ドラマ クロエ – 偽りの自分を演じていたのは誰なのか?

投稿者: | 2022年12月1日

評価・レビュー

☆5/5

とあるきっかけで親交を経って久しい親友のクロエの訃報、そして謎のメッセージと亡くなった当日に電話をもらっていたベッキーは、クロエに何があったのかを知るため、別人 アーシャを装ってクロエの友人たちに近づいていくが、クロエの夫と親しくなり、自分自身が何をしているのか、何をしたいのか見失っていく。

みたいな話。

ジャンルとしてはサイコスリラーでクロエの死の真相を暴いていくという感じです。

個人的に初見ではそこまでではなかったのですが、ベッキーの変化というか、動きを見ていて、改めていろいろと考えると、非常に良くできた作品だと考え直しました。

1、2話は情報が隠されていることもあって特に意味不明な感じで進んでいくので、その段階でまず脱落する人は出そうです。で、オチも強烈なオチというわけでもないので、インパクト的にも薄いかなと。

ただ、本作の面白さはそこではないのかなと。個人的に感じたことは後述しますが、様々なことを考えさせられる渋い作品です。

万人におすすめできるドラマでは無いですが、じんわりくる良作。

あらすじ

恵まれた人生を送るクロエとは反対に、孤独な人生を送っているベッキー。2人は10代の頃の友達だが、今のベッキーはSNSを通してクロエを見るだけだ。そんな中、クロエが突然亡くなる。死の真相を探るため、ベッキーは別人に成りすまし、クロエの友人たちに接近。サーシャと名乗り、クロエが矛盾する様々な顔を持っていたことを発見するが、次第に自身が積み重ねたウソに溺れていく。果たして自分を見失う前に真実を突き止めることはできるのか?

アマプラ:クロエ

2022年2月公開のAmazonオリジナル作品。

ちょいネタバレありの感想

個人的に感じたことをつらつらと。

虚像を演じればいつか崩壊する

本作の面白さはやはり主人公のベッキーがアーシャという名前で2重生活を送ることで、本当の自分と親友だったクロエのことがわからなくなっていく点。

クロエは素晴らしい人物として周囲から高い評価を受けています。でも、最後の方でクロエ自身がそれは作られた自分であることを告白。ベッキーと一緒にいるときが本当の自分でいられてたと語っています。

この偽りのクロエは新しい友達ができたことで生まれ、そしてベッキーもアーシャとしてクロエの友達たちの輪に入ることで、まるでクロエのようになっていくわけです。

序盤は華やかなクロエと惨めなベッキーという構図ではあるのですが、その華やかさは偽りのクロエであり、本当に幸せだったのはベッキーと一緒にいた偽りのない自分を出せていた時の自分という話でもあります。

ベッキーはクロエのようになっていくも嘘がバレることですべてが崩壊していきます。本作ではアーシャという偽名(実際には亡くなった妹の名前)を使うことでわかりやすい偽りの自分が表現されていますが、実際問題、多くの人が様々なところで偽りの自分というのを演じるのではないでしょうか。

つまり、アーシャという存在は周りから良く見られたい自分であり、本当の自分とは違うできる自分という虚像であるわけです。で、いつかはそれが崩壊するよということでもあります。その発端というか、最初の例がクロエなわけです。

何が言いたいかというと、無理に作られた虚像の自分を演じるのって良くないって話。

自分らしくいれる友人の大切さ

ラストシーンで、いろいろとあった後にクロエの友人と会うシーンがあります。お互いにすべてをさらけ出してしまった後の会話でベッキーは連作先を渡すのですが、これが新たなスタートのようにも思えます。つまり、偽りのない自分でいられる新たな友人ということ。これはある意味、救い的なニュアンスなのかなと個人的には解釈しました。

ベッキーとクロエは高校か中学頃の親友であり、お互いに純粋な頃の親友なわけです。しかし、社会的な人間関係(クロエの新しい友人)によって、それが崩壊してしまいます。で、そういう純粋な親友というのは、若い頃じゃないと難しいわけです。ただ、本作では嘘がバレたことですべてが崩壊し、そこのとで本当のベッキーが表に出て偽りのない自分と友人になってくれるかもしれない人が出てきたわけです。

何が言いたいかというと、歳をとっても本当の自分をさらけ出せる友人ってのはできるという話。まあ、本作ではさらけ出されてしまったというわけですが。ただ、自分らしくいれる友人ってのは大切という話なのかなと思いました。

人は環境で偽りの人物を演じてしまう

本作では新しい友人という社会性によってクロエは偽りの自分を作り出していくのですが、これって誰でも起きることなのかなと思います。

その典型的でわかりやすい例がSNSなんだろうなと。それが本作のテーマの1つでもあるように感じました。

つまり、誰しもが環境によって偽りの自分を演じてしまうということ。

社会人だとわかりやすいのが上司になった時かなと思います。理想の上司像というか、チームを引っ張っていかなければならないため、自分自身の性格とは違う振る舞いをしてしまうことが多いように感じます。

まさに上司を演じているわけです。自分はそれで一度失敗し、そこから学びを得ることができましたが、様々な会社で働いてきた経験として、多くの人が上司を演じているなと感じることが多いです。

そういうのって、本当に良いことなの?というのが、本作を通じて個人的に感じました。

という感じで、名作とは言いませんが、終わった後に振り返ると非常に興味深いメッセージがある作品だとお見おます。

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ドラマ クロエ – 偽りの自分を演じていたのは誰なのか?」への2件のフィードバック

  1. romrom

    とても分かりやすい解説でした
    また、nerusonaさんのお人柄が垣間見れるような解説でもあり、
    思わず読んだ後にコメントを残したいと思ってしまいました
    なかなか上手に偽りの自分を作れない私からするとうらやましい面もあるのですが、
    全てがあらわになった事が逆に救いにつながる、そんな柔らかいエンドだったんだな、と。
    レビュー、ありがとうございました

    1. nerusora 投稿作成者

      コメントありがとうございます!
      偽りの自分を作れないというのは、現代社会においては確かに大変な面もあるかなと思います。
      自分の場合は逆に偽りの自分を演じることのストレスに疲れて、精神的に参ってしまい会社を辞めることになってしまいました。
      それによって収入や社会的地位は失いましたが、逆に精神的には楽になりましたし、新しい生活を始められるつあります。
      それが主人公の姿と少しダブったところはあります。
      また新しい友人はまだ作れていませんが、今まで疎遠だった家族との繋がりが再構築できました。
      まあ生活レベルは落ちているので何が良いかは人それぞれですが、自分の場合は今のところありのままの自分の生活を満喫できています。

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