天上の飲み物 – 俺を殺すのは凶器や恐怖ではなく、退屈なのではないか

投稿者: | 2025年3月22日

評価・レビュー

☆4/5

吸血鬼である後藤次郎の視点で描かれる、人間の彼女との物語。短編。

さらっと読めて良かったです。

ただ、短編1つだけなので、他にももう2つぐらい短編を読みたかったなあと。

Kindle Unlimitedで読んだので、お金の部分はあんまり関係無いんですけど。

また、二度目に読むと、結構味わい深い内容なので、一度目で微妙でももう一度読んでほしいなと思った作品。

個人的に三浦しをん先生の文章が好きです。

以下は、本文を引用しつつ個人的なメモ。

俺を殺すのは凶器や恐怖ではなく、退屈なのではないか

俺を殺すのは凶器や恐怖ではなく、退屈なのではないか。そう思い至ってからは、新しい経験を追い求めるのはやめにした。刺激なんて、インフレが激しい国の紙幣みたいなものだ。いっぱい0が並んだ高額紙幣でも、まともに物も買えやしない。それと同じだ。いくら刺激を集めても、決して満たされることはない。満たされないと思い知らされて、がっかりするのはもうごめんだ。

吸血鬼の主人公の言葉です。

で、この言葉、人間にも当てはまるなあというのが個人的な感覚。

刺激を追い求めても、満たされることはなく、さらに追い求め続けた先には、空虚しかないというか。

これは自分の考えですが、そんな空虚も人生というか、重要な気はしています。

世の中において、良い人生とか悪い人生とか言われたりすることがありますが、本当にそれは良い人生なのか、悪い人生なのかって、わからないというか。

本人が納得していれば、クソみたいな人生であっても楽しいでしょうし、どれほど裕福な暮らしをしていても、物足りなさを感じていれば、辛い人生でしょうし。

つまり、他者が決めることではないんじゃないかなって。

大切なのは、自分自身の心かなと。

最近、そう思っています。

俺はまんまと恋に落ちた。懲りもせずよくやるな、と自分でも思う。

恋はむなしいし飽きると言い、なるべく心を動かさないようにするとも言ったのに、実に恥ずかしいかぎりではあるが、俺はまんまと恋に落ちた。懲りもせずよくやるな、と自分でも思う。

刺激を避けて生きることを決めた吸血鬼の主人公でしたが、結局、恋に落ちるというのが、本書のはじまり。

実際にどんな恋愛なのかについては、本書を読んでいただければなと。

クスリと笑えてしまう内容もあれば、切なさというか、様々な葛藤があり、個人的には面白かったです。

特に二人のやり取りというか、描写というか、詳しくは書きませんが、ツボったところがあって良かったです。

自分の話で言えば、これまでいくつも失敗を繰り返し、未だ独身。

で、もう恋はしないだろう、人を好きにはならないだろうと思っていたのですが、自分もまんまとやられてしまい、そしてまたうまくいきませんでした。

でも、また新しい恋がはじまり、なんとも節操がないなと思いつつ。

ただ、本小説の最後の言葉が、人生の芯を捉えているというか、その通りだなあという感じで、ぜひ最後まで読んで欲しいです。

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