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評価・レビュー
☆5/5
サイコパスというと、基本的にはネガティブなイメージが強いかなと思います。
では、サイコパスに学ぶというのは、どういうことかというと、サイコパスの特性には、良いところと悪いところがあり、その中の良いところを取り入れようという話です。
本書では、サイコパスの様々な特性について、ミキシング・コンソールのダイヤルに例えています。
この特性を上手く調整することで、困難を乗り越え成功を手に入れることができるということ。
例えば、サイコパスの特性として、冷酷というのがあります。
人間は誰しも冷酷な部分があるのは確かです。
しかし、基本的にはそのダイヤルは低く設定されていることがほとんど。
仕事においても、冷酷になりきれずに、判断を誤ってしまった経験がある人も多いのではないでしょうか。
判断に迷った時に、この冷酷のダイヤルを少し上げる、つまり自分でコントロールすることで、誤った判断を防ぐことができるというわけ。
このコントロールが難しいというのもありますが、意識するだけでも、結構違いはあるかなと個人的に思っています。
そして、本書ではダイヤルをうまくコントロールして、良いサイコパスになろうというのがテーマです。
なので、サイコパスになることが目的ではありません。
感情のコントロールは、社会生活を送るうえで近年求められる能力の1つと言えます。
まずはその認識をするという意味で、良い一冊かなと。
以下は、本文を引用しつつ、個人的な感想などのメモです。
成功は相対的だ
成功というものは完全に相対的なもので、絶対的なものではないということだ。
これは常に意識しておきたいなと思った言葉です。
誰かと比べて、どちらが成功しているかを競っていたら、キリがありません。
それに、比べる相手をどう選定するかも難しいかなと。
例えば、Youtuberをやっているとして、ヒカキンさんと比べたら多くの人が成功者ではないでしょう。
また、内容についても様々です。
娯楽的なコンテンツと教育的なコンテンツを単純に再生回数やチャンネル登録者数で比べるのも違うのかなと。
結局、何をもって成功とするかは、その人次第。
そもそも目標を達成することがゴールであって、誰かよりも良いことがゴールではないのかなと思います。
なんか、これって幸福とかにも言えることなのかなと。
誰かと比べて、自分は幸福なのか、不幸なのかって考えているうちは、きっと幸福は得られないんじゃないかなという話。
ダイブ!ダイブ!ダイブ!
多くの人が自分の望むものを手に入れられないのは、崖から飛び降りるのが怖いからだというのは真実だ。
自分はビビリなので、崖から飛び降りるのは、とても慎重派です。
たまに、崖から飛び降りるような行為に見える行動をしているように見られることがありますが、実際にはリスクとリターン、将来のことも含めて、熟考した上で行動することがほとんどかなと。
その場で思いつきで話すことも結構あるのですが、基本的には人と話す機会があるときには、話す内容のシミュレーションを事前にしていることが多いですね。
ただ、そうやってモタモタしているうちに、状況が変わってしまうことも多くて、後悔するこもしばしば。
本当はもう少し自分の心に従ってダイブすることも必要なのかなあとは思っています。
パターンを勝手に作り出す脳
パターンが存在しないときでも、脳はパターンを存在させるために足りないものを補ってしまう。つまり、脳は自身が有用であることを示そうと、結論に飛びつくのだ。
これも注意したいなあと。
パターンというと難しそうに思いますが、先入観とかも同じかなと思います。
一度、こうに違いないと思ってしまうと、その思考から抜け出すのって難しいんですよね。
これは誰しもが起きることで、日本の場合で一番わかりやすいのは、増税かなと。
政治家や官僚は、増税しないといけないという先入観にとらわれすぎています。
それは増税パターンを作り出してしまっているとも言えるのかなと。
減税すれば税収が減る、増税すれば税収が増えるというパターンです。
しかし、これは正しくありません。
減税しても税収が増えるパターンもあります。また、短期的には税収が減っても長期的には増えるパターンもあります。
さらに言えば、経済は基本的にインフレがずっと続く傾向にあるため、物価はどんどん上がっていくんですよね。
デフレが起きることもありますが、世界的にも物価は上がっていく傾向になっているので、デフレ基調になることはあまり無いでしょう。
また、お金はどんどん刷られていきますが、刷ったお金を回収することもありません。
これもインフレ傾向になる理由の1つです。
何が言いたいかというと、インフレ傾向なら、減税しても税収は上がっていくということ。
非常に当たり前のことなのですが、近視眼的になってしまうと気づかない場合もあると思います。
余談
ただ、個人的には・・・それをわかった上で増税してると考えていますが。
増税すれば、政府の力、というか政治家や官僚の力が強くなります。
そもそも二極化政策も、政府の力を強くするためのものです。
多くの市民がそれなりの財力を持ってしまうと、政府によるコントロールが効きにくくなります。
少数の富裕層による多数の貧困層支配が楽ということです。
特に日本においては、革命という歴史がありません。なので、日本では革命が起きにくいと言われています。
なので、貧困層をたくさん増やしても、そこからの反発がほとんど無いということ。
と、話が逸れ過ぎました。
人生はあなたのことなど意に介していない
人生はあなたに恨みを持っているわけではない。あなたのことなど一切、意に介していないのだ。
人生ではないですが、昔友人に、神様について同じことを言われたことがあります。
神様は、人間について考えることなどないという話。
1人の人間がどうなろうと神様にとっては些末すぎることですし、知ったこっちゃないということです。
もし、神様がいたらという前提ですが。
それと同様に人生についてもそうだなあと、個人的には思っています。
そもそも人生というもの自体、人間が作り出した意味というか、意味付けをしたものでしかありません。
我々は意識が特別なものと考えがちですが、起きている出来事だけにフォーカスしていくと、そこには意味なんて存在しないですよね。
物理現象でしかないというか。その連なりによって、私たちの意識は生まれているに過ぎません。
そもそも意識とは何か?というのもまだ未解明なところがあるので、なかなか難しい話ではありますが。
大切なことは、人生を怨んでも何も起きないということ。これは運命とかもそうかもしれません。
あくまで人間が、というか、自分で意味づけることで、そこに重要性を持たそうとしているに過ぎないということ。
だから、悪いことが起きても、それを単純な出来事ととしてとらえ、深く傷つく必要は無いのかなと。
このあたりは本書の考え方として、メンタルをコントロールしてサイコパスの特性を上手く使えば乗り切れるという話です。
サイコパスの突進力
サイコパスは、何らかの報酬があり、何とか”対処”できると考えたら、それに挑んでいく。”するべきだった”とか、”もしあのとき”なんて絶対に後悔しない。彼らのメンタリティは、まさにかかってきやがれ! なのだ。
これは、とても重要なことかなと思います。
成功者と言われる人たちの話をいろいろと読んでいくと、がむしゃらにビジネスを進めていったという例が多いですよね。
いわゆる、これがサイコパスの特性をうまく引き出したことによる成功例なのかなと思います。
だって、成功者の多くがサイコパスってことは無いですから。
こういう突進力というか、一度決めたら邁進する力というのは、成功するために必須と言えそうです。
休憩が判決に影響する
意思の力は限られた資源なのだ。 誰にでも、ここぞという重要なときがある。たとえば最近のある研究は、裁判官が仮釈放を許可する決定が、食事休憩の前後で異なる結果になることを示している。なんと休憩前には許されないと考えられていた件でも、約六十五%が休憩後には許可されるという。
そういう傾向はあるだろうなあと思いつつも、データとしての情報があると、少し愕然としますね。
逆に言えば、それほど人間の感情というのは、判断に影響を与えていると言えます。
であるならば、判断はAIに任せてしまうのがベストなのでは?という気も。
AIによって仕事が奪われる職業なんてのが、ここ最近、毎年のように発表されていますが、個人的に一番AIに任せるべき仕事は、経営判断じゃないかなと。
つまり、経営者が不要という話。
成功確率が高いものを単純に選択すれば良いだけですから。
もちろん、成功確率が低いものを敢えて選んだことで成功する例もあるでしょうが、多くの場合は失敗します。
であれば、人間に判断を委ねるよりも良いのかなと。
また、責任という面でも、経営者にのしかかる責任を分散するというか軽減するということができそうかなというのもAIに判断を任せるメリットかもしれません。
正直、どれほど素晴らしい経営者だったとしても、間違った判断をすることが多々あるので、であるならば、最初から確率などで示してくれる方が、失敗を織り込んだ上で行動できるし、良いのではないでしょうか。
というのが、個人的には少し前までの考えでした。
最近は全く逆の考えを持っています。
というのも、アイデアが生まれるのは人間の誤作動が原因かもしれないと考えているためです。
人間はミスをし、間違った判断をし、失敗をする生き物ですが、それこそが人間にとって重要という話。
その間違いによって成長するというのもありますし、既存の概念をぶち壊すようなアイデアって、基本的には間違った考えから生まれるんじゃないかなと。
正しい選択だけでは新しいものは生まれないですし、正しさだけを求めるならAIに任せた方が良いということです。
だから、体調とか、感情によって間違った判断をしてしまうことが、新しい何かを生み出すきっかけになるんじゃないかなと。
シンプルさは説得にも役立つ
私たちの脳には、複雑なものよりも単純なものを好むという生来の傾向がある。そしてこの傾向は、私たちが説得と呼ぶ、不協和に満ちて混沌としたプロセスでは何よりも威力を発揮する。
自分はなるべく物事をシンプルにシンプルに考えるようにしていますが、それは人間に備わった脳の傾向なんだなあと。
複雑にする気になれば、世の中、いくらでも複雑にできるので。
ただ、あまりにシンプルさに引っ張られ過ぎないようにしたほうが良いなとも思いました。
また、シンプルさは説得でも威力を発揮するというのは、確かにそうかもしれません。
複雑なことは理解するのに時間がかかります。しかし、シンプルなものは理解に時間がかかりません。
トロッコ問題を時間基軸理論で考えてみるでも書いたのですが、人間は時間が短い方に重要性を感じると考えていたので、その考えとも一致するなと。
何と読むかわからない会社はダメ
言える会社は、買える! のだ。
これは個人的な経験からもそうかなと思います。
自分が編集者として最初に入った会社のメディア名は、間違えられることが多くて、伸び悩んだ原因の1つでもあるかなと。
結構前からですが、自分のハンドルネームもちょっと変えた方が良いかなと思ったり。
ネルソラというのは、認識されにくいなあという理由から。
ネルだけで良かった気がしています。
まあ、そのうち変えるかも。
部下に仕事をさせたいなら
もしも誰かを説得して何かをさせようとするなら、その相手の気分を悪くするのではなく、よくする必要がある。
まさにその通りだなと。
部下を叱責し、無理やりやらせても、マジで効率悪いし、禍根が残ります。
というか、そもそも論として、管理職の役割って、部下に仕事をさせることではなくて、部下が率先して仕事をする環境を整えることなんですよね。
何か、自分が今まで経験してきた会社では、ほとんどが部下に仕事をさせようとしていた気がします。
命令することが管理職、または役職者の仕事だと思っている方が多いという印象。
一度、部下の気分を良くするようなアクションを取って、仕事を依頼してみると、人間関係も含めて大きな変化があると思いますよ。
というか、自分の場合は大きな変化がありました。
我関せず
人生で侮辱されることがあっても、やりすごして笑っていればーーそして本当に意に介さないでいれば、自分のことを憐れんで時間とエネルギーを無駄にするよりも、はるかに素晴らしい場所にたどり着ける。
わかっていても、実践が難しいことかなと。
それこそ、ミキシング・コンソールのダイヤルをうまく調整して、良いサイコパスになって対処するのが良いんだろうなあと。
と、他にもいろいろと学びの多い一冊でした。
サイコパスという言葉で、少しネガティブな印象になりがちですが、役立つことがいっぱいあるのでおすすめです。