永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編 感想と言葉のメモ

投稿者: | 2024年5月1日

評価・レビュー

☆5/5

人によって感じ方は様々だと思いますが、個人的な感覚としては、自分とは出発点が違ったこともあって、その点がいろいろと気になってしまいました。

当時の状況を考えれば、科学的な情報が少ないということもあるかなと。

逆に言えば、現代の知識を踏まえた上で、カントはどう考えるのだろう?というのは、とても気になりました。

あと、個人的に気になったのは、注釈がとても多く、さらに注釈の注釈があることで、本文よりも分量が多いのではないかと思えた点です。

裏を返せば、本書の理解を深めるには、それだけのバックグラウンドとなる知識が必要とも言えます。

そういう意味では、とても親切ではありますが、まずはカントを読んでみたいという人にとっては、そこで面食らってしまうかもしれないなとも感じました。

個人的には思うところはあるものの、それでも考え方が非常に面白く、深く思索していることを感じ、一読ではカントの考えの表層をちょっと撫でたぐらいだろうなと思ったので、また改めて読んでみたいと思いました。

以下は本書を引用しつつ、個人的な考えのメモです。

啓蒙とは

啓蒙とは何か。それは人間が、みずから招いた未成年の状態から抜けでることだ。未成年の状態とは、他人の指示を仰がなければ自分の理性を使うことができないということである。人間が未成年の状態にあるのは、理性がないからではなく、他人の指示を仰がないと、自分の理性を使う決意も勇気ももてないからなのだ。

カント. 永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編 (光文社古典新訳文庫) . 光文社. Kindle 版.

本書は啓蒙とは何か?からはじまります。

カントはそれを自分の理性で行動すること、言ってしまえば、自ら考えて行動することであるとしています。

啓蒙を辞書で調べると、

人々に正しい知識を与え、合理的な考え方をするように教え導くこと。

啓蒙(ケイモウ)とは? 意味や使い方 – コトバンク

と出てきます。

ゆうなれば、合理的な考えによって人々を教え導くには、人の指示で動くのではなく自ら考える必要があるということなのかなと。

お金さえ払えば、考える必要などない

わたしは、自分の理性を働かせる代わりに書物に頼り、良心を働かせる代わりに牧師に頼り、自分で食事を節制する代わりに医者に食餌療法を処方してもらう。そうすれば自分であれこれ考える必要はなくなるというものだ。お金さえ払えば、考える必要などない。考えるという面倒な仕事は、他人がひきうけてくれるからだ。

カント. 永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編 (光文社古典新訳文庫) . 光文社. Kindle 版.

この文章は、個人的にちょっとタイムリーな話題とも重なって、グッと来ました。

特に「お金さえ払えば、考える必要などない」というのは、とても腹落ちしたというか。

お金持ちの方がとある人と対談した動画を見たですが、いくつかの話題において、特に人生観というか、哲学的な領域について、お金持ちの方の言動がズレているという印象を受けました。

どうズレているかというと、感覚としては中学生が話しているような感じ。

生まれたときからお金がたくさんあって、何でもお金で解決してきたんだろうなあというのを、すごく感じました。

だから、小さい頃から人生観や哲学的な領域について、先に進めていないという印象です。

まさに、「お金さえ払えば、考える必要などない」んだろうなあと。

で、それが悪いことだとは個人的に思っていません。

だって、カントもその後に書いているように、考えるというのは面倒な仕事なんです。

そんな面倒なことは、しないに越したことはありません。

その方が毎日楽しいし、幸せな気がするので。

だから、そのお金持ちの人からすれば、カントの言葉はお金が無い人の僻みに聞こえるかなとも感じました。

そんなことをふと思ったので、とても印象的なフレーズに感じています。

先入観の怖さ

先入観は、それを植えつけた人々にも、そもそもこうした先入観を作りだした人々にも、いわば復讐するのである。

カント. 永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編 (光文社古典新訳文庫) . 光文社. Kindle 版.

近年の急速なSNSの発達により、様々な人がネットで発言できるようになりました。

その中で、一番怖いというか、恐ろしさを感じるのは、やはり先入観かなと。

これは自分自身のこととしても感じますが、先入観に基づく言説は、かなり慎重になるべきのように感じます。

最近の例では草津町長の冤罪事件でしょう。

前橋地裁は、黒岩信忠町長の訴えを認め4月17日に電子書籍を執筆した飯塚玲児氏と新井元町議に賠償命令を下しました。

控訴するかどうかはわかりませんが、控訴したとしても大きく結果は変わらないでしょう。

なぜなら、証拠が虚偽であることがわかっているためです。

この事件当時、様々な方たちが新井元町議が女性で弱い立場であるという先入観から、草津町長だけでなく、草津町自体に対しても、強い言葉で非難をしました。

しかし、結果としてその非難は間違いであったことが判明しています。

これが先入観の恐ろしさかなと。

とても重要なことは、誰しもが先入観によって、同じようなことをしてしまうかもしれないということです。

これは自分自身についても、強くそう思います。

だからこそ、誰かの発言や情報について鵜呑みにするのではなくて、一度立ち止まって自分の頭で考えてみるというフェーズを作った方が良いのかなと。

そんなことを思いました。

なぜ国同士の戦争が絶えないのか

法律にしたがって権力を行使する支配者がさらに上にいなければ、だれもが自分の自由を濫用するに決まっているからである。だから最高位に立つ元首は、みずからが正義の人物であり、同時に人間でなければならないのである。 このようにこの課題はもっとも解決の困難なものである。

カント. 永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編 (光文社古典新訳文庫) . 光文社. Kindle 版.

ロシアがウクライナへ侵攻した時、様々な国が非難を表明しましたが、ロシアはそれを意に介すことはありませんでした。

もし、ロシアよりも上に、つまり国よりも上に支配者、または支配する組織があった場合はどうでしょうか?

もしかしたら、ロシアはウクライナへ侵攻しなかったのかもしれません。

ただ、その上の支配者や支配する組織が、暴走した場合はどうなるでしょうか?

結局のところ、堂々巡りと言うか、人間が介在する限り、戦争は絶えないような気がします。

また、法律があったとして、それにすべての人が服従しているとしても、法律を犯す人は存在するので、結局全世界で戦争をしないことを約束し、法律を定めても、守られないだろうなと。

AIによる裁定という考え方もあるかもしれませんが、AIも誰かが作ったものであり、そこに恣意的なものが入れ込まれる可能性は否定できません。

そうなるとやはり人間がいる以上、戦争が起きるのは仕方のないこととも思えてしまいます。

あくまで個人的に本書を読んだ感じでは、カントは最終的に到達する理想的な社会があるとしながらも、そこに到達するには相当な長い時間がかかる、または永遠にたどり着けないかもしれないが、そこを目指すべきというか、自然と人間はそこを目指すように作られていて、その状態が続くと考えていたようです。

それは人類にとって絶望でもあり、希望でもあるのかなと。

増税する理由

権力者の最後のよりどころは、確実に期待することのできる政治的な栄誉である。どのような方法で獲得したかは問題ではなく、権力が拡大することこそが栄誉なのである。

カント. 永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編 (光文社古典新訳文庫) . 光文社. Kindle 版.

日本では近年どんどん税金が上がっています。

2024年度の国民負担率は45.1%になるとの見通しを財務省が発表しており、約半分を税金として取られている状態です。

日本よりも国民負担率が高い国もあれば低い国もありますが、そもそも税収が大きくなるということは、政府の力が強くなるということでもあります。

つまり、政治家や官僚の力が強くなる、権力が拡大するということです。

これは過去の歴史を振り返ってみてもそうかなと。

国民から搾り取った税金を使って、権力を強めていくというのは、権力者たちの常套手段とも言えます。

また、消費税が上がっていく一方で法人税は下がっているので、増税ばかりではないという意見もあるかなと。

ただ、法人税が下がるということは、会社の収益が上がるということで、会社の収益が上がるということは経営者、つまり会社における権力者の功績になるわけです。

これも権力の拡大とも言えますね。

また、政治家や官僚としては、国民全員よりも一部の経営者と仲良くした方が、様々な恩恵を得ることが可能です。

政治家としては献金が直接的なメリットで、官僚としては天下り先というのが大きなメリット。

なので、日本における増税というのは権力者たちの権力拡大の意図を個人的には強く感じています。

歴史は繰り返すではないですが、人間が国家を運営する限り、おそらくこの構造は変わることはないだろうなと。

あと、増税って本当に酷い施策だなと個人的には思っています。

例えば家庭の場合、支出が増えたら、節約したりして支出を調整するじゃないですか。

だって、収入がいきなり増えることはないので。

でも、増税って即収入を増やせるんですよね。自分たちで収入を調整できちゃうわけです。

これは国家という仕組みの大きな問題点じゃないかなと個人的には思っています。

いや、これも人間が運営してるからかもしれませんね。

常識的に考えるなら、まずは支出を見直すことからはじめて、これ以上削ることができないことを国民に説明するのが筋かなと。

その上で増税というのであれば、文句を言う国民は居ないように思います。

結局、無駄に使っているお金、正確には権力者たちの私腹を肥やすものだったり、不正を働く人達に渡ってしまったりしているお金を、まずはバッサリ切れば、正直、増税は不要なんじゃないかなと。

自分が経験したところでは、正直、何のために存在しているのかわからない組織とか、箱物といわれる施設とかがいっぱいあって、そこでは高齢の方たちが権力を持っている状態になっている現実があります。

天下りとかもそうですね。

そもそも官僚の人が、いきなり民間会社の取締役とか顧問とかできるわけないですよ。

だって、ビジネスの経験が無いですから。

じゃあなんで取締役とか顧問になれるかというと、国からの事業を請け負うためのパイプ役なんですよね。

つまり、馴れ合いになっているわけ。

そのあたりも改善していけば、不要な支出も減っていくだろうなと。

まあ、そうなると官僚になる旨味が無くなって優秀な人が居なくなるという人もいるでしょうが、個人的には悪知恵の働く人よりも、誠実な人の方が国家の運営には向いている気がしてます。

そして誠実な人だと皆がわかれば、その分、給与を増やすことに国民は納得するんじゃないかなと。

裏でこそこそするから、ずっと信頼を取り戻せていないのが現状のように個人的には感じています。

公開性なしにはいかなる正義もありえないし(正義というのは、公に知らせうるものでなければ考えられないからだ)、いかなる法もなくなるからだ(法というものは、正義だけによって与えられるからだ)。
すべての法的な要求はこの公開性という性質を備えている必要がある。

カント. 永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編 (光文社古典新訳文庫) . 光文社. Kindle 版.

とカントも書いていますが、様々な事情を公開できないというのは、結局何か悪いことをしていると思われても仕方がないのかなと。

そのあたりを全部公開して、国民の信を問うのが、個人的には一番だと考えています。

その他の個人的に気になった言葉メモ

おそらく革命を起こせば、独裁的な支配者による専制や、利益のために抑圧する体制や、支配欲にかられた抑圧体制などは転覆させることができるだろう。しかし革命を起こしても、ほんとうの意味で公衆の考え方を革新することはできないのだ。新たな先入観が生まれて、これが古い先入観ともども、大衆をひきまわす手綱として使われることになるだけなのだ。

カント. 永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編 (光文社古典新訳文庫) . 光文社. Kindle 版.

公衆を啓蒙するには、自由がありさえすればよいのだ。しかも自由のうちでもっとも無害な自由、すなわち自分の理性をあらゆるところで公的に使用する自由さえあればよいのだ。

カント. 永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編 (光文社古典新訳文庫) . 光文社. Kindle 版.

自由が国民の意識に浸透していくと、自由に行動する能力がますます高められ、それがやがては統治の原則にまで及んでいくのである。こうして統治者は、もはや機械ではなくなった人間を、その尊厳にふさわしく処遇することこそが、みずからにも有益であることを理解するようになるのである。

カント. 永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編 (光文社古典新訳文庫) . 光文社. Kindle 版.

礼儀とは、軽蔑の念を招きかねないものを隠すという善き作法であり、他者の尊敬をみずからに集めようとする傾向であり、すべての社交の本来の基盤である。

カント. 永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編 (光文社古典新訳文庫) . 光文社. Kindle 版.

自然の歴史は善から始まる。それは神の業だからである。しかし自由の歴史は悪から始まる。それは人間の業だからである。

カント. 永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編 (光文社古典新訳文庫) . 光文社. Kindle 版.

もの思う人間は苦悩を感じる。これはものを思わぬ人は知らない悩みであり、あるいはこの苦悩から道徳的な堕落が発生するのかもしれない。

カント. 永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編 (光文社古典新訳文庫) . 光文社. Kindle 版.

戦争という最大の悪が、道徳的に開化された民族を苦しめているのはたしかである。しかもわれわれは現実の戦争や、かつての戦争そのものよりも、将来の戦争にそなえる準備のために苦しめられている。この戦争のための軍備はやむことがなく、しかも絶えず増大するばかりである。この目的のために、国家のすべての力が、偉大な文化の創造のために使えたはずのすべての果実が、浪費されているのである。そしてさまざまな場所で自由が抑圧される。

カント. 永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編 (光文社古典新訳文庫) . 光文社. Kindle 版.

国家が自分の権利を追求する方法は、国際的な裁判所に訴える訴訟という形をとることはなく、戦争によらざるをえない。

カント. 永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編 (光文社古典新訳文庫) . 光文社. Kindle 版.

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