衆議院選挙2024にて、自民党は議席を大きく減らし、自公合わせても過半数に満たない状態になりました。
過半数の議席を取らないと、衆議院での法案が確実に通らないため、これまでの慣習では連立政権を組むというのが定番です。
しかし、現状では、それが難しいと言われています。
自公の連立先として、最有力候補は玉木代表の国民民主党。
なので、選挙後は国民民主党と連立政権になるのでは?というのが大方の予想でした。
連立を組むことで、国民民主党の公約を盛り込みやすくなり、国民民主党から大臣や総理が生まれる可能性すらあったからです。
しかし、国民民主党は選挙の時から、一貫して自公との連立政権は無いと宣言していました。
それは2024/11/3現在も、一貫して国民民主党は自公の連立に入らないと名言しています。
結果として、自公は部分連合、つまり法案によって国民民主党に協力を求める方向で動いている状況です。
そのため「何故連立しないのか?」という疑問がずっと残ったままになっています。
ただ、個人的には「国民民主党は連立するより、連立を拒否した方がメリットが大きい」と考えているので、賢い戦略だなと。
法案の可否を握ることができる
最大のメリットは、法案の可否を握ることができることです。
連立した場合、基本的には連立与党が出した案について、可決、つまり賛成する必要があります。
ですので、連立前にある程度条件を詰める必要があるでしょう。
しかしながら、状況というのは刻一刻と変化します。
特に近年では、考え方や価値観が数年でガラッと変わってしまうこともしばしば。
そのため、最初は合意したけれど、後から合意できないこともでてくるわけです。
党内ですら、考え方に違いがあるのに、党が違えば考え方が違うのは当然でしょう。
そうなると、連立政権の党同士での話し合いがかなり大変です。
その際に連立時の約束というのが、どうやっても足かせになります。
結局、少数政党は連立したとしても、厳しくなるわけです。
しかし、現在の状況で連立しなければ、法案の可否は国民民主党が握ることができます。
もちろん、立憲や維新など他の政党もあるので、すべての法案について国民民主党が主導権を握ることはできないでしょう。
ただ、立憲は自民に反対することを目的とした政党ですし、維新も自民とは半目しています。
もし、立憲や維新が自民とくっついたら、それこそ、オイオイオイとなるわけです。
なので、その中間的なポジションである国民民主党が主導権を握りやすい状況と言えます。
毎回そのような状態になるわけではなく、今回の選挙結果がかなり特殊な状況を生み出してしまったと言えるでしょう。
時間経過とともに国民民主党の意見の価値が上がる
2つ目のメリットは、時間経過とともに国民民主党の意見の価値が上がるです。
自民にしろ立憲にしろ、国民民主党を仲間に引き入れたいと考えています。
ですので、なるべく国民民主党の意見を取り入れようと譲歩するでしょう。
そしてそれは、時間経過とともに国民民主党に譲歩しなければならない点(国民民主党の意向を汲まないといけない点)が増えていきます。
その理由は2つ。
1つ目は、自民と立憲含む野党が、競り合ってい状態であるため。
簡単に言えば、オークションで2人が値段を競い合っているような状態なのです。
例えば、自民は国民民主党の公約を5つ飲むという提案をしたとしましょう。
その後に、立憲が公約を6つ飲むという打診をしたら、自民は最低でも6つ、味方に引き入れるなら7つ飲むという提案をするしかありません。
そんな感じで、国民民主党が何もしなくても、勝手に自民と立憲が競い、国民民主党の価値が上がっていくわけです。
2つ目は、国民民主党が価値を釣り上げることができるため。
例えば、国民民主党はAという公約を飲んでくれるなら、Cという法案に協力しましょうという提案をしたとします。
で、相手がちょっと考えさせてくださいと時間を置いたとしましょう。
そして、最終的に国民民主党の提案を飲むと打診した際に、いやいや、あれはその時の提案であって、今はさらにAとBの公約を飲んでくれないと、Cには協力できませんといった形で、自分たちで価値を釣り上げることができるのです。
また、時間制限を設けて、相手に迫ることも可能でしょう。
例えば、AとBの公約を飲んでくれるならCという法案に協力しますが、返事は明日までといった感じ。
時間制限を設定することで、本来通らないはずの公約Bを通せるということです。
これも自分たちの意見の価値を高めていることになります。
自民にせよ、立憲にせよ、国民民主党との協議に時間がかかればかかるほど、国民民主党の意見をより多く取り入れる必要性が高まるのです。
もしこれが連立だった場合、そうはなりません。最初に合意してしまうのですから。
つまり、国民民主党の意見の価値は、最初に合意した時点で決まってしまい、それ以上、高まることはないのです。
ですので、連立しない方がメリットが大きいというわけ。
ライアーゲームに出てたリストラゲームに似ている
現在の状況について考えている時に、ドラマ化もされた人気マンガ ライアーゲームの敗者復活戦で出てきたリストラゲームを思い出しました。
リストラゲームとは、全員が50票持っていて、10回に分けて投票を行い、もっとも票が少なかった人がリストラ、つまり敗者になるというゲーム。
他にも細かいルールがあるのですが、それは置いといて、似ていると感じたのは、様々な要因からまったく投票が集まらなかった神崎直が、最終的にゲームの主導権を握るという点。
さらに、神崎直が持っている票が、当落に影響を与えるようになり、票の価値がどんどん上がっていくという内容になっています。
あくまで、弱者だと思われた人が、ゲームの主導権を握り、その価値がどんどん高まっているという点が似ているなと思っただけですが、少なくも今の国民民主党は、政治の中心にいることは間違いありません。
もし、さっさと自公連立に入っていた場合、国民民主党が政治の中心にくることは無かったでしょう。
個人的には、最初からこのような状況を狙っていたとは考えていませんが、様々な要因が重なって、結果として国民民主党が政治の中心になったと思っています。
ただ、この非常に有利な状況を、うまく使っているなと感じました。