パン屋のパンセ – どうしても消去できない悲しみの隠しファイルが一個あります

投稿者: | 2025年4月14日

評価・レビュー

☆4/5

東京天文台(現・国立天文台)に勤務していた杉崎恒夫氏が、退職後も書き続けていた詩を集めたもの。

日常の中のありきたりな物事を、違った視点で描かれていて、とても興味深かったです。

思わずニヤリとしてしまうものもあれば、晩年に詠まれたのでしょうか、死生観を感じさせるものまで、様々あります。

きっと共感できる詩があるかなと。

普段詩集とかめったに読まないのですが、改めて詩の面白さを感じました。

以下は、本書を引用しつつ、個人的なメモ。

ポストは指を噛んだりしない

不実なる手紙いれてもわが街のポストは指を噛んだりしない

ポストを動物に例えているのが面白いなと思いました。

たしかに、ポストの口って、ローマにある真実の口みたいだなと思うこともあって、ちょっとだけ強さがありますよね。

あと、昔の円筒のポストって人っぽくも見えたなあって。

怖い夢

一晩中怖い夢みていたぼくをアリバイとして信じませんか

楽しい夢ではなく、怖い夢というのが自分的にツボでした。

ちょうど悪夢を見た後ということもあって、それも影響しているのかもしれないなと。

朝のホームは魔術師

エスカレーターにせり上がりくる顔顔顔 朝のホームは魔術師である

これも面白い視点だなあと。

通勤しているときは、たぶん気づきにくいというか。

立ち止まって見ていると、ちょっと滑稽な感じはありますよね。

なんか自分はロボット生産工場のようなイメージを持っていて、そうではなく魔術師という感性が良いなあと思いました。

悲しみの隠しファイル

どうしても消去できない悲しみの隠しファイルが一個あります

個人的に本書で一番グッときた言葉。

隠しファイルというのが絶妙なチョイスだなあと。

自分の中にも、悲しみの隠しファイルがあって、それとリンクしたというのもあります。

というか、多くの人がそうだと思うんですよね。

楽しそうに、明るく笑顔に見えていても、実際には悲しみの隠しファイルがあるんだろうなあって。

そんなことを思いました。

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