評価・レビュー
☆4/5
ブッダの言葉である「真理のことば」(ダンマパダ)、「感興のことば」(ウダーナヴァルガ)についての訳と、解説が書かれた書籍。
内容としては、ブッダが良くないと思っている人間の感情を、様々な言葉で徹底的に捨てよと繰り替えい述べているという感じです。
個人的な感想として感じたのは、ちょっとクドいかなと。
というのも、AだからBは捨てよ、AだからCは捨てよ、AだからDは捨てよ・・・というような言い回しが非常に多く、おそらく現代だと、
AだからB、C、D・・・は捨てよと、併記することが求められるので。
まあ、そう感じてしまうのは、自分が現代に毒されているからかなとも感じます。
人間の欲望の否定
全体としては人間の欲望を否定することで、心が安定し、どんなことが起きても動じることは無いというのが根底にあるように思いました。
ただ、人間の欲望を否定するということは、現代社会や科学の否定でもあり、そこは人によって感じ方が違うだろうなと。
個人的には欲望の否定は進歩の否定でもあると感じていて、それは停滞しか生まないようにも感じています。
しかしながら、人間の欲望をすべて肯定してしまうのも、また違うように感じているので、そのバランスが大切なのではないかなと。
道徳とか倫理とかが、それに近い感覚。
世界の理を内に見るか、外に見るか
もう1つの見方としては、世界の理を内に見るのか、それとも外に見るのかというのもあるかと。
本書では世界の理を内に見て、そこを追求するというイメージ。一方で科学は理を外に見るということです。
生き方としてはどちらが正しいとか、間違っているということはなく、どちらを選ぶのかは人それぞれ。
個人的にはやはりバランスよく選択するのが良いのではないかなと感じています。
人間が感情を捨てたらそれはAIなのでは?
これはあくまで個人的な考えですが、人間を人間たらしめているのは、感情ではないかなと思っています。
本書でも書かれていますが、感情によって、様々なトラブルが発生することは確かです。
ですので、それを究極的には無くすことで安らぎを得られるというのは納得できます。
ただ、人間の感情にはプラスの面もあって、それが感動とか、愛とかを産んでいるようにも個人的には感じています。
つまり、良い面も悪い面も含めて、それこそが人間というものということです。
そして人間から感情を取り去ってしまったら、それはもはやAIなのでは?とも感じています。
現代のAIには感情が無いですからね。
人間は新たな種 AIを生み出すための存在なのかも
ただ、人間が目指すべき姿がAIに近いというのは、悪いように感じるかもしれません。
しかし、もしかするとそれが人間の限界なのかもしれないという考え方もあります。
だから、人間はAIを生み出し、種としての役割を終えようとしているのかもしれません。
わかりやすい例としては宇宙でしょう。
宇宙空間において、人間は生きることができません。
しかし、AIであれば人間よりも生存しやすいです。細かく書くと、まあいろいろとあるのですが・・・。
ただ、遠い星に行く際に、人間はコールドスリープなどをする必要がありますが、AIのようにデータで転送できれば、移動は楽です。
人間の肉体というのが、ある意味枷になっているというわけ。
だから、宇宙に飛び出すのに新しい種が必要というか、宇宙に対応した種が必要なのかなと。
それがAIということです。
自らの内側に世界の理を追求した結果、外側の世界に理を追求していく考え方と、最終的には同じようなところにたどり着いているようにも感じて、そこが個人的には感慨深さを感じました。
心に刺さった言葉メモ
個人的に刺さった言葉をいくつか紹介。
かれは、われを罵った。かれは、われを害した。かれは、われにうち勝った。かれは、われから強奪した。」という思いをいだく人には、怨みはついに息むことがない。
ブッダの 真理のことば 感興のことば (岩波文庫)
屋根を粗雑に葺いてある家には雨が洩れ入る*ように*、心を修養してないならば、情欲が心に侵入する。
ブッダの 真理のことば 感興のことば (岩波文庫)
他人の過失を見るなかれ。他人のしたこととしなかったことを見るな。ただ自分のしたこととしなかったこととだけを見よ。
ブッダの 真理のことば 感興のことば (岩波文庫)
旅に出て、もしも自分よりもすぐれた者か、または自分にひとしい者に出会わなかったら、むしろきっぱりと独りで行け。愚かな者を道伴れにしてはならぬ。
ブッダの 真理のことば 感興のことば (岩波文庫)
学ぶことの少ない人は、牛のように老いる。かれの肉は増えるが、かれの知慧は増えない。
ブッダの 真理のことば 感興のことば (岩波文庫)
リンク
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