評価・レビュー
☆4/5
古代ローマ時代のストア派哲学者 ルキウス・アンナエウス・セネカ(以下セネカ)が、母や友人へ当てた手紙で、人生についての考え方を書した本です。
ストイックの語源となったストア派でもあることから、そこには節制することで徳を詰むことがベースにあるなという印象。実際にはストア派はもっと深くいろいろとあるようですが、自分が感じたところでは、欲望を満たすために生きても時間を浪費するだけで、意味は無いというスタンスかなと。まあざっくりですけど。
古代ローマ時代なので、奴隷とかもいるし、それが当たり前の世界で、セネカ自身も裕福と言うか、恵まれた家で育っていることから、そのあたりの考え方は時代を感じました。
この手の本というか、昔のものって、結構回りくどい言い回しも多くて、それが知的であることを証明するための手段にも思えて、少し読みづらさはあります。なので、万人には勧めにくいかなというのが個人的感想です。
それでもかなり学びというか、ハッとさせられる文言は多く、個人的には大変勉強になりました。
学び
個人的な学びとしてメモした内容は結構多いのですが、その中でいくつか紹介します。
われわれの生涯も、それをうまく管理できる人にとっては、大きく広がっていく
まずは、
ばく大な王家の財産も、それを手にした持ち主が無能なら、あっというまに消え去ってしまう。だが、どれほどささやかな財産でも、有能な管理人の手に委ねられれば、上手に運用されて増えていく。これと同じように、われわれの生涯も、それをうまく管理できる人にとっては、大きく広がっていくものなのである。
セネカ. 人生の短さについて 他2篇 (Japanese Edition) (p.13). Kindle 版.
という内容。
これは心にザスっと刺さりました。自分の人生というか、時間を管理しているのは自分自身であり、その管理、つまりどう人生を生き、どう時間を使うかは自分の選択で大きく変わるという話です。
時間の使い方が悪ければ、あっという間に時間が過ぎてしまい、今日も何もしなかったなーとなってしまうことが多い自分にとってとても感銘を受けました。
と言っても、欲深き自分のような凡人にとっては実践が難しいとも感じましたが、それでも意識するだけでもかなり違いはでるように思います。
わずかな人たちしか達することのない年齢になってから人生を始めようとするとは、どこまで愚かなのか
次に紹介するのは、個人的に非常に共感した点です。
自分が死すべき存在だということを忘れ、五十や六十という歳になるまで賢明な計画を先延ばしにし、わずかな人たちしか達することのない年齢になってから人生を始めようとするとは、どこまで愚かなのか。
自分は現在46歳で無職。貯金はわずかしか無いですが、会社で働くことを辞めました。
残りの人生を考えた時に、ある程度稼いで歳を取ってからやりたいことをしようと思っても遅いのではないか?と感じたためです。もちろん、精神的なもので働けなかった時期があり、その影響も少なくはないですが、やはり60や70まで働いて、その時に好きなゲームをしても、もう昔のように楽しめないだろうなと思いました。
また歳を取ることで、自分の脳が衰えていくことをヒシヒシと感じていて、歳をとったらさらに衰えることを考えると、まだ動けるうちに、やりたいことをやっておきたいというのもありました。
自分の場合は欲望的な部分からそう考えましたが、結果としてセネカの言葉に近い考え方になったこともあり、その点は自分自身への励みにもなったかなと思っています。