評価・レビュー
☆5/5
ヴィトゲンシュタインによる「論理哲学論考」は、20世紀に新たな哲学の世界を生み出したものの、かなり難解で、捉え方も人それぞれのようです。
特徴的なのは、文章ではあるものの箇条書きに近い感じで、それぞれ番号が振られ、まとめられている点。
本書では最初に、わかりやすい解説が結構あって、それがかなり理解の助けにもなります。
まあ、自分は理解できているかと言われると微妙ですが、少なくとも面食らうことはなく読み進められました。
若干解説が長くて、いつになったら本文が始まるんだ?と思ったのですが、解説無かったら、かなりチンプンカンプンだったと思うので、解説を読んでから論理哲学論考の本編に入るのが良いです。
初めて論理哲学論考に触れるのであれば、良書だと思います。
ただ、人によって解釈が様々あるようなので、他の本も読んだ方が良いようです。
自分も時間を見つけて、他の人の訳も読んでみたいなとは思いました。
語ることができないことについては、沈黙するしかない。
個人的にやはり最後の言葉
語ることができないことについては、沈黙するしかない。
ヴィトゲンシュタイン. 論理哲学論考 (光文社古典新訳文庫) .
がとても印象に残りました。
冒頭でも出てくるのですが、すべてを読み、それが前フリとなっていて、最後にこの言葉を読むと、かなり感慨深いです。
また、内容についてはまったく理解はできてないと思いますが、少なくともこの言葉が一つの真理を表しているように感じています。
この文書の訳については、岩波版との違いについても解説があって、それも本書が良かった点です。
トートロジーという概念の確立
本書の解説で、
「真理関数の理論」を通じて「トートロジー」という概念を確立したことこそ、「論理学の革命」へのヴィトゲンシュタインの最大の貢献でした。
ヴィトゲンシュタイン. 論理哲学論考 (光文社古典新訳文庫) .
とあり、本書の素晴らしさがよくわかります。
個人的に昔、トートロジーに少し興味を持ってかじった程度でしたが、かなりうろ覚えな感じで、読み進めながら、ああそう言えばこんな感じだったかもって思い出した点も少しあったりしましたが、多くは全然覚えてなかったので、新鮮な感じで読めました。
トートロジーについては、新ためて違う本も読みたいなと感じているところです。
そういう意味で本書に触れるで、理解はできなかったとしても新しい世界の扉が開けるのも良い点だと思います。
心に刺さった言葉メモ
個人的に刺さった言葉をいくつか紹介。
日常言語では、じつにひんぱんに起きていることがある。まったく同じ単語が、異なったやり方であらわしている――つまり異なったシンボルに属している――かと思えば、2つの単語が、異なったやり方であらわしているのに、見かけのうえでは同じやり方で、文章に用いられているのだ。
ヴィトゲンシュタイン. 論理哲学論考 (光文社古典新訳文庫) .
定義というのは、ある言語から別の言語への翻訳のルールである。
ヴィトゲンシュタイン. 論理哲学論考 (光文社古典新訳文庫) .
日常言語は、人間という有機体の一部であり、人間という有機体に負けないくらい複雑である。
ヴィトゲンシュタイン. 論理哲学論考 (光文社古典新訳文庫) .
哲学者たちの問いや命題のほとんどは、私たちが私たちの言語の論理を理解していないことにもとづいている。
ヴィトゲンシュタイン. 論理哲学論考 (光文社古典新訳文庫) .
すべての哲学は「言語批判」である。(ただしマウトナーの言う意味でではないが)。ラッセルの功績は、命題の見かけの論理形式は命題の現実の論理形式である必要はない、ということをしめしたことである。
ヴィトゲンシュタイン. 論理哲学論考 (光文社古典新訳文庫) .
哲学の目的は、考えを論理的にクリアにすることである。 哲学は学説ではなく、活動である。 哲学の仕事の核心は、説明することである。 哲学の成果は、「哲学の命題」ではなく、命題がクリアになることである。 哲学がするべきことは、ふだん、いわば濁っていてぼやけている考えを、クリアにして、境界をはっきりさせることである。
ヴィトゲンシュタイン. 論理哲学論考 (光文社古典新訳文庫) .
未来の出来事を、私たちは現在の出来事から推測することはできない。 因果連鎖を信じることが、迷信というものなのだ。
ヴィトゲンシュタイン. 論理哲学論考 (光文社古典新訳文庫) .
リンク
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