ドキュメンタリー フェイク・シェイク ~おとり取材の仕掛け人~ – スクープに取り憑かれた男の絶頂期と転落人生

投稿者: | 2023年10月27日

評価・レビュー

☆4/5

フェイク・シェイク ~おとり取材の仕掛け人~は、イギリスでおとり取材によってスクープを連発したマザ・マムードという記者を、実話を元に関係者の話でまとめたドキュメンタリー。全3話。Amazonオリジナル作品。

全体として淡々と話が進みますが、実際に取られた映像もあって、臨場感を感じることができ、個人的には楽しめました。

エンタメ作品ではないので、そのあたりで少し評価は分かれそうですが、おとり取材というテーマは非常に興味深く、面白かったです。

おとり取材とは

おとり取材とは、マザ・マムードが架空の人物になり有名人に近づいて、様々な裏の顔を引き出す取材方法。

例えばシェイクという名前のアラブの金持ちになって、スポンサーとなって新たな映画を作りたいとか、サッカーチームを作りたいというオファーを有名人にして、そこで麻薬などを欲しいと言って有名人に持ってこさせたり、お酒をたくさん飲ませて失言させたりします。

このやり方に賛否はあるものの、マザ・マムードはこれによって数々の有名人のスクープをゲットしまました。

ヴィクトリア誘拐未遂事件

2002年、サッカー選手 デビットベッカムの妻 ヴィクトリアの誘拐未遂事件がありました。

サッカー好きなら記憶の片隅に残っているかも知れない事件です。

実はこの事件にもマザ・マムードが関わっています。

マザ・マムードは誘拐未遂事件の情報を得て、イギリス警察に通報してるんですよね。

ただ、最終的にこの事件は、マザ・マムードに情報提供をした人間がお金欲しさにでっち上げた嘘情報だったことがあとでわかります。

マザ・マムードは特に悪いことはしていませんが、まさか事件に関わっていたとは驚きでした。

絶頂期からの転落

マザ・マムードはイギリスで賞を取るなど絶頂期を迎えます。

しかし、徐々に時代は変化し、働いていたタブロイド紙 ニューズ・オブ・ザ・ワールドが廃刊に。

そして新たなタブロイド紙でスクープを狙います。

狙ったのはイギリスの人気番組 X FACTORで審査員もしていたトゥリーサです。

トゥリーサはX FACTOR後、次の活躍の場、ビジネスを求めていました。そこにマザ・マムードがおとり取材で映画のオファーを出します。

そして、いつもの手で麻薬の売人として仕立て上げようとしたのです。

ところが、トゥリーサは無罪を主張して裁判を行います。トゥリーサとしては旗色が完全に悪く、マザ・マムードが勝利するかに見えたのですが、ドライバーの証言が覆ったことでトゥリーサは無罪を勝ち取ります。

その後、マザ・マムードは偽証の件で逮捕され、7ヶ月の刑務所にいたのですが、その後の消息は誰も知らないそうです。

栄光にすがりつくのは・・・

マザ・マムードは時代が生み出した天才記者であることは間違いないでしょう。

おとり取材については、かなりスレスレというか、個人的にはアウトだろうと思うようなやり方ですが、当時はそれが許されていたわけで、使えるものは何でも使ってスクープを取るという信念の強さを感じます。

一方で、本作では恋人だった人物も登場し、マザ・マムードが悪魔のような人間ではなく、普通の優しい人間だったことがわかります。

しかし、恋人とも分かれ、ニューズ・オブ・ザ・ワールドが廃刊になったことで、マザ・マムードの作られた記者としての像というか、イメージが大きく揺らいでしまったのかなと。

いわゆる過去の栄光を取り戻そうとして、スレスレだったボーダーラインを一歩踏み込んでしまったのが、彼の失敗だったのかもしれません。

この手の話というのは、よくある話で誰しもが陥ってしまうことなのかなと。

そういう意味ではマザ・マムードの人間味を感じますね。

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