
評価・レビュー
☆4/5
第3回人生十人十色大賞長編部門最優秀賞作品。
著者と主に母との関係性を描いた物語です。
物語では、著者が精神的にキツかった時期の話や、母親が認知症になり、自宅で一緒にいるべきか、専門の施設に入れるべきかで迷ったり、知らされていなかった母の秘密をひょんなことから聞いてしまったりと、人に人生ありだなと感じることができるエピソードがいろいろとあります。
また、エンタメ作品ではなく、私小説なので、そこが逆にリアルに感じることができ、心に響く作品でした。
自分も母が高齢になってきていることもあり、考えされられることも多かったです。
あと、自分もメンタルブレイクを経験していることもあって、他人事とは思えませんでした。
そのあたりも、感情移入しやすかったポイントかなと。
以下は本文を引用しつつ、個人的なメモ。
順番が見えてきたら後悔することがいっぱい出てくる
「順番が見えてきたら後悔することがいっぱい出てくる」 うつむき加減にボソッと言った。 「何の順番ですか?」 「死ぬる順番じゃ。所帯も持たんで長いあいだ家を空けて放蕩三昧、これから孝行尽くしても僅かなモンじゃ、もうまどえんけどのう」
自分も今年で48歳で、50代で亡くなる方のニュースを聞くたびに、棺桶に片足を突っ込んでいるなと感じています。
だからこそ、やりたいことをやっていこうという決心したわけですが。
もっと若いときに決心していれば、また違った人生だったろうなとも思いつつ、過ぎ去った日は取り戻すことはできません。
だからこそ、前を向いて、できる限りのことをしようと日々思っています。
最近、放送大学にも通い始め、心理学を学んでいます。
その中で、ユングの話があり、ユングは85歳で亡くなる10日前まで共著ではありますが、精神研究の原稿作成に関わっていたそうです。
見習いたいなと。
死ぬギリギリまで、自分もやり切ろうと改めて思いました。
また、その一方で両親のこともあり、両親との時間を大切にしたいなとも思っています。
若い時は、正直、ほとんど連絡することもなく、好き勝手に生きていました。
今は、週に1回は会うようにしていますし、できる限り、残りの人生を楽しんでほしいなとも考えています。
それが親孝行になるかはわかりません。
ただ、自分の中では、時間というものは貴重で、大切な人のために時間を使うと考えたときに、やはり親にちゃんと自分の時間を費やそうと。
お金持ちではないので、できることは、一緒にいることかなとも思っています。
家族がみんな来てくれるから
ある晩、母がポツリと言ったことがある。 「今が一番幸せ……」 これだけ体が不自由になって幸せもないものだと思った。 「家族がみんな来てくれるから」 母はそう言うと目を潤ませた。
病気になったことで、家族が集まってくれるようになったことが幸せだという内容です。
今の時代、良くも悪くも生き方が自由になった気がしています。
昔は、村に縛られていたというか、そこが世界のすべてだったのが、今は本人の意志さえあれば、世界に飛び出すことが簡単にできる時代です。
世界は稀な例かもしれませんが、日本国内で家族が離れて暮らすのは、結構普通なんじゃないかなと。
核家族化なんて言われて、親元を離れて自立することが当たり前の価値観になった感じです。
そのせいで、親と一緒に過ごす時間は、昔に比べたらかなり少なくなったと思います。
だからこそ、家族が集まる機会というのが貴重な気もします。
これは、家族だけではなくて、友人とかもそうかなと。
で、その流れは今後も進んでいくだろうなと思います。
独身の人が増えているのも、その傾向だろうと。
そういう流れが悪いとは言いませんし、止めることもできないでしょう。
だからこそ、逆に、人が集まること、Face to Faceで話すことというのが、重要になるのではないか?と個人的には思っています。