蒼天航路とは
蒼天航路(そうてんこうろ)とは、後漢末期から三国時代までの物語を曹操(幼名 阿瞞)視点で描いた作品。よく知られている三国志の物語は三国志演義を元にし劉備が主人公として描かれることが多く、曹操は悪役として登場する。例えば映画 レッドクリフなどに代表されるように、この構図は日本だけではない。
しかし、本作では曹操が主人公であり、斬新な解釈で新しい曹操像を描き出しているのが特徴。勉強熱心で新しいことをどんどん取り込んでいった魅力的な曹操を、独特の作画で大胆に表現した作品。三国志好きならぜひ読んでおきたいマンガの1つ。
原作・原案 李學仁(イ・ハギン)先生、作画 王欣太(きんぐ ごんた)先生で、1994年から2005年まで連載。
評価
☆5/5
蒼天航路の面白さは、曹操がとても魅力的に描かれている点でしょう。
現代においても多くの人を魅了する三国志。もはやファンタジーに近い世界観になりつつありますが、三国志の主人公と言えば劉備を挙げる人が日本では多いかもしれません。個人的には判官びいき的な日本人の感性も大きく影響しているのかなと思います。
蒼天航路を読むとその感覚が大きく変わると思います。例えば最近だと周王朝末期の春秋戦国時代を李信を中心に描いたキングダムは始皇帝の幼少期の話がたくさん出てきます。始皇帝というと焚書坑儒など悪政をしいた君主として非常に悪い印象がありますが、キングダムに出てくる嬴政(のちの始皇帝)はまったく別な印象で好印象を持っている人も多いのではないでしょうか。
実際に誰が主体かによって物事の捉え方は大きく変わるので、当たり前と言えば当たり前なのですが、なかなか曹操を主人公にした作品というのは少ないので、とても貴重な作品かなと思います。
曹操というと、やはり孫子の兵法でしょう。自身で注釈をつけるほどで、それが現代においても孫子の兵法を読み解く際の助けになっています。勉強熱心であったことは知られており、また過去の風習に囚われない新たな施策を打ち出していて、もともと悪者という感じでは無いんですよね。
蒼天航路の面白さとして欠かせないのは、魅力的な魏の武将たちでしょう。どうしても劉備が主人公だと蜀の武将にフォーカスがあたりがちですが、本作は主人公が曹操ですので曹操の幕僚たちが、とても興味深く描かれています。
躍動感のある絵柄も本作の特徴であり魅力でもあるのですが、少し好みは出るかなと。
他にもいろいろと書きたいことはありますが、蒼天航路は乱世の奸雄を新解釈し、魅力的な曹操や配下たちを描いた傑作マンガの1つだと思います。