
はなればなれの次に読んだのは Xで精力的に活動をしている谷 亜里砂さんのメリカの居場所探し。他の方の作品もさっそうと読んでいて、素晴らしいなと。
紹介文
人魚のメリカには友だちがたくさん。でもなんだかいつも息苦しい。キラキラと笑い合う仲間の後ろを、ただついていく日々。「私、なんでここにいるのかな」。ある日、メリカは鋭く尖ったムール貝の縁で自身の鱗を剥がし、尾を削ぎ、人となる。これは居場所を求める旅のお話。
BCCKS / ブックス – 『メリカの居場所探し』(著)谷 亜里砂 (編)鈴木真生 (表紙デザイン)Kakakiki著
感想
お話としては、人魚のメリカが人間になって、居場所を探すという感じ。
主人公が人魚というのは、面白いセンスだなと思いました。
個人的に読んで感じた印象は、三浦しおんさんとか、原田マハさんとかに系統が近いのかなあと。
文章に柔らかさがあり、主人公が感じている多様な感覚の表現という点で。
なので、そっち系が好きな人は、すんなり馴染めて、楽しめる作品だと思います。
文章にもクセをあまり感じなかったので、読みやすいというのも良い点。
ただ逆に言えば、パンチの足りなさが出てしまうのかなと。
これは、どうしてもトレードオフになってしまうので、難しいところですね。
自分は個性的な作品が好きなので、好みの問題だと思います。
また、これも分量の問題だとは思うのですが、説明が少し不足している点が感じられました。
泣く泣く削る作業は、自分も経験しているので、仕方がないところかなと。
あと、これはあくまで自分だったらという話ですが、最後に、主人公が感じた感覚を表現する一文があると、めちゃくちゃ締まった物語になった気がします。
文章を追加しなくても、最後の段落と最後の一つ前の段落を、入れ子にした方が良かったんじゃないかなあと。
たぶん、その方が読了感に大きな違いが出た気がします。
というのも、最後が説明で終わってしまっていて、わかりやすさや、しっくり感を出すなら、それで正しいんですけど、ことこの手の小説においては、余韻の方が重要なんじゃないかなって。
あくまで、個人的にですけど。
なので、余韻を出すなら、最後の一つ前の段落を最後にした方が、良かったんじゃないかなあという話。
まあ、これは個人的な好みもありますね。
ただ、自分が編集の立場だったら、そうするかなという話です。