
評価・レビュー
☆4/5
日本の文学作品やエッセイに登場する食欲をそそる描写を、食いしん坊の著者が独自の視点で紹介するコミックエッセイです。
森鴎外の娘 森茉莉、内田百閒、村上春樹、森見登美彦など、錚々たるメンバーの食に対するこだわりというか、思いが伝わってきて、とても楽しめました。
個人的に、食に関するものだと、やはり澁澤龍彦先生のチョロギが印象に残っています。
チョロギってのは、おせちとかに入っている、赤いネジネジしたやつ。
ポリポリという食感と、酸味が美味しいですよね。
文学というとちょっと大仰かもしれませんが、食という視点を加えることで本の新たな魅力を感じることができる一冊だと思いました。
また、表紙の裏の最初の言葉が良かったです。
文章上の味覚体験は、時に本物の味覚体験を沈黙させてしまうほどの力を持つのです––
確かにそうかもなあと。
単純に美味しいというだけではなくて、食べている人の背景や思いが文章で表現されているからなのかもしれません。
あと、石井好子さんのエピソードが個人的には好きです。