評価
☆5/5
2019年5月に放送(日本では10月)された実話を元にしたドラマ。コロナウイルスが拡散する少し前で、かなりタイミングよく放送されました。
緊迫感と緊張感がずっと続く作品で、テンポ自体は早いわけではないのに息をつく暇がなかなかないのが特徴かなと。特にコロナ環境を経験した後だと、自体の深刻さがビンビンに伝わってきますね。
ナショナルジオグラフィックの作品で、多くの人に観て欲しい良作なのですが、日本だとケーブルテレビを契約しないと見れないのが残念。ちなみに自分はYoutubeの期間限定でみました。
話としては
アメリカ東海岸で亡くなったサルの細胞に違和感を感じた陸軍感染医学研究所のナンシーは、エボラウイルスを疑い恩師であるカーターへ連絡する。もし、エボラウイルスだった場合、対処が遅れれば多くの人命が失われる。ナンシーはすぐに行動を起こし、感染した可能性のあるサルを駆除すべきと主張するが、サルを管理している会社やCDCなどの障害に阻まれ難航するのだった。そして人間の血液からエボラウイルスの陽性反応が出る。もはや、一刻の猶予も許さない状況だった・・・。
本作は話が2つの時間軸で進みます。アメリカでエボラウイルスが見つかった事件と、アフリカで最初にエボラウイルスに遭遇した事件です。話は両方を行き来しながら進みます。これは、エボラウイルスの危険性をより顕著にするためかなと思いますが、若干話が複雑になるので、話数で分けても良かったのかなと個人的には思いました。
ネタバレありの感想
まあ実話を元にしているという時点で、結果はわかっているのですが、アメリカではエボラウイルスが蔓延した事実はありません。当然、本作もエボラウイルスの蔓延は防ぐことができています。そして最後の締めくくりとして、しっかりとした対策をすべきだという締めくくりになっています。
しかしながら、コロナウイルスの現状を見るとアメリカは2022年3月29日時点で死者の累計が100万人を超えています。
エボラウイルスとコロナウイルスを一緒にすることはできませんが、世界的にみても感染者数は多く、うまく対応できていないようにも見えます。
逆に中国は恐ろしいほど感染者も少ないですし、封じ込めに成功してます。この違いは一体何なのかなと考えてみたのですが、やはり強権発動ができるかどうかなのかなと思いました。
民主政治の弱点
コロナウイルスに対して中国は強権発動をして武漢をロックダウンしました。対応は早かったと言えるでしょう。中国は政府の力がかなり強く、言論統制や査察なども行われていることが公になっていますが、それが逆にコロナウイルスへの対応という点では良い面に働いたと言えるでしょう。
逆に民主政治を掲げる各国政府は対応がとても難しかったです。ロックダウンすれば封じ込めはできるが、様々な人々の意見によってロックダウンしにくかったと言えます。即断即決がしにくいというのは、民主政治の弱点とも言えますね。
本作ホット・ゾーンでも、軍とCDC、民間企業での対立によって迅速な対応ができないことが描かれています。やはり組織の対立というか、相容れない構造というのは、どこの国でも起きることなんだろうなと思いました。
日本でも緊急事態宣言やワクチン接種に対して、反発がいろいろとありましたね。そのような状況ではありましたが、結果として先進国の中で日本は何とかコロナ対策をうまくできた方ではあったかなと思います。不幸中の幸いというのもあまり良い表現ではないように思いますが、少なくとも日本はうまくいった方であることは事実として認識しておきたいところです。
コロナでの強権発動は後の禍根になりうる
コロナウイルスが蔓延していた当初、個人的には強権発動でロックダウンした方が結果的に良かったのではないか?と思っていました。
しかし、冷静になって考えてみると、民主政治において強権発動は後に禍根を残す可能性が高いなと思います。
一度前例を作ってしまうと、それが普通になってしまうからです。つまり、あの時強権発動したのだから、今回も発動すべきという意見に傾きやすくなってしまうということ。
まあ、決断力が無かったとか、玉虫色にしがちだとか、様々な考えはあると思いますが、結局のところロックダウンはしなくて良かったのだろうなと今は思っています。
緊急事態宣言があれだけ何度も連発された事を考えれば、ロックダウンも一度発動してしまえば、乱発した可能性は高いでしょう。そして、その強権はのちのちに同じように使われる可能性がでてきてしまいます。
そういう意味で日本は土俵際でギリギリ踏ん張ったと言えますね。
余談
個人的にふと頭をよぎったのは銀河英雄伝説。銀河英雄伝説では専制君主 vs 民主政治という構図で宇宙の覇権をかけ戦う話なのですが、コロナウイルスの状況を見ているといろいろと符合する点や感じる点が多いです。
民主政治の弱点は前述したように、トップの決断が遅れがちになり迅速な対応がしにくいということでしょう。また、個々人の利益を優先するきらいがあるので、こと国家という点においてはマイナスになることがあります。
ただ、中国のような社会が良いのかと言われると、やはり疑問ではあります。
結局何が言いたかったかというと、やっぱり最悪だけど民主政治しか今は選びようがないってことなのかなって話。
リンク
- ドラマレビューまとめ | ネルログ
- 映画レビューまとめ | ネルログ
- ホット・ゾーン (テレビドラマ) – Wikipedia
- ホット・ゾーン|番組紹介|ナショナル ジオグラフィック (TV)
- 新型コロナウイルス感染症の世界の状況報告