#読了 砂漠(伊坂幸太郎)- もしかすると強靭さとは、自信や力や技などよりも、そういった穏やかさに宿るのかもしれない

投稿者: | 2025年4月16日

評価・レビュー

☆4/5

仙台の大学に入学した主人公 北村が、新歓コンパなどで知り合った、少し軽薄な鳥井、不思議な力が使える南、とびきり美人の東堂、極端に熱くまっすぐな西嶋の5人と、麻雀を通して、そして様々な活動を通して変化、成長していく、一生に一度しか無い、若き頃の大学物語。

麻雀の描写が結構あるので、ある程度麻雀の知識があった方が、理解が深まるし、楽しめると思います。

全体的にほんわかしている感じもあるのですが、少し心に痛い描写もあって、いろいろと考えさせられるところもありました。

ジャンルとしては、青春ものなのかな。わからんけど。

個人的には、大学時代を思い出しつつ、もっと冒険というか、自分に素直にというか、アグレッシブに若い頃を過ごせばよかったかなあと思いました。

以下、本文を引用しつつ、個人的なメモ。

人間とは、自分と関係のない不幸な出来事に、くよくよすることだ!

人間とは、自分と関係のない不幸な出来事に、くよくよすることだ!

何の本だったか忘れてしまったのですが、世の中の悲惨なニュースを見て、日々心を痛めるのは、あまり良くないという話があって、それを思い出しました。

自分にはできることの範囲が決まっているというか。

アフリカで飢饉が起きていても、自分たちにできることって、募金するとかしか無いんですよね。

もちろん、現地に行って、支援をするという選択肢もありますが、それは志が高くないと難しいかなと。

戦争でもそうです。

世界では、毎日に悲しいニュースが飛び交っていますが、自分たちにできることって本当に少ない。

だから、スルーした方が良いとは言いませんが、それらの悲しいニュースに引っ張られすぎてしまうと、自分自身を見失ってしまいます。

まずは、自分のことがちゃんとできるようになってから、世界に目を向ける、世界を救うために活動するというのが良いのかなって。

強靭さとは穏やかさに宿る

もしかすると強靭さとは、自信や力や技などよりも、そういった穏やかさに宿るのかもしれない

これも心に響いた言葉。

能力が高いから強いというわけではなくて、穏やかさの中にこそ、本当の人の強さがあるんじゃないかなって。

トラブルが起きたときに、どれだけ冷静にというか、穏やかに対応できるかが、大切な気がしています。

と言っても、人間ですから、どうやっても感情があって、その感情によって理屈を捻じ曲げてしまうこともしばしばあるのも事実。

そんな時は、一旦クールダウンする、時間を置く、距離を置くしかないのだろうなと。

そんな風に最近は思っています。

三島由紀夫の声が届かなかった理由

三島由紀夫の声が誰にも伝わらなかったのは、国連が反対しようと、世界中の世論が非難しようと、大国が戦争を起こすのを阻止できないどうしようもなさと似ているな、とも思った。

三島由紀夫が正しかったかどうかは別として、三島由紀夫の声が届かなかったことは事実としてあります。

そして、それが戦争を阻止できなかったことに似ているという表現は、的を射ているなあと感じました。

その根底にあるのは、人間の能力の低さなのかなって。

単純に感情に支配されている時の人間って、どれほど理路整然と述べても、理解されることはありません。

たとえ、それが犯罪であっても。

そして、感情に支配されている時って、視野が極端に狭くなっているんですよね。

人間ですから、そういう状態になるのは仕方がないかなって。

それが人間の限界なんだろうとも思います。

感情が悪いように書いてしまいましたが、人間の感情には良い面もたくさんあって、愛とか情熱とかによって、世界が大きく動くこともあるんですよね。

機動戦士ガンダム 逆襲のシャアで、アムロが言ったセリフに、

貴様ほど急ぎすぎもしなければ、人類に絶望もしちゃいない!

というのをふと思い出しました。

すべての人が人類に絶望した時、人類は終わりなのかもしれないなと。

自分の声がみんなに届かなかったとしても、相手を理解することを諦めないこと、人類に絶望しないこと、明るい未来を信じることが大切なのかもなあとか。

三島由紀夫のように割腹してしまったら、もう永遠に声は届かない気もしました。

なんか、とりとめのない話になってしまいましたが、砂漠、面白かったです。

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