少なく感じてしまう、薄まってしまうというのが、一番の原因かなと。

特に、最後の方ではジルとの思い出エピソードがサブクエになっていて、オイオイオイと思ってしまいました。

ただ逆に言えば、本作がジルとのラブストーリー、つまりジルとの絆がメインではなくて、世界の人々との絆がメインであることの証明でもありますね。

そもそも、ティファが20歳、ユーナが17歳とマスの男性プレイヤーを狙った年齢に対して、FF16のジルは25歳と30歳の頃がメインで描かれています。つまり、この点でもジルはマスの男性プレイヤーを狙っているわけではないことがわかり、そうなれば余計に、マスの男性プレイヤーの心をくすぐりにくいわけです。

さらにエピソードが薄くなってしまったら、ジルに萌える人は減ってしまうのは間違いありません。

それがFF16で評価が分かれる理由の1つでもあるかなと。やっぱりね、萌えるか萌えないかが重要なんです、男性プレイヤーにとっては。

だから、もう少しジルにフォーカスしても良かったのかなというのが個人的な気持ち。

ちなみに自分はベネディクタ推しです。

最後の怒涛のサブクエ多すぎ

個人的に心が折れそうになったのは2回あって、ベネディクタが登場しなくなったことと、最後の怒涛のサブクエ。

FF16のテーマが前述したように世界の人々との絆であることから、かなりの数のサブクエが用意されていて、それぞれストーリーがあって良かったのですが・・・、いざ!最終決戦!という状態になってから発生するサブクエをクリアするだけで3時間ぐらいかかります。

自分としてはラストに向かってテンションが上げってきた!という時に、怒涛のサブクエによって、結構テンションをそがれてしまったなと。

アニメで言ったら、ラスボス戦の前まで来て、1クール ラスボス戦をスルーするようなもので、かなり肩透かしを食らってしまいました。

その上、前述したように、この怒涛のサブクエの中にはジルとの思い出のエピソードもあるので、それを飛ばしてラスボス戦に挑んでしまうと、ストーリーの重厚感というか、面白さが欠けてしまうんですよね。

そういう意味で、少し多すぎたんじゃないかなと。せめて、その前のフェーズにいくつかのサブクエを移動しても良かったように思います。

そもそもドラマティックな展開を重視するのであれば、やはり最後は一気にエンディングまでなだれ込む方が良かったのかなと。

ちょいネタバレあり:エンディングの是非

最後にエンディングについての是非というか、賛否について少しだけ。

FF16のエンディングはハッピーエンドとバッドエンドの組み合わせです。世界は救われたけれど、助からない人たちがいたという感じ。

で、この助からない人がいたことが、バッドエンドで悪い印象なのかなと。

ただ、これね、明確に描いて無い部分があるんですよね。

というのも、本作では結構、生と死というのを非常にわかりやすく描いています。なのに、最後だけ、牡丹の花が落ちるような表現で終わらせるというのは、ある意味、プレイヤー側に全投げしているのかなというのが個人的な感想です。

つまり、助かったかどうかは、自分たちで判断してよってこと。

完全に悲しい話として終わらせることもできるし、一部石化していたとしても、その後、余生はちゃんと過ごせたという解釈もできるんですよね。

月の横の赤い星なのかな、アレは人の命とも取れるし、魔法が無くなったことを意味しているとも取れるんですよね。

だから、最後のシーンで、子どもが魔法があったらみたいな発言をしているわけで。

つまり、魔法が無くなったということは、魔法を使えないわけで、それ以上、石化はしないとも言えます。

また、他の解釈としてフェニックスを意味している可能性もあるかなとは思います。

昔からある星みたいなので、少なくともクライヴ自身を意味しているとは考えにくいですよね。

あと、エンディングで米津玄師さんの「月を見ていた」が流れますが、歌詞を見ても、バッドエンド的な感じは無いんですよね。

そんなわけで、エンディングの後の世界は、いろいろと考えることでてきて、プレイヤーごとにエンディング後の世界があるのかなって思います。

そしてその世界には様々な人がいて、ジルが最終決戦前に旅に出たいと言っていたので、そういう人たちと交わりながら、新しい世界を作っていくという結末も有るのかなとは思いました。

リンク