映画 護られなかった者たちへ – 東日本大震災の当事者や関係者なら、何かしら感じるところがあると思う

投稿者: | 2022年11月5日

評価・レビュー

☆5/5

日本に大きな傷跡を残した3.11 東日本大震災。本作ではそんな3.11 東日本大震災をきっかけに人生が変わってしまった人たちが関わった連続殺人事件の話。

話としては「東日本大震災で家族を失った刑事 笘篠(阿部寛)は、両手を拘束され餓死した遺体の連続殺人事件の犯人と目される利根(佐藤健)を追っていくうちに、今回の殺人の動機が東日本大震災のときに起きた事件に行き着くのだった」みたいな感じ。

過去の震災時と現在(9年後)のパートが入れ子になりながら進むので、話のつながりがちょっとわかりにくいところはあったかなと思います。

原作は中山七里先生の同名の小説でジャンルとしては社会はミステリ。原作未読ですが、映画の方はミステリというよりはサスペンスヒューマン・ドラマに近いかなと。

また話が話だけに全体的に暗めでぼんやりしている映像なのですが、個人的に東日本大震災で大切な人を亡くした、まだ立ち直れていない人から見た世界というのは、こういう感じなのかなと思ったりもします。

自分も家族が福島にいたこともあって、東日本大震災をテーマにした作品には様々な思いがのってしまうなと。その点で評価は☆5としました。東日本大震災の当事者や関係者なら、何かしら感じるところがあると思います。

一応テーマとしては水際作戦と不正受給

本作は予算削減のために国が生活保護受給者の申請却下をする水際作戦や、度々問題になる生活保護の不正受給がテーマではあります。

水際作戦については少し悪めの印象で描かれていますが、東日本大震災の当時はもっと混乱もあったでしょうし、役所の人たちも疲弊していただろうなと。何せ、自分たちも当事者なわけで、家族を亡くした人もいれば、家を無くした人もいたでしょうし。

なんというか、いろいろといたたまれないことも多いなと。

というのも、先日、9.11後にアメリカが次のテロを暴くために行った尋問プログラムが拷問だったことを暴いた実話を元にした映画 ザ・レポートを見たのですが、それもちょっと似ているところがあるようにも感じました。

人間ってのは完璧ではないですし、間違いも犯すし、ミスもします。ましてや、高ストレス環境ではまともな判断なんてほぼできません。

そういう意味で単純に間違いや失敗を悪として叩くのはでなく、同じような悲劇が起きないようにするために、いろいろと考えることが大切なのかなと。アメリカの実話を元にした作品では、結構そういうことを意識して作っていることが多い印象ですが、日本だとあんまりフォーカスされにくいのが残念なところかなと思ったり。

まあ、いろいろと書きましたが、東日本大震災を忘れないという意味では良い映画だと思います。

あらすじ

全身を縛られたまま“餓死”させられるという不可解な連続殺人事件が発生。捜査線上に浮かび上がったのは、過去に起こした事件で服役し、出所したばかりの利根という男。刑事の笘篠は利根を追い詰めていくが、決定的な確証がつかめないまま、第三の事件が起きようとしていた―。なぜ、このような無残な殺し方をしたのか?利根の過去に何があったのか?さまざまな想いが交錯する中、やがて事件の裏に隠された、切なくも衝撃の真実が明らかになっていく―

アマプラ:護られなかった者たちへ

2021年公開作品。


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