評価・レビュー
☆5/5
就職活動で悩んでいた主人公が、いつも通っている書斎カフェ「書楽」で、手紙を10通やり取りすることで人生が変わる「手紙屋」というポスターを見つけ、半信半疑ながらも手紙を送ったことで人生が大きく変わっていくという話。
話は主人公の就職活動の悩み的なところから始まり、メインは主人公と手紙屋の手紙のやり取りです。そのため、一方的に話す部分が多いのが特徴。これは、うまい発明だなあと思いました。
内容としては、就職活動に関係なく、示唆に富んでいて、小説というよりは自己啓発本に近いです。
喜多川泰先生の小説は、全体的にそういう感じみたい。
個人的には運転者 未来を変える過去からの使者を読んでいて非常に面白かったので、本作も読んでみたら手紙屋もとても良かったです。
道に迷っている若者だけではなく、自分自身の今後の生き方に悩んでいたり、不透明な未来に不安を感じている方におすすめ。
以下は本書から引用しながら、個人的に思ったことなどのメモ。
お金以外の価値を交換する
もしあなたが、欲しいものを手に入れる方法として〝買う〟という方法以外思いつかない人ならば、あなたが持っているものの中で相手が欲しがるものが〝お金〟だけであるということを無意識のうちに認める生き方をしているということなのです。
喜多川泰. 手紙屋~僕の就職活動を変えた十通の手紙~
世の中は物々交換で成り立っているという話の中に出てくる言葉です。
基本的に人間は自分が欲しいものと相手が欲しいものを交換して生きています。相手が欲しいものがお金だった場合に、それが商品を購入するというビジネスというわけ。
で、多くの人は上記で言う「買う」しか思いつかないので、お金でしか物が交換できないと考えているという話です。
個人的にはとても示唆に富んでいる言葉かなあと。
一番わかりやすいのは、家族の例かなって。
家族っていろいろや物をやりとりしたり、無条件で助けてくれたりします。
それを全部お金でやり取りしてしまったら・・・まあ、押して知るべしですよね。
お金は大切だけど、それ以外にも様々な価値があって、その価値はみんなそれぞれが持っているということ。
そしてそれに気づくことがとても大切なのかなと。
本書から引用すれば、
あなたには、もっともっと他の人が欲しがる魅力がたくさんあるのです。それをたくさん見つけて、磨いて、出し惜しみしないでどんどん周囲の人に提供してみてください。きっと思ってもみない、さまざまなものが手に入るはずです。
喜多川泰. 手紙屋~僕の就職活動を変えた十通の手紙~
という感じです。
働くことも物々交換
〝働く〟という行為もまた物々交換です。先の言葉を使えば、 『会社が持っているものの中で自分が欲しい〝お金〟や〝安定〟と、自分が持っているものの中で相手が欲しがる〝労働力〟や〝時間〟を、お互いがちょうどいいと思う量で交換している』
喜多川泰. 手紙屋~僕の就職活動を変えた十通の手紙~
これは自分が働き始めて、結構経ってから、とある社長に同じようなことを言われました。
この視点は結構重要で、なんか知らんけど会社に行ったらお金が貰えるから会社に行っていた自分の考え方が、大きく変わりましたし、新たな視点が生まれたのを記憶しています。
結局、会社が欲しがっているものを自分が提供できれば、昇進や昇給ができるということです。
昇進や昇給を目指すのであれば、会社が求めていることを追求していくのが良いでしょう。
ただ、個人的にですが、会社が本当に求めているものがわかっていないケースもあるかなと。
正確には人事部や上司ですね。
どういうことかというと、会社というのは突き詰めていくと人間と人間のコミュニケーションが円滑化どうかが重要という話。
人間同士のコミュニケーションがうまくいっていないと、様々なところに歪みが生じてしまいます。
自分がいた職場では、例えば離職率が異常に高いというのが歪みの例です。
で、そういう人と人のコミュニケーションを円滑にするための潤滑油になるような人がいると、仕事って結構回りやすいんですし、社内の空気が明るくなったりするというのがあります。
しかし、そのような潤滑油の人って、評価されにくいんですよね。
その人がいることでコミュニケーションが円滑になって、いろいろなことがスムーズに進んだとしても、それを評価することができないため。
個人的には他にもそういう仕事というか、仕事を効率的に進めるための役割って結構あると思っていて、そういう人がもっと評価されるというか、そういう人を評価できるシステムが必要なのかなと感じています。
職業としては、ファシリテーターとかが1つの例かなと。
称号を与える
あなたが相手の持っている性格の中で欲しいものを引き出してあげる存在になることなのです。 そして、相手の性格を引き出してあげる方法が、称号を与えるということなのです。
喜多川泰. 手紙屋~僕の就職活動を変えた十通の手紙~
個人的にプロレスラーや格闘家の異名がとても好きです。ザ・レスラーとか、レインメーカーとか、百年に一人の逸材とか。
で、こういう異名って、キャッチーで人を惹きつける、興味を持って貰える、その人がどんな人なのかなわかりやすくなるという効果がありますが、それは異名を持つ本人たちにも影響があるように感じています。
つまり、異名を付けたことで、そういう人物になっていくという話。
本書での称号も、異名に近いものがあるかなと個人的には思いました。
つまり、本書では相手に称号を与えるとしていますが、自分自身に称号を与えることでも、効果を得られるように感じます。
例えば自分自身に「世界一諦めの悪い男」とか称号をつけて、言い続けていれば、本当に諦めの悪い男になるという話。
『収入内の生活をすること』の大切さ
すべの法人は、生存するためにこの二つのことを達成しなければならないことになります。
喜多川泰. 手紙屋~僕の就職活動を変えた十通の手紙~
つまり、
『多くの人から長期間にわたって必要とされ続けること』
そして、もう一つは
『収入内の生活をすること』
最低限、これらのことができなければ、法人としての人生は終わってしまうのです。
本書では法人についていろいろと書かれていて、その中で法人が長く存続するための条件として、上記の2つを挙げています。
で、個人的に気になったというか、『収入内の生活をすること』というのは法人に限った話ではないなあと。
当然、個人の家計という意味でもそうですが、やはり国でしょう。
今の国政においては、国債が当たり前のようになっています。よく国民一人あたりの借金が〜と取り上げられたりしますよね。
ただ、日本には多数の資産がありますし、出資などもしているので、他にも借金しても問題ない理由はいくつかあるので、単純に借金するから悪いというわけではありません。
しかし、借金前提の予算編成は流石にいかがなものかと思ってしまいます。
その上、今の日本では増税増税と、かなり税金が高い国になりつつある状態です。
xxするのにお金が無いから増税というわけ。
通常の法人では、お金が無いから収入をすぐに増やすことはできません。
新商品を開発したり、広告を出したり、新しい市場を開拓したりして、売上を伸ばす努力をする必要があります。
ところが、国の場合は、増税すれば収入がサクッと増えるわけです。
正直言うと、これがかなり問題かなと。
国民を無限にお金を引き出せるATMと勘違いしている節があります。
まずは、『収入内の生活をすること』が重要なんじゃないでしょうか。
予算についても国債はある程度盛り込むとしても、現状の税収内で、まずはやりくりするべきではないのかなと個人的には思います。
じゃないと、このまま増税増税で、どんどん国民は疲弊していきます。
というか、過去の歴史を見ても、どう考えたって重税を課した国が栄えたためしはありません。
まあ、増税の意図は単純に税収を増やしたいだけではないのですが、それにしても少しやりすぎている感はあります。
最優先ですべきことは、支出についてすべて洗い出して、一度精査することなんじゃないかなと。
また、増税増税によって、『多くの人から長期間にわたって必要とされ続けること』というのも失われつつあるようにも感じました。
どちらの項目も満たせない法人は、終わってしまう可能性が非常に高いのですから、日本も終焉に向かいつつあると言っても良いのかなと。
理想的には若い政治家たちによって、改革が進めばよいのですが、今の政治システムだとどうやっても若い政治家が国政に参加するのが難しくなっています。
結局、そこに行き着いてしまうんですよね。
正直言えば、結構暗い未来しかない状況なんですが、当面をそれを打破することはできず、解決する方法も無いので、なんとも言えない停滞感しかないのが今の日本かなと。
正確に言えば、ここ30年ぐらい、バブルが弾けてからの日本はそんな状態のまま、ズルズルと来てしまった印象があります。
他にも多数の良い言葉があって、本著は非常にためになるというか、新しい視点を与えてくれる良書だと思いました。
リンク
- 手紙屋~僕の就職活動を変えた十通の手紙~(Amaozn Kindle)
- おすすめ書籍レビューまとめ | ネルログ