
A CROSSROADに続いては、はなればなれをチョイス。というか、こちらも同じ喫煙仲間ということで優先しました(笑)
紹介文
自分の右手が腐っているとしか思えない。幼いころから奇妙な感覚に苛まれてきた主人公は、人生の不調の理由をその「腐敗」に求めている。ある日、そんなに嫌なら手を切り落とせばいいと囁く人物に出会い、思いもよらぬ事態へ引きずり込まれていく。
BCCKS / ブックス – 『はなればなれ』(著)岡田周平(編)荒幡周平(表紙デザイン)いちじく著
感想
自分の右手が、自分のものとは思えない主人公の物語。
いやあ、設定が面白い。
実際にそういう疾患があるそうで、そこから着想を得たようです。
読み終わったときに、自分が最初に感じた感想は、荒涼感的な感じ。
荒涼感とは、荒れ果てて物寂しく、寂しい雰囲気が漂っている状態のこと。
これは本作品全体を通して思ったことなのですが、読んでいて、ずっと不安感というか、不安定感というか、心にずっと引っかかりがあるような感覚がありました。
それは作品の設定のせいもあるのかもしれませんが、個人的にはやはり文体や表現かなと。
これは、めちゃくちゃ良い意味で書いていますが、世界が定まっていない感が伝わってくるという感じが良かったです。
主人公の心理描写を書いていなくても、文章や表現から、主人公の不安定感を感じ取れるというか。
人によって好みは結構分かれそうな感じで、刺さる人には刺さるかなと。
端的に言えば、個人的に好きな文章だなということです。
また、全体の構成というか、流れから、どこに落着するのかが見えないというのも、不安感的なものを煽っていたような気がします。
あと、編集的な視点では、最後の部分は、もう少し説明があっても良かったのかなとは思いました。
そこが理解できるかどうかで、作品の評価も分かれそうなので。
ただ、あまり説明的になってしまうと、本作の文章や表現の特徴が失われしまうので、痛し痒しという感じ。
あくまで、個人的には、という話です。