映画 リセット 決死のカウントダウン マルチバース宇宙論的並行世界+タイムトラベルという設定を活かした良作

投稿者: | 2022年7月4日

評価・レビュー

☆5/5

110分前にタイムトラベルできるが、実際には過去ではなく平行世界という設定がマルチバース宇宙論(多元宇宙論)的で良かったです。昔の並行世界(パラレルワールド)のSFって空想ではあったのですが、今の物理学では多世界解釈という説があって、意外とありえるかもしれない話なので。

また、一度分解して粒子化し、粒子だけがワームホールを通り、再構築されるというタイムトラベルの設定も素晴らしいです。

タイムトラベル系の作品の中ではフィクションながら現実に有り得そうな設定という点にワクワクしましたし、ツッコミどころはあるものの設定を上手く活かしたストーリーも良かったので☆5。

設定の面白さについてはある程度知識が無いとわかりにくいので、良さが伝わりにくいかも。

話としては

シングルマザーで物理研究所の上級研究員であるシアティエンは、長年、”過去”に戻るタイムリープ装置の研究に尽力していた。ある日、遂に生体組織を「110分」だけ過去に遡らせる事に成功。更なる研究のための追加資金も確保するが、そのニュースにより、ひとり息子ドゥドゥが誘拐され…

リセット 決死のカウントダウン

2017年の中国のタイムトラベルSFスリラーサスペンス映画。

若干ネタバレありの感想

タイムトラベルの機械には再構築した際に脳に異常が出てしまうという不具合があり、それを防ぐために触媒粒子によってそれを防ごうとします。このあたりも考え方としてリアリティがあるなと思いました。

また、主人公の研究者 シアティエン(ヤン・ミー)は息子が誘拐されたことをきっかけに、タイムトラベルをするわけですが、前述した不具合により、いろいろと変化が起きてしまいます。その見せ方も良かったなあと。

最終的に3人になり、その演じ分けをするヤン・ミーさんもとても良かったです。オチもわかりやすくて、うまく作られているなと感じました。

結構衝撃的だったのは、子どものシーン。今の映画やドラマでは結構NGとされているシーンをさらりと描いていたので、攻めているなと感じました。

タイムリープものじゃない

本作はタイムトラベルものでタイムリープものではありません。タイムリープは意識が時空を超えるため、基本的に世界に同じ人は1人なわけです。

しかし、本作はタイムトラベルもの。さらに言えば、多世界解釈による並行世界へのタイムトラベルなので、同じ人物が複数存在するわけです。

バタフライ効果は起きない

また並行世界なのでバタフライ効果などが起きないという解釈も本作の特徴。同じ世界をタイムトラベルする場合、バタフライ効果によって未来が変化します。これはバック・トゥ・ザ・フューチャーなどをはじめ多くの作品で描かれていますね。

しかし、並行世界へのタイムトラベルというのは結構少ないんじゃないかなと。また並行世界系の話だと、まったく違う世界ということが多いですが、本作は最新の物理学で議論されているマルチバース宇宙論をネタにしていることもあって、ほぼ同じような世界なんですよね。そこも本作の設定の妙だなと思いました。

このあたりの知識が無いと設定の面白さがわかりにくいのが本作の難点かも。

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