
黒い柚子と青い鬼 シークヮーサーはまだ微かに甘いに続いては、十勝しあわせ工房たなごころを読んでみました。
紹介文
北海道十勝にある幸福町。洋裁店を営んでいた祖母フクに育てられた幸は、同じく服飾の道へ進むことを夢見ていた。十勝に移住した青年・幸士郎との出会いが、ふたりに新しい一歩をもたらす。
BCCKS / ブックス – 『十勝しあわせ工房たなごころ』(著)田丸 久深 (編)maki (表紙デザイン)豆ノ瀬でんぱ著
祖母への想い、トラウマを抱えるミシンへの挑戦、そして変わらず佇む幸福駅——。
小さな町で静かに紡がれる、はじまりの物語。
紹介文
話としては、移住した青年と幸を中心にした心温まるほっこり物語という感じ。
話の中にAIが出てくるのですが、AIの使い方が二重の意味で上手いなと思いました。
また、読み始めた時と、読み終わった後で、表紙の意味が変わって見えるのも良い点。
このあたりはネタバレすると面白くないので、気になる方は、ぜひ読んで欲しいです。
全体としてしっかりまとまっているのですが、個人的にはいくつか気になる点がありました。
本作、幸福がテーマになっています。
場所も実際にある幸福駅だったり、主人公が幸、移住した青年が幸士郎、祖母がフク(福)と、幸福に関連したものが多いです。
これも全体感のまとまりを出していて素晴らしいなと思ったのですが、主人公の名前は片仮名でも良かったのかなと。
ロシア文学ではないですが、似たような名前が多いと頭の中が混乱しがちなので。
住んでいた人が片仮名、移住してきた人が漢字と分けられていると、役割も明確になりますし、漢字と片仮名なら、識別しやすいかなと。
また、削ったのかなと思うシーンがいくつか感じられ、少し流れが飛んでいるように感じる点がありました。
このあたりは、文字数制限というレギュレーションの問題かなとも思います。
あと、主人公の名前は、結構序盤に出して欲しかったかも。
というのも、読んでいて、誰が誰で、どういう繋がりだっけ?って思って読み返したので。
おそらく、序盤に出すと混乱するので、避けたのだろうというのは伝わって来るのですが、前述したように片仮名にすれば、識別はできたのかなと思います。
語り手が誰か読者にわからせないようにする手法は、ミステリではトリックとしてよく使われますが、本作はそういう作品でも無いと思うので。
まあ、これはあくまで、個人的な考えなので、人によって捉え方は違うかなと。
他にも、文章の部分で、ひっかかりを感じたところがあり、やはりもう少し時間が欲しかっただろうなあとは思いました。
それでも、NovelJamの3日間で、ここまでの作品に仕上がっているのは素晴らしいの一言です。