
評価・レビュー
☆5/5
性悪説を唱えた荀子の良いところピックアップ本。
日本語で説明があって、そのあと読み下し文と続くのが、個人的には良い点かなと思いました。
内容としては、ぶっちゃけて言うと、荀子やべーなって感じ。
性悪説の部分をそのまま引用すると、
人の性は悪であり、その善は作為を加えた結果である。今、人の本性として利を好むということがあり、これにそのまま従ってしまうと争いや奪いあいが生じて、譲るということがなくなってしまう。
また、本来的に妬んだり憎んだりするもので、これにそのまま従ってしまうと、他者を傷つけることになり、誠の心が失われてしまう。
また、本来的に五官から入ってくる欲望があり、美声美色を好む情念があり、これにそのまま従ってしまうと、淫らな行いが生じて、礼儀と条理がなくなってしまう。
このように、人の本性に従い、人の情に応じていくと、必ず争いごとが発生し、分限を犯し条理を乱し、混乱状態に至ってしまう。
だから、師法の強化や礼儀の道があってこそ、はじめて譲り合いの気持ちが生じ、条理にかなり、正しい政治に至るのである。
このように考えてみれば、人の性が悪であることは明白である。
その善であるのは、作為を加えた結果なのである。
という内容なのですが、まさにその通りだなと。
悪という表現については、悪人のようなイメージがありますが、この言葉を読む限りでは、野生とか自然状態とかに近い気がします。
これって、たぶん現代では当たり前な考え方かなと。
他にも、素晴らしい指摘というか、言葉が多く、久しぶりに感動しました。
全体的に読みやすく、かなりおすすめの一冊。
以下は、本文を引用しつつ、個人的な考えなどのメモ。
青は藍より出でて藍より青しの元
君子はいう、「勉強は中途でやめてはならない。青色は藍草から取るが藍よりも青くなり、氷は水からできるのだが水より冷たくなる」。
『荀子』勧学篇
勉強を続けることで、教えてくれた師よりも深い考えを得ることができるみたいな感じかなと。
昔に比べると、情報の変化が圧倒的に早いので、今は常に「青は藍より出でて藍より青し」状態な気もしていますが。
例えば、AIの登場によって、それまでの常識がどんどん変化していますよね。
もうAI無しの世界はありえないでしょう。
AIについて来れない年配世代は、もはや若者にサクサクと抜かれていくわけです。
この数年で、AIを使いこなしている人は、かなり多くの先人達を追い越したのではないでしょうか。
そして、そのAIも日々進化しているので、そこについていけなくなると、その時点で後進にサクッと抜かれてしまいます。
恐ろしい時代だなと。
環境が大切
君子は住むときには必ず土地を選び、交遊するときには必ず立派な人物につくようにする。それは、邪悪なものを防ぎ、中庸で適正なものに近づいていくためである。
『荀子』勧学篇最近読んだ本に、
FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略「環境を変え、自分が演じている役割を変えればいい」 | ネルログ
というのがあって、まさにそれと同じことを述べている内容。
住む場所や交友する人をちゃんと考えろという話です。
これはまさにその通りですね。
また、最近学んだのですが、世の中には生気を吸い取る人というのがいて、そういう人とのつき合いは避けるべきだなと感じました。
自分が得られるものがある人と、付き合うのが一番です。
自分の足で歩め
たとえ道は近くても、自分で歩いて行かなければたどり着けない。いかに小さな事でも、自分でやらなければ完成しない。性格が怠惰な人は、何をしても遠大な結果は得られない。
『荀子』脩身篇
千里の道も一歩から、継続は力なり、と似たような言葉が結構あるかなと思います。
とにかく、自分の足であるき、自分で歩を進めなければ、目的地にはたどり着けないという話。
当たり前のように思えますが、これって結構できないんですよね。
Youtuberになりたかったら、人からYoutuberにしてもらうのではなくて、自分からYoutuberになるための努力というか、行動をしないといけないということ。
国が傾いたのは治め方が間違っていたから
国を乱す君主という者はいるが、みずから乱れていく国というものはない。国をよく治める人はいても、それだけで自動的に治まっていく法というものはない。
『荀子』君道篇
失われた30年とか言って嘆いてみたり、それを取り戻す!と言ってみたり、いろいろとあるのですが、そもそも論として、失われた30年って誰のせいなんじゃいって話。
まあ、民主主義国家においては、最終的には国民の責任ということになるのかもしれませんが、少なくとも政治家たちが、真剣に政治に取り組んでいなかったことは間違いありません。
少子化問題についても、もうずっと前からわかっていたことで、今更感がとても強いですよね。
で、そういう政治家を選んでしまった自分たちにも問題があるわけですが。
というのも、今の日本の方向性を大きく決めたのは、小泉政権です。
聖域なき構造改革と称して、国民に信を問いました。
そして、二極化、成果主義、能力主義、契約社員の増加という道を、国民が選んだわけです。
その結果、先行きの不安から、結婚する人が減っていき、収入が少ない、いわゆる弱者男性を大量に生み、少子化に拍車がかかりました。
今の状態は、その時に、ほぼ決まっていたことなんです。
昔が良かったのかどうかという判断は、タラレバになってしまうので何とも言えませんし、女性の権利という点では、大きく変化しているので、今の方が良い社会なのだと思います。
ただ、その文、国民が苦しんでいるだけで、社会としては良い方向に行っているんだろうなという話。
何かを得れば、何かを失う。当たり前のことかなと。
結局、何が言いたいかというと、選挙行こうぜって話で、今の社会が嫌だったら、自分が望む社会を作ってくれる政治家に投票するしか方法は無いんだよなあってことです。