評価・レビュー
☆5/5
四角い部屋の真ん中に食糧が上から降りてくるプラットフォームが移動する穴が開いた高層の建物の中で繰り広げられるサバイバルSFスリラー。
上の階層ほど良い料理をたらふく食べることができ、下の階層に行けばいくほど料理は減り、最終的には何も残っていない状態になるという設定です。
まず、この映画を見始めて感じるのが、これが社会の縮図、つまり風刺になっていると誰しもが感じてしまう点でしょう。この設定が秀逸だなと。この時点で☆5です。
この手の荒唐無稽な不条理シチュエーションスリラー系が好きなら、設定だけで満足できる作品かなと思います。
ストーリーやオチについては賛否あるかなと。評価が分かれるのは、作品に少し意味を込めすぎたからかもしれません。この手の不条理シチュエーションスリラーといえばCUBEがありますが、CUBEとはちょっと方向性が違う感じなので期待感が高すぎたのかも。
またちょっとグロい表現も多いので、苦手な人は止めといた方が良いです。個人的には設定も良かったですし、話としてもかなり楽しめました。
話としては
その“穴”は世界を変える
ある日、ゴレンは目が覚めると「48」階層にいた。部屋の真ん中に穴があいた階層が遥か下の方にまで伸びる塔のような建物の中、上の階層から順に食事が”プラットフォーム”と呼ばれる巨大な台座に乗って運ばれてくる。
上からの残飯だが、ここでの食事はそこから摂るしかないのだ。同じ階層にいた、この建物のベテランの老人・トリマカシからここでのルールを聞かされる…1ヶ月後、ゴレンが目を覚ますと、そこは「171」階層で、ベッドに縛り付けられて身動きが取れなくなっていた!
果たして、彼は生きてここから出られるのか! ?
プラットフォーム
ネタバレありの感想
ここからは少しネタバレも含みつつ、個人的な感想を書いていきます。
階層が変わる意味
本作では1ヶ月ごとに、階層が変わります。これを生まれ変わりの暗喩と捉えることもできますが、個人的にはちょっとしたことで人生が変わってしまうことの表現でもあるかなと。
一部上場企業に就職し順風満帆(上の階層)だと思っていたが、会社が倒産してしまい再就職では大手に入れなかった(下の階層に落ちる)とか、事故や病気などもあるかなと。そしてそれらは外的要因によって変化するとう点。
人生何が起きるかわからんということです。
孫請ひ孫受け構造
上の層の人の食べ残しを下の層の人が食べるという構図は、個人的に今の日本のシステム開発の孫請ひ孫受け構造を思わせました。
一次請けの一部上場企業が中抜きして丸投げして、さらに委託された会社が中抜きして丸投げして、最終的に仕事を請け負う末端の会社はとても安いお金で仕事をすることになります。
本作で料理を作って出している側は、いわゆる官公庁と捉えることもでき、発注はするがその先の階層については知らんというのも、すごく構造として似ているなと。
メッセージは意味を成すか?
本作ではこの状況を変えるために、敢えて料理の1つパンナコッタを残して上にメッセージを送ろうとします。
しかし、料理を作っている側の描写でパンナコッタに髪の毛が入っていたことを料理長的な人が料理人たちに向かって怒るシーンがあったので、メッセージは伝わらないんだろうなと感じました。
これも今の日本の状況にすごく当てはまっているように思いますね。
いくら国民がメッセージを発しても、政府は見当違いの政策を打ち出すところとか。本当に国民のことを考えているのかなと感じている人も多いと思います。
まあ、政府(料理長)からすれば、それはどうでも良い話で、重要なのは自分たちが作る政策(料理)の出来栄えや実績だけなんですよね。国民(プラットフォームにいる人達)のことは考えてないわけです。下層で何が起きようと、政府(料理長)としては、ちゃんと政策(料理)は出してるんだから、自分たちは悪くないという話。
最後は希望か絶望か
最終的に子どもをプラットフォームに乗せて上層へ送り込むのですが、これが希望なのか?と言われると違うんじゃないかなあと。
個人的に感じたことは、子どもをプラットフォームに乗せて上げたのは、子どもをたちの未来を考えてくれというメッセージなんじゃないなかと。
で、それが現状を変えることができるのか?というと、主人公は最下層に残ったので、現状は変わらずということなのかなと。
つまり、今のクソみたいな階層社会は、今生きている自分たちの時代には変わらないという絶望の裏返しなんじゃないかなと思います。そして子どもを上に送った後の未来が描かれていないのは、結局未来も変わらないという話でもあるのかなと。
変わって欲しいですけどね。
リンク
- ドラマレビューまとめ | ネルログ
- 映画レビューまとめ | ネルログ
- Amazonオリジナル作品レビューまとめ | ネルログ
- 映画『プラットフォーム』公式サイト|2021年1月29日公開
- プラットフォーム (映画) – Wikipedia