
メリカの居場所探しに続けて、個人的に設定が一番面白そうだなと思った寄生移住を読みました。
紹介文
宿主の死期を感知した寄生虫は、移住の準備を始める。その過程で生じる内面の揺らぎに名はあるか。葛藤とともに移住した先は白血病患者だった。迫りくる死の前で浮かぶ前宿主。壊したくない、ただ生きたい 。生と死のあわい、最後の想いとは――『死ぬのが怖くてたまらない。だから、その正体が知りたかった。』(SB新書)の著者が贈る、命のパラドックスを描いた異色作。
BCCKS / ブックス – 『寄生移住』(著)浦出美緒 (編)上原 さんじ (表紙デザイン)吉田彩乃著
―可能でしたら明朝体表記でお読みください。
感想
話としては、人間に寄生しているナニかが主人公で、宿主の体調が悪くなり、他の宿主に移住しないといけなくなるという内容。
独自の世界観で、異色作と銘打つのは理解できますし、個人的にはとても楽しめました。
読み終わったときに、最初に考えたことは、読者にかなり依存しそうな内容かなということです。
まず、文章の圧力が強いなと。
具体的には、専門用語まではいきませんが、少し小難しく感じる用語が怒涛のように押し寄せてくる点。
リアリティや具体性みたいな点では、それらの用語は必要な情報だと思います。
ただ、短編であるため、それらの用語に対する知識が無いと、そこでちょっと壁を感じてしまうだろうなと。
アニメにもなったマンガ「はたらく細胞」などを読んでいれば、問題ないレベルではありますが、やはり前知識が無いと、そこで読むのを止めてしまう人もいそうな気がします。
また、読み進めていくとわかりますが、本作の根底には「死」というテーマがあり、そこも読者に依存しそうな点です。
このあたりは、著者の浦出美緒さんのこだわりだと思うので、そこで好みはでるかと思います。
逆に言えば、死というテーマに対して興味があれば、楽しく読める作品です。
これはあくまで個人的にですが、もし編集として携わっていたとしたら、寄生虫の知的レベルをもっと落とした方が良いかなという意見を出すと思いました。
その分、メインテーマである「死」についての考え方を深堀りしていく感じです。
単純ですが、なぜ、僕たちは死にたくないのだろう?的なことを、対話で探っていくみたいな。
ネタバレになってしまうので詳細は書きませんが、様々な情報から、おそらく、こういう設定なんだろうなあ、という推測はできるのですが、その点も読者依存になっている気もしました。
なので、いろいろと想像を膨らませるのが好きな人は、面白く読めると思います。
これは、余談ではありますが、個人的に死は解放だと思っていて、死後の世界があったら、それは絶望だなと思っています。