評価
☆4/5
けんすう氏が言い始めた「プロセスエコノミー」というトレンドが注目されている理由やその背景について書かれた本です。
そもそもプロセスを公開することで、それがビジネスになるというのは昔から言われていることです。しかしながら、Youtubeなどの配信が誰でもやりやすくなってきた時代背景から、誰でもビジネスができるチャンスが来たという話。
本書ではあくまでプロセスエコノミーをざっとなめた感じで、特にそこに論理的な体系があるわけではないため、考察や分析などはありません。その点で☆-1としました。
全体的に事例や他の人の言説を紹介するのがメインで本書独自の明確な視点や結論が無いので、掴みどころのない内容ではありますが、個人的にはいろいろと新しいことを考えるきっかけにはなったので読んで良かったなと思っています。
有名だから売れたのか? プロセスを公開したから売れたのか?
プロセスエコノミーの例として有名な方たちの事例がいくつか紹介されているのですが、そもそも有名だからプロセスをみんな見たいと思うのか、プロセスを見せたから有名になったのか、と考えると前者なのではないかなと。
例えば、堀江貴文さんの本と同じ内容について、無名の人が書いたら売れるでしょうか?
答えは明白ですよね。加えてアウトプットに価値が無くなると言いながら、本はアウトプットなので事例としても適切ではないように思いました。
また、これからはローカルのコミュニティを作るのが重要だと言いながら、ハイネケンのCMやNIKEの話などの事例を取り上げており、そもそも資本がローカルレベルではありません。ここでも有名な企業で資本があったから売れたのか、プロセスを見せたから売れたのかを問われると、前者としか言いようがありません。
結論としては重要なのはWhyであり、心が大切という話だと思いますが、心だけでうまくいくことが無いこともわかっています。昔の精神論に戻れ!というわけではないと思うのですが、そのあたりの説明もほとんどありませんでした。
個人的な理解ではプロセスエコノミーは個人でもビジネスを生み出すことができる方法の1つだと考えています。しかし本書では有名であったり、資本が無ければプロセスエコノミーを実践しても成功しないと言っているようにも思えます。もしそうであるならば、明確にその点を言及してほしかったです。
逆にそうでないならば、なぜ有名な人や資本がある企業などの事例がメインなのか謎ではあります。
例えば、レンタルなんもしない人、プロ奢ラレヤーはプロセスエコノミーの概念にとても近く、個人で新しいビジネスを成功させた典型例なのではと個人的には考えています。彼らは新しいビジネスを生み出し、SNSを使い徐々にファンを増やし、セカンドクリエイターも知らずに増え、メディア化し、それをパクろうとした人たちも多く登場しました。
そういう事例が紹介されていない以上、有名だから売れたのか? プロセスを公開したから売れたのか?と言われると本書の結論では有名だから売れたということになってしまうのかなと。そこがとても残念でした。
私的メモ
幸せの5つの軸:心理学者 マーティン・セリグマンが提唱。達成、快楽、良好な人間関係、意味合い、没頭
乾いている世代:幸せの5つの軸のうち達成、快楽を重視
乾けない世代:良好な人間関係、意味合い、没頭を重視。つまり若い世代は価値観が違うということ。
グローバル・ハイクオリティとローカル・ロークオリティ:グローバル化により資本の桁が上がったことでグローバル展開するサービスや製品の質が上がり、ローカルはクオリティでは勝てず、コミュニティを重視するものが残るという話。
マーケティング4.0:フィリップ・コトラー提唱。経験価値志向のマーケティング → 共創価値訴求。製品やサービスを享受するだけでなく、その創造に関わりたいと思うユーザーを巻き込むということ。
あらゆるものは6Dになる(イノベーターの虎の穴):6Dとはデジタル化(Digitized)、潜在的(Deceptive)、破壊的(Disruptive)、非収益化(Demonetized)、非物質化(Dematerialized)、民主化(Democratized)
2種類の感謝:アルメンタ博士らが提唱。恩恵的感謝、普遍的感謝。
effectuation:経営理論。effectuationは何かを引き起こす、目的や希望を達成するという名詞。自分の中にある価値感からはじめ、失敗し、組み合わせ、偶然もあって目的が達せられるということ。
アウトサイド・イン:勝利への逆算を考える思考様式
インサイド・アウト:内なる衝動を起点をする思考様式
日本語の共感には2つの意味:シンパシーとコンパッション
顧客とプロセスを共有する方法:アトラクションのように一緒に楽しむジャングルクルーズ型と、それぞれが役割をこなすバーベキュー型
口コミ「鉄の三角」:シャオミの基本戦略。製品、コミュニティ、情報コンテンツ
イノベーションとは普段つながらない遠くとつながる新結合である:経済学者 シュンペーターの言葉