しんがり ~山一證券 最後の聖戦~ ドラマレビュー おじさん向けかな

投稿者: | 2022年3月19日

評価

☆5/5

実話を元にした非常に素晴らしいドラマでした。テーマがテーマだけに絶対一般受けはしないだろうなと思いますし、山一證券なんて若い世代は知らないだろうし、自分も当時は理系の大学生だったので、そこまで山一證券が自主廃業のインパクトについてはそこまでの実感はありませんでした。

社会人になって仕事や会社のことを知ってから、改めて山一證券の自主廃業が衝撃的事件であったことに気付かされます。

そういう意味で本作はどちらかというとおじさん向けの作品なのかなと。それにしてもWOWOW 連続ドラマWは質が高く、視聴率先行の民放ではやりにくいテーマの傑作ドラマが多いですね。

本作は実際の山一證券の自主廃業の発表後、本支店閉鎖処理や清算業務、社内調査を行ったメンバーを描いたノンフィクション小説 しんがり 山一證券 最後の12人が元になっています。

話としては

社内の不正取引などを調査する業務監理本部(業監)の本部長となった梶井達彦(江口洋介)は、業監査が左遷部署であることをわかっていたが気持ちを新たに業監の責務を果たそうとしていた。しかし就任早々、大蔵省証券取引等監視委員会(通称SESC)の調査が入る。業界では総会屋との利益供与問題が相次いでおり山一證券にも例外ではなかったのである。経営陣は総会屋との関係を否定したが、梶井はそれを明確にする、または実際に関係があった場合には会社として率先して発表し自浄作用をアピールする必要があると考え、本格的な調査を開始する。だが、なかなか社内の協力を得られないまま事態はどんどん悪化していくのであった・・・。

という感じ。

本作を見ると山一證券の崩壊理由について理解でき、いきなり自主廃業しなければならなかったのもよくわかります。

この手の社会派ドラマが好きなら激おすすめです。

大企業神話の崩壊

大企業神話とは大企業は潰れることは無いので、入社できれば安定した生活ができるというものです。

山一證券は当時4大証券の一角であり誰しもが知っている大企業。しかし、それが自主廃業という衝撃的な幕切れで消えてしまいました。当時の衝撃はとても大きく大企業神話が崩れたと言えるでしょう。

証券会社というと一般の人からすると縁遠い感じもありますが、近年では東芝の粉飾決算、シャープの経営悪化による買収などもありましたね。直近ではパナソニックの経営危機が騒がれています。誰しもが知っている会社でも不正が行われていたり、経営状態が厳しい企業もあるということです。

時代は変わっていると言えるでしょう。

個人的に経験した倒産処理

個人的にとある会社の倒産をお手伝いしたことがあります。自分はその中で顧客への清算対応をメインにしていました。ニュースでも取り上げられ、会社の入り口の写真が掲載され、夜逃げか?的なことを書かれました。

前金でもらっていた資金が残っていたこともあり、顧客への返金出来ていたので顧客との大きなトラブルは無かったのですが、それでもお金が戻ってくればOKというサービスではなかったので、顧客対応は結構タフな仕事だったなあと改めて思います。

そんなこともあり、本作の話は結構身に沁みて感じる点も多かったです。特に話が進んでくると次から次と不正や適当な処理などが明らかになってきます。自分が関わった会社でも規模こそ小さいですが同じように後から後から「なんじゃこりゃ?」みたいな話がでてきました。

個人的に何社かワンマン経営の会社に関わったことがありますが、関わった会社ではどこも経営者が不正をやってました。明確な不正ではなくても経営者優遇措置が酷かったり、制度はあるけど社員には告知されてずそれを享受しているのは経営陣だけみたいなこともありました。まあ人間なので誰しもそういう欲はあるかなと思いますが、それによって搾取される社員はいつも損をしているなと感じます。

騙される方が悪いという考え方もありますが、個人的にはできればそういう社会にはなってほしくないかなと思っています。

システム開発者の重要性

自分が倒産処理で関わった会社が崩壊した原因は提供していたサービスのシステム開発者が抜けてしまったためです。サービスのシステムアップデートが難しくなったため、サービスを継続的に提供できなくなりました。元々は営業担当者とシステム開発者の2人がメインに立ち上げた会社で、その2人が不仲になりシステム開発が抜けるという事態に陥りました。これも結構あるあるですね。

またその会社では人員をいろいろと追加していましたがシステム開発者は雇っておらず、営業担当ばかりの会社でした。つまり、システム開発を1人に依存していたわけです。

ソースや処理を見てみましたがソースにコメントもほとんど無く、処理もかなり複雑で処理を追うだけでも大変。結局、ブラックボックスと化したシステムは誰も触ることができずお手上げ状態でした。経営陣がシステム開発についてわかっていなかったのがアリアリとわかります。

これは小さな会社の例ではありますが、最近ではみずほ銀行のシステムでも同じようなことが起きていますね。システム開発への軽視が企業の経営危機に繋がっているわけです。炎上案件にも少しだけ関わったことがあるので、みずほ銀行のシステム開発現場は地獄だろうなと・・・。

個人的にみずほ銀行の例は氷山の一角だと思っていて、恐怖 一部上場企業のログイン画面がhttp・・・で書きましたが一部上場企業でも、パスワードを平文で送るようなサイトを運営したりしています。。。

氏名、住所、電話番号など個人情報がバッチリ入っているので、個人的にはマズいと思っていますが、まあ売り上げに直結するわけではないので経営者からしたら何が問題なのかもわからないのかもしれませんね。

このあたりもワンマン経営だと気づきにくいのかなと思ったりしました。また、上に対して指摘しても会社の中で干されるだけというのもあるかもしれませんね。自分も干されたことがあるので・・・。

そんなこんなでいろいろなことを思い出したり、感じたりしたドラマでした。


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