本 失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織 もっと失敗と向き合う必要があると思った

投稿者: | 2022年10月6日

評価・レビュー

☆5/5

本書は「人はなぜ失敗するのか?」ではなく、「人は失敗するもので、失敗から学ぶことが大切」ということを、医療業界や航空業界などの事例を元に紹介している書籍。また、失敗からの学習方法とて、いくつかの手法が取り上げられています。

人間は失敗し、それを隠そうとする

本書では人間は失敗しその失敗を隠そうとすると書かれています。これは多くの人がドキッとするのではないでしょうか。

さらに人間は失敗を隠そうとして嘘をつき、それを信じ込んでしまうのです。

人間が失敗をし、失敗を隠し、嘘を信じてしまう理由として、

  • 時間感覚の麻痺
  • 認知的不協和
  • 認知バイアス

などの心理的な効果を挙げています。詳しい関係性については書籍を読んでもらうとして、大事なのは人間は完璧ではないということです。

最悪な結末は責任を取らせて終わること

失敗が起きた時、多くの人は失敗した人を非難します。そして責任を追求するわけです。最悪のケースでは、非難した人に責任を取らせて終わってしまいます。良くてなんらかの対処法を宣言して終了する感じ。

さらに厳罰のルールを設けると行った対処法では、失敗による厳罰を恐れることで、多くの人間がミスを報告しなくなるという状態になります。そして失敗は隠蔽され、改善されることなく、さらに大きな失敗へと繋がっていくというわけです。

それは良くないよねというのが本書の考え方です。

例えば航空会社の中にはニアミスがあった際に素早く報告すれば失敗に対して処罰されないという制度があるそうです。そうやって集めた失敗から、失敗を無くす方法を探っていくというわけ。

とても当たり前のことですが、実際に失敗から学べている業界や企業は少ないと本書では書かれていますし、個人的にいくつかの会社を経験してきましたが、その通りだなと思います。

失敗に対する向き合い方

本書では失敗に対する向き合い方、検証方法として、

  • マージナル・ゲイン
  • リーン・スタートアップ
  • RCT(ランダム化比較試験、Randomized Controlled Trial)
  • 事前検死(Pre-mortem)

などが紹介されています。

個人的に知らないことが多くて大変学びになりました。

失敗を認め学ぶ社会へ

本書を読んでやはり感じるのは失敗への過度な非難や責任追及は良い結果を産まないなあということ。

人間は失敗するものなので、その失敗を認め、そしてそこから学ぶことが大切だと改めて感じました。

そもそも論として、人類の黎明期は失敗から学ぶことの方が多かったと思うんですよね。例えば、毒をもった植物や動物はどうして毒を持っていることがわかったのでしょうか。それは誰かが食べて失敗したからですよね。

その失敗が共有されたことで、他の多くの人が毒のある植物や動物を食べなくて済んだわけです。その失敗について評価されても良いのかなと個人的には思います。

今の日本では失敗を認め学ぶ社会へ変わっていくのは難しいかなというのが個人的感覚ですが、少しずつ失敗への捉え方が変わっていったら良いなと思います。

概要

誰もがみな本能的に失敗を遠ざける。だからこそ、失敗から積極的に学ぶごくわずかな人と組織だけが「究極のパフォーマンス」を発揮できるのだ。オックスフォード大を首席で卒業した異才のジャーナリストが、医療業界、航空業界、グローバル企業、プロスポーツチームなど、あらゆる業界を横断し、失敗の構造を解き明かす!

「BOOK」データベース

余談:ミスに叱責する上司

完全に余談ですが、自分が働いていた会社の多くでは、部下がミスをすると叱責する上司が多かったなあと。

その叱責によって、多くの部下が怯えて、失敗を隠すようになっていましたし、人に責任をなすりつけるような人もいました。

その上司もまたさらに上から叱責されているのか、なんか上司の顔色をいつも伺っていたんですよね。その部署は会社の中でも離職率がダントツで高かったです。

で、その理由について上の人達はまったくわからんという感じでした。まあ言ったとしても理解はされなかったでしょうけど。

一番怖いのは、そこで働いている人たちが皆賢いということ。本書の中でもエリートや学者ですら失敗をし、そしてその失敗を認めないという話がでてきますが、まさにそんな感じでした。

このような書籍がもっと多くの方に読まれ、少しずつ考え方が変わって言ったら良いなと個人的には思います。

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