藤原和博の必ず食える1%の人になる方法 – 100人に1人x100人に1人のかけ合わせで希少人材になれ

投稿者: | 2024年11月11日

評価・レビュー

☆4/5

元リクルートの方で、中学校の校長などを経て、現在も講演などを精力的に続けている藤原和博氏が考える、食べるために必要なキャリアの積み方の本。

若い頃、藤原和博氏の本に出てきたリクルートの社訓「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」に感化され、マスコミ系に行こうと決めたことがあって、結果として良かったのか悪かったのかはわかりませんが、個人的には一歩を踏み出す大切さを学びました。

そんなわけで、かなり久しぶりに手にとってみたという感じ。

で、本書のキモは希少性の高い人材になることです。

それは、

ひとつの分野でプロになったら、そのままその分野を極めていくより、別の分野にスライドして、複数の分野でプロになる──。
 それこそが、グローバル・スーパーエリート以外の一般ビジネスパーソンが生きる道だと私は思います。
 なぜなら、あるひとつの分野で「100人に1人」になったあと、さらに「1万人に1人」「100万人に1人」をめざすのは非常に厳しい道のりだからです。

に集約されます。

端的に言えば、スキルを組み合わせ希少性の高い人材になれば、代替が効かないので、その仕事で食べていけるという話です。

状況によって難しい場合もあるのでは?

個人的には納得しつつも、状況によっては難しい場合もあるだろうなというのが本音。

自分がマスコミ系に行こうと思った理由は、新聞やテレビなどで、あまりにも理系に関する知識レベルの低さを感じ、理系の大学に行った自分なら、それらを変えられる可能性があるのと、貴重な人材になれると思ったためです。

しかし、現実問題として、理系でマスコミ界隈に入るには、かなり敷居が高いのが現状。編集業界だと編集経験3年以上という縛りがあったりと、最初の段階で足切りがあります。

なので、結果として、自分は編集経験を積んでから、IT系のWebメディアで入ることになりました。

そこでは、それなりに実績を出せたのですが、それから20年以上経った今、新聞やテレビの状況を見ると、現在でも理系に関する知識レベルは低いままです。

結局、理系的な人材がマスコミに入るのは、かなり難しい状況は変わっていません。

つまり、希少性の高い人材だからといって、重宝されるということではないということ。

そのため、選ぶスキルがとても大切なのかなと個人的には思いました。

最初にどこに就職するかが重要ではないか

本書では、進むべき方向性として4つのタイプを挙げ、それぞれについて、おすすめのスキル的なものを紹介しています。

しかし、個人的にもっとも重要なのは、最初の軸となるスキル、または職業ではないかなと。

これはあくまで個人的な観測ですが、藤原和博氏は最初に最強の営業軍団を抱え、上り調子で大企業にまでなったリクルートという会社に就職を決めたことが、最大の成功要因だったのではないかという話です。

本書では1万時間やることで、その道のプロになれると書かれています。それが10年。そして、リクルートのような中規模の会社が良いとも言っています。

ところが、世の中には10年持ち、上場まで行けるような企業は、ほとんど存在しません。

もし、リクルートが倒産していたら、おそらく今の藤原和博氏のキャリアは築けないでしょう。

ただ、バイタリティがあり、勉強家でもあるので、きっと他の分野で成功はしていると思いますが(笑)

言いたかったのは、普通の人は、藤原和博氏のようなパワーが無いということです。

と、ちょっと否定的なことを書いてしまったのですが、伝えたい内容は納得できますし、藤原和博氏の体験談なども織り交ぜつつ書かれていて、すっと内容が入ってくる良い本だと思います。

以下は、本文を引用しつつ、個人的なメモ。

時間は平等か?

資源にはお金や人脈もありますが、それらの資源は最初からもっている人ともっていない人に差があります。なくなっても、また増やすことができる資源でもあります。
 しかし、時間だけは違います。万人に平等に与えられ、なくなったら二度と増やすことができない資源。
 その貴重な時間を主体的にマネジメントし、高い付加価値を生み出せる人でないと、これからの時代は生き残っていけません。

古来から、どんな人にも時間は平等に1日24時間与えられていると言われることがあります。

しかし、個人的には懐疑的というか、自分もそういう表現を使うことがありますが、それは事実ではないなあと。

具体的な例でわかりやすいのはIQでしょう。

IQが高い方が情報処理能力が高いのは、間違いありません。同じ問題を解くにしても、解く時間に大きな差があります。

つまり、同じ問題を解く場合、IQが高い人の方が早く解けるので、その分、他のことに時間を使うことができるとうこと。

そうなると、IQが高い人の方が、擬似的に時間を多く使えると言えるでしょう。

ちなみに、IQだけがすべてではありません。IQが高くなくても、他の能力で同じような現象が起きます。

例えば、筋肉。人間の遺伝子の中には、筋肉がつきやすい遺伝子情報があることがわかっています。

つまり、同じ運動をしても、筋肉のつき方が違うわけです。筋肉がつきやすい遺伝子を持っていれば、その分、トレーニング時間を短くでき、他のことに時間を使うことができるでしょう。

という感じで、1日24時間与えられているのは平等ですが、基本スペックによってその時間を効率的に使えるかどうかというのは変わるという話。

情報と情報を繋げる「情報編集力」

私は、情報と情報をつなげる力のことを「情報編集力」と呼んでいます。
この力がないと、豊かな教養を身につけることができません。
一方、情報をたんに処理する力のことを「情報処理力」と呼んでいます。

情報編集力という言葉を初めて知ったのですが、これは個人的にはとても共感できる点でした。

本書でも書かれていますが、情報処理能力という点では、コンピュータの方が圧倒的に早いです。

また、近年ではAI技術の向上により、人間が作業するよりも圧倒的に多くの出力を出すことができます。

ChatGPTなどが一番わかりやすいですね。2023年に大いに話題になったので、個人的にもいろいろと試してみたのですが、情報の正誤問題などがあるにしても、パパっと情報が出てくるのは非常に便利です。

Bard、ChatGPT、Bing AI比較ネタまとめ | ネルログ

最近は、アイデア出しとして、ChatGPTを使っています。

例えば、Suno AIでチョコミントアイスの歌作ってみたでは、歌詞の素案になるアイデアをChatGPTに出力してもらいました。

最終的に、ChatGPTの歌詞はほぼ使ってませんが、それでも歌詞を作るきっかけとしては良かったです。

Suno AIを使って曲を作っていて、前述のチョコミントアイスの歌は3時間程度で完成させています。

もしそのような作業を、人間が一から全部やるとすると、3時間じゃ無理だろうなと。

もちろん、それぞれプロのクオリティに比べれば、まだまだな点があるのは確かです。

しかし、作業部分まで全部自分でやるのは非効率でしょう。

なので、情報処理能力が高いだけでは、今後評価されにくくなるのは間違いありません。

その時に重要なのは何か?の答えとして、藤原和博氏が挙げているのが、「情報編集力」というわけ。

また、自分の話で恐縮ですが、かなり前にブレストの会に参加した時、エンジニアとしての知識量は高いけれど、まったくアイデアが出せない方に出会いました。

ブレストの会なのに、アイデアが1つだけで、それ以外のアイデアは存在しないと言い張っていて、ブレストってそういうことじゃないだけどなあと思ったり。

考えが凝り固まってしまうと、新しいモノが生み出せないだけでなく、新しいモノについていけなくなってしまいます。

歳を取るとみんなそうなっていきますし、自分もヒシヒシと自分自身のステレオタイプな点を感じることが多いので、襟を正さないとなと思うことがしばしばあります。

何が言いたいかというと、情報編集力とは情報をたくさん集めて組み合わせる能力ではなくて、ステレオタイプにならない能力なんじゃないかということです。

固定観念や慣習に縛られない能力と言っても良いかもしれません。

旧来の日本では、そういう人たちが煙たがられていましたが、変化の激しい時代では、そのような型破りな人材というのが、重用されていくのではないかと個人的には思っています。

まあ、まだまだ時間はかかりそうですが。

目線を上げる

あなたが新入社員であっても、社長目線で会社全体を見渡す。すでにトップに立ったつもりで、目の前の仕事にのぞんでみてください。

以前、サイバーエージェントさんとお仕事をした時に、先方の担当者が良く言っていた言葉で「目線を上げる」というのがありました。

この「目線を上げる」というのは、当時のサイバーエージェント内で良く言われていたというか、社員の中での共通認識としてあったようです。

というのも、サイバーエージェントでは、小さな社内ベンチャー的なものが結構あるんですよね。

で、それらのベンチャーの社長は、みんな若い。で、そのような制度があるのは、一般社員の目線ではなくて、社長の目線でビジネスを見てほしいということからのようです。

それが目線を上げるということ。

相手との共通点を見つけ会話を持たせる

営業のいちばんの基本は、相手と自分との間に、どれだけ共通点が見つけられるか。さらに、見つけた共通点の話題だけで、会話が30分もつかどうかです。

これはよく言われていたことかなと思います。昭和の時代だと、野球とかもそうですね。

ただ、個人的にインタビューの仕事をしていた時があって、その時感じたのは、相手に興味を持つということが大切かなと。

興味を持てれば、相手のことが知りたくなります。で、そこを掘っていくという感じ。

相手を好きなアイドルとか、芸能人とか思って話をするというのがわかりやすいかもしれません。

最近では多様化の時代もあるし、価値観も人それぞれです。なので、共通点を見つけるのって意外と難しかったりするかなあと。

プレゼンの極意は相手の頭の中に映写する

プレゼンの極意は、相手の頭の中にある要素を使って、それを組み合わせ、相手の頭の中に映写することです。

相手の頭の中に、「A」と「B」と「C」の要素しかなくて、自分がプレゼンしたいのは「X」の要素だとします。
 ここで、「X」をそのまま解説しても相手には伝わりません。それどころか、相手は拒絶してしまう。なぜなら、人間は自分が知らないものに対して恐怖を感じるものだからです。
 では、どうすればいいか。
 「X」を、相手の中にある「A」と「B」と「C」の関数で伝えるのです。

自分は、イベントなどで講演もしたことがあるのですが、プレゼンくっそ下手で、あまり上手くいったことがありません。

いろいろとプレゼンの本も読んだり、ネットで調べたりして、練習もしたのですが、伝わってない感が強かったんですよね。

その理由が、本書で氷解しました。そうか!と。

例えば話とかがわかりやすいかもしれません。相手がわかるモノで例えることで、理解しやすくなるということ。

相手のことを考えてプレゼンするのは当然として、わかりやすい言葉にするというのはやっていました。

以前、上司から言われたのは、子どもに話すように説明しろというものです。

これはこれで大事ではあるのですが、相手のことをちゃんと見てないとも言えるなと。

相手のことを考えるというのは、相手の頭の中を考えるということで、相手の頭の中にイメージを植え付けるというか、相手が頭の中でイメージしやすくすることなのかもしれません。

今後の人生でプレゼンをすることは無さそうですが、何を説明したり、伝えたいとき、理解して欲しいときは、相手の頭の中に映写することを意識しようと思います。

と、他にも面白い話がいろいろとあるので、興味のある方はぜひ読んでみてください。

4つの目指す分野があるので、自分が目指したいところだけを先に読むというのもアリです。

余談

余談ですが、本の表紙に「西野亮廣さん劇賞 バチクソに面白いから絶対に読んだほうがいい!」と書かれていたのですが、個人的な印象としては、西野亮廣さんって本書ちゃんと読んでるのかな?とは思いました。

個人的に、西野亮廣さんの夢と金を読んだのですが、希少性という点では、本書とかぶる点があるものの、認知度の重要性については本書で語られていませんし、また最初に勝てという点にも振れていません。

単純に希少価値が高い人が、今後は生き残れるという点のみで推しということなのかもしれませんが、それだと西野亮廣さんの考える処世術というか、生き残り戦略と違うんじゃないかなと。

なので、サラッとしか読んでないのかもと思ったわけです。

個人的に西野亮廣さんについては、多少ネガティブな印象がありましたが、夢と金を読んで、イメージが180度変わり、どちらかというと王道系のしっかりした戦略を立てる方という印象に変わりました。

先入観というのは怖いなと思いつつ、読んで良かったと思ったので、西野亮廣さんに対してマイナスなイメージがあれば、ぜひ本を読んで欲しいかなと思います。

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