
評価・レビュー
☆5/5
人類とは、ホモ・サピエンスのことです。当たり前のように思えるかもしれませんが、実際にはネアンデルタール人など、他にも人類とDNAが近い種はたくさんいました。しかし、現在、残っているのはホモ・サピエンスのみ。他の種は絶滅したのです。
今となっては、どうして他の種が絶滅したのかわかりません。
そんなホモ・サピエンスの歴史について、猿から進化した時代から農耕が広がった時代までを滔々と語ったのが本書。
上ということで、下もありますが、今回は上のみ。
内容は非常に面白く、考古学的な見地と、推測から当時の状況を予測し、どんなことがあったのかを紹介しています。
あまりむずかしい言葉はなく、わかりやすく説明されているので、読みやすいのも本書の特徴かなと。
個人的に、ホモ・サピエンスが生き残った理由は、脳の機能にあるのかなと推測はしていますが、証明のしようがないですよね。
つまり、この時代は、あくまでファンタジー的な感じで面白おかしく想像を広げることができるかなとも思ったりしました。
以下は、本書を引用しつつ、個人的なメモ。
噂話は社会を守る機能
噂話はたいてい、悪行を話題とする。噂好きな人というのは、元祖第四階級、すなわち、ずるをする人やたかり屋について社会に知らせ、それによって社会をそうした輩から守るジャーナリストなのだ。
噂好きというと、なんかあまり良いイメージが無いですが、本書で書かれているように、悪行の話題を広げることで、社会を守っているという観点で考えると、そうだなあと納得してしまいました。
今の時代、悪いことをしたら、SNSで一気に拡散されていきます。
それが悪行を防ぐことに繋がるのであれば良い気もしますね。
小麦が私たちを家畜化した
私たちが小麦を栽培化したのではなく、小麦が私たちを家畜化したのだ。栽培化や家畜化を表す「domesticate」という英語は、ラテン語で「家」を意味する「domus」という単語に由来する。では、家に住んでいるのは誰か?小麦ではない。サピエンスにほかならないではないか。
これも非常に面白い視点だなと思いました。
小麦だけじゃなくて、品種改良された植物もそうですし、菌などもそうかなと。
人間に有用なように作り変えたように思えて、DNAの目的、つまり種の反映という意味では、人間がりようされているだけかもしれないということ。
例えば、耐性菌。
弱点がなくなれば、それだけ種として生き残りやすくなるため、人類が菌を育ててあげているとも言えなくもないですよね。
隕石などが落ちてきて、地球が人の住めない星になったとしても、植物や菌は残りそうな気がしますし。
そう考えると、人類が生物の頂点にいるという考えは、おごりであり、いっときのことなのかもしれません。
ホモ・サピエンスには自然権などない
ホモ・サピエンスには自然権などないし、それはクモにも、ハイエナにも、チンパンジーにも自然権がないのとまったく同じだ。だが、私たちの召使いには教えないでほしい。さもないと、私たちは彼らに殺されかねないから。
我々人類に権利があるというのは、我々人類がそう定めた、意味づけただけにすぎないという話。
昔は奴隷制度などがありましたが、それも結局、人間が意味づけしたに過ぎず、そのことを召使いに教えてしまえば、身分制度が崩壊するということ。
これはあらゆる物事に言えることかなと。
ここでは自然権という言葉を使っていますが、あらゆる制度がそもそも人間が勝手に作ったものなので。
だから、すべてを無しにした方が良いという話ではなくて、我々自身がちゃんとコントロールしないと、それはいつでも暴走するし、悪いことに使われてしまうということです。
例えば、政治家の裏金問題とかもそうですよね。
法律上は問題無いという、そもそもの法律を政治家が作っていて、抜け道を用意しているため。
多くの人が、それは違うんじゃないか?と指摘しているのだから、自分たちでちゃんとコントロールしてほしいのですが、ずっといたちごっこが続いています。
で、政治家が問題というのは簡単なのですが、人間というのは、そもそもそういう生き物であるという前提は忘れてはいけないかなと。
自分自身の利益のために、人間はサクッと悪いことをしますし、感情によってとんでもないことをしでかすものです。
あくまで、自分自身のことでもあると考え、襟を正すことが大切なのかなと。