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評価・レビュー
☆5/5
お笑い芸人で、絵本 えんとつ町のプペルの作家でもある西野亮廣さんの、夢とお金に関する本。
独特のオリジナルワールドを展開しているのかと思ったら、どちらかと言えば王道に近い内容で、そこに西野亮廣さんの考えというか、物事の捉え方や体験などが加えられて、わかりやすく表現されています。
個人的に本書を読んだ内容をざっくりまとめると、
- 機能ではなく、意味を売れ
- 意味を売るには認知度が必要
という感じかなと。
まず、機能は最初こそ差別化になりますが、競合もどんどん機能を増やしていくことで、どんどん差別化できなくなり、価格競争に陥ってしまいます。
しかし、意味を売る場合には、値段はいくらでも構わないため、高く設定できるということ。
ブランドがわかりやすいですが、ルイ・ヴィトンに意味があるという話です。
ただ、単純に意味を売ろうと思っても、実際には売れません。
意味を売るには認知度が必要になります。ブランドは、認知度を上げるために広告を出しているというわけ。
別にみんなに買ってほしいとは思っていないのです。
この2つをベースに、プレミアムとラグジュアリーの違い、不便とは何か、人は何にお金を払うのかについて具体的な例を元に様々語られています。
本書を読むまでは、世間一般で言われている、どちらかと言えばネガティブな印象でしたが、本書を読んで、西野亮廣さんに対する見方は大きく変わりました。
本書の言葉を借りれば、
知らないものを否定するな。 中身を確認せず、批判を繰り返せば、必ずシッペ返しがくる。 それが人の命に関わっている場合もある。 恥じろ。そして、無知を撒き散らす自分は今日で終わらせろ。
という感じ。
西野亮廣さんにネガティブが印象を持っているなら、どの本でも良いので一度読んでみると、印象が変わると思いますし、得られるものも多いと思います。
以下は、本文を引用しつつ、個人的なメモ。
「お金」が尽きると「夢」は尽きる。これが真実だ。
「夢」と「お金」は相反関係にない。僕らは「夢」だけを選ぶことはできない。 「お金」が尽きると「夢」は尽きる。これが真実だ。
本の帯的な部分にも書かれている言葉。
個人的に西野亮廣さんは、かなり堅実な人なんだろうなという印象を持ちました。
というのも、破天荒的な生き方だとしたら、無駄に生きるな熱く死ね的な表現をすると思うので。
現実的と言った方が良いかもしれません。
世の中にヒューマンエラーはない。あるのはシステムエラーだけだ。
世の中にヒューマンエラーはない。あるのはシステムエラーだけだ。 「人に失敗をさせるシステム」にこそ問題がある。 なので、個人を吊るし上げたところで事故の「原因」は取り除けない。 事故の「原因」を取り除かない限り、また同じ事故が起こる。
これは言葉の綾もあるだろうなと。
ヒューマンエラーは存在するので。
ただ、後段の個人を吊し上げる意味は無いというのはその通り。
失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織という本では航空業界では失敗の原因をシステムで改善しようとし、医療業界では失敗を隠すという例が紹介されていました。
その結果、航空業界では事故率がどんどん下がり、医療業界では相変わらず医療ミスが起きていると指摘しています。
航空業界では例えばニアミスなどが起きた際に、すぐに報告することで、ニアミス自体の責任を問わないという制度があるそうです。
つまり、失敗をどんどん報告させて、それを改善していくことで、失敗を減らそうということ。
システムの問題というと、何となくコンピュータをイメージしてしまいますが、ルールや制度などもシステムです。
人間がミスをする生き物であるという前提で、システムを組むことが大事という話。
また、大きな失敗というのは、多くの場合、それまでスルーされてきた小さな失敗の積み重ねだと思っています。
その小さな失敗をスルーせず、ちゃんと改善していれば、大きな失敗も防げると個人的に考えています。
「認知度」のある人が取るべきビジネス戦略
[夢]=[認知度]-[普及度]
夢と書かれていますが、値段・価値と言っても過言ではないかなと。というのも、モナ・リザの例が出ているので。
結局、値段や価値を上げるのは、高い認知度があって希少性があるものという話です。
これも市場原理から考えれば、当然のことかなと思います。
で、本書の肝というか、敢えて語らないのかもしれませんが、この方程式が正しいとすると、夢を実現するには認知度が必要ということです。
普及度というのは、結局提供する側でコントロールができます。
例え、それがうまい棒だったとしても、限定商品なら値段や価値が上がりますよね。
しかし、認知度は上げることがとても難しいです。
西野亮廣さんは、キングコングというお笑いコンビで、テレビのゴールデンタイムに番組を持っていました。
つまり、認知度が非常に高いのです。
西野亮廣さんと同様に、お笑い芸人 オリエンタルラジオの中田敦彦さんもそうですよね。
彼らがやったことを一般人が真似しても、絶対に上手くいきません。
その例として、本書の中で、クラウドファンディングを初めて挑戦した時に、「ネット乞食」「信者ビジネス」などの批判の言葉が1日に数百件届いたと、西野亮廣さんは語っています。
一般人がクラウドファンディングしても、そんなことは絶対起きないでしょう。
つまり、本書は「認知度」がある人が取るべきビジネス戦略と言えます。
ある意味、タイムマシン経営なのかもしれない
たくさん売ることができない現代を生きる僕らの一つの生存戦略として、「自分以外の何かに働かせる」「たくさん売らなくてもいいビジネスモデルを構築する」といった「脱・労働集約型」「脱・完売思考」は頭に入れておいた方がいい。
この考え方も、インターネットでビジネスをしている人なら至極納得できる言葉です。
まさに王道的考え方。
ただ、このような考え方は、一般の人には馴染がないかもしれません。
土地とか、株とかをやっている人は別かもしれませんが。
で、ふと思ったことがあります。
西野亮廣さんがやっていることって、ある意味、タイムマシン経営なのかなって。
タイムマシン経営とは、アメリカで流行っているサービスを日本で展開するビジネス手法です。
例えば、クラウドファンディングサービス Kickstarterがアメリカで流行り成功したから、日本でもCampfireなどのサービスを展開するという感じ。
で、アメリカから日本ではなくて、ネット界隈から一般人へ展開することで、成功しているのかなと。
西野亮廣さんが、クラファンを初めてやったのが2013年1月だそうです。
でも、Kickstarterは2009年に開始していて、ネット界隈ではかなり盛り上がっていました。
実際に自分の知人もやっている人がいて、資金集めとしてクラウドファンディングが選択肢の1つに上がっていたほどです。
遅れて日本でクラウドファンディングサービスが開始された頃には、すでにネット界隈では新しいものに興味が移っていて、クラウドファンディングなんて当たり前でした。
しかし、日本で注目を浴びたのは、西野亮廣さんがクラウドファンディングをやったことが大きいのは間違いありません。
つまり、特定の業界では当たり前のことでも、一般的には当たり前ではないことがあるという話。
そして、それがビジネスチャンスになる可能性があるとも言えます。
意味を買うことには限界が無い
顧客は『機能』を買い、ファンは『意味』を買う
この言葉を読んだ時、ふと暇と退屈の倫理学の、
消費は止まらない。消費には限界がない。消費はけっして満足をもたらさない。なぜか? 消費の対象が物ではないからである。人は消費するとき、物を受け取ったり、物を吸収したりするのではない。人は物に付与された観念や意味を消費するのである。
という言葉を思い出しました。
つまり、意味を買うことには限界が無いということです。意味の値段には天井が無いとも言えます。
だからこそ、意味を売れという話かなと。
暇と退屈の倫理学はAmazonで見ると2021年出版となっていますが、最初は2011年に出版されています。2022年東大・京大で一番読まれた本だそうです。
そういう意味では、アーリーアダプターと呼ばれる人たちの間では、すでに意味を売るというのは、かなり認知されている内容と言えるでしょう。
これもある意味、タイムマシン経営に近いところがあるなあと感じました。
認知度を上げることがビジネス成功の鍵
と、いろいろと書いてきましたが、西野亮廣さんが語る内容は、他の人も述べている内容が多々あるという話です。
それを上手く一般の人に伝え、実際に実践し、ビジネスにしているところが西野亮廣さんの凄いところだと思います。
オリエンタルラジオの中田敦彦さんも似てますよね。Youtube大学とか。
ただ、結局どちらの場合にも、認知度が鍵になっています。
認知度が無ければ、上手くいかないと言っても良いでしょう。
なので、認知度をどうやって上げるのか?が、ビジネスにおける成功法則なのではないかと、本書を読んで思いました。
リンク
- 夢と金 (幻冬舎単行本) Kindle版
- 西野亮廣 – Wikipedia
- CHIMNEY TOWN- Official Web Site
- Kickstarter – Wikipedia
- 國分功一郎 – Wikipedia
- 書籍レビューまとめ | ネルログ