マンガ 「子どもを殺してください」という親たち 実話に基づいた現代のダークサイドを抉る作品

投稿者: | 2022年6月16日

評価・レビュー

☆5/5

本作は精神障害者移送サービスを行っているトキワ精神保健事務所の押川剛氏が書いた同名小説のマンガ化。実話に基づいた内容で、ひきこもりやDVなどで手に負えなくなった子ども(と言っても30代とかですが)たちのリアルが描かれているのが特徴。

グロい描写もあるし、見ているとこちらが精神的に参ってしまうような状況が多々あり、言ってしまえば誰も手を付けたがらない現代のダークサイドの話です。

なので、見る人を選ぶ作品かなとは思います。

話としては

家族や周囲の教育圧力に潰れたエリートの息子、酒に溺れて親に刃物を向ける男、母親を奴隷扱いし、ゴミに埋もれて生活する娘…。現代社会の裏側に潜む家族の闇と病理を抉り、その先に光を当てる――!! 様々なメディアで取り上げられた押川剛氏の衝撃のノンフィクションを鬼才・鈴木マサカズ氏の力で完全漫画化!

「子どもを殺してください」という親たち

原作 押川剛先生、作画 鈴木マサカズ先生で2017年から連載。

医療系マンガでもエンタメマンガでもない

話のメインは手に負えなくなった子どもたちを医療につないでいくという点で、どのように治療されたのか、もしくはできなかったのか、原因は何なのかについて詳細に書かれているわけではありません。ですので、医療系マンガでは無いです。

また、エンタメ作品でも無いので、展開が面白い!とかもありません。結構淡々と書かれていて、そこが本作の良さでもあるかなと個人的には思います。

ただ、前述したように、こういうダークサイドの領域って臭いものに蓋じゃないですが、誰も見ようとしないですし、警察や保健所、医療機関にしてみればノータッチなんですよね。そこを明らかにしているという点では意義があると思います。

それは家族だけの問題か?

本作を読んで感じるのは、このようなひきこもりやDVなんかの話は、家族だけの問題なのか?という点。

まあ、親の育て方が原因で子どもの精神が歪んでしまうというのはありますが、そもそも論として異常を感じながらも、家族の中だけで完結させようとしたことが問題を大きくしてしまっているのではないかなということです。

ただ、自分の家族の話をオープンにするというのはとても勇気がいること。相談もしにくいでしょう。いわゆる身内の恥的な世間体もあると思います。

そして表に出てこないまま闇に葬られてしまう事例が多いように思います。だからこそ、第三者の立場ではありますが、本作のような事実に基づいた作品が重要かなと。より多くの人に読まれることで、家族の問題解決の糸口になるかもしれません。

少なくとも本作を読んだ人は、同じような状況になったときに家族の中だけで解決しようとは思わないのではないかなと思います。

家族でも正しい情報は共有されない

自分の家庭は、本作に出てくるような父親ほどひどくなかったですが、父親に問題がありました。ずっと父親が悪いと思っていたのですが、大人になってから父親がおかしくなってしまった原因を母親から聞いて、父親が悪くはなかったことを知りました。もし、自分が子どもの頃に母親がその自分に話をしてくれていたら、家族のカタチは変わっていただろうなと思っています。

何が言いたかったかと言うと、家族の中でさえ、正しい情報が共有にされていないということ。本当はもっと多くの人が情報をオープンにするべきだとは思っています。

他の家族への関わり方は難しい

自分が昔勤めていた会社の社長は、激昂すると手がつけられなくなる人でした。まあ、怒るだけならまだ良いのですが、たまに暴力を振るうこともあり、結構酷い環境でもありました。

で、たまに家族が言うことを聞かなかったからという理由でぶん殴ったことを自慢気に話すんですよね。

そういう時、どうすれば良いのかは未だに自分もわかりません。

単純に誇張して言っているだけかもしれませんし、ご家族の方にも挨拶程度で1回しか会ったことが無いので。

浮気もしていて、その浮気相手にも暴力を振るったことがあるので、そう考えるとほぼ家族にも暴力を振るっているだろうなとは思うのですが。

たちが悪のは、この社長、外面はめちゃくちゃ良く、他の会社からも評価がとても高いです。普段言ってることは至極真っ当なので。ただ、激昂すると支離滅裂で善悪の区別もつかなくなってしまいます。

こういうダークサイドってまだまだ世の中にはいっぱいあるだろうなあと。


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