東大理三の悪魔 – 世界に対する新しい視点みたいなのが好きな人なら、楽しめる作品

投稿者: | 2024年9月10日

評価・レビュー

☆4/5

東大理三に受かりながら、仮面浪人をしている主人公が、図書館で勉強しているときに不思議な女性に出会い惹かれていく物語。

これだけだと、恋愛物に思えますが、SFファンタジーなのと、少し話が難解な点があるので、好みは結構分かれそうな感じです。

あんまり書きすぎるとネタバレになっちゃうので、そのあたりは個人的な見解を含めて後述します。

内容としては、作者の発想を楽しむ系なのかなと。

ダヴィンチコードとかに方向性は近いかも。ただ、ダヴィンチコードはエンタメ寄りでわかりやすいですが、本作はちょっと哲学的な感じでもあるので、あくまで方向性の話。あと、神々の指紋とかもちょっと方向性は近いかも。

謎解きとも違うので、世界に対する新しい視点みたいなのが好きな人なら、楽しめる作品だと思います。

逆にエンタメ作品かなと思ってみると、面白くないかもしれません。

また、前述したように、ちょっと難解な部分があるので、特に後半はまったく理解できないかも。

個人的には結構楽しめました。

以下、少しネタバレありで、いろいろと書いていくので、未読の方はご注意ください。

ちょいネタバレありの感想

「論理は1次元、理解は2次元、実感は3次元」からはじまり、最終的にウラも合わせての7次元で、それに聖書の解釈が入って、世界の理というか、世界の解釈について作者が考えたことが書かれています。

で、このあたりは、結構賛否が出そうなポイントかなと感じました。

設定が1997年ということで、個人的に作者の方と同世代かもという印象。

なので、自分とは全然違う世界観に触れることができたことは、とても興味深かったです。

ただ、聖書の行については、最初は整合性がある程度感じられたものの、途中から違和感というか、少々飛躍が過ぎるかなとは思いました。

聖書の暗号だったか?ちょっと細かいことは忘れてしまいましたが、どんな文章であっても、解釈次第で何とでも読めるというか、暗号が隠されている的なことが言えてしまうというのがあって、たしか同じような考え方で捕鯨に暗号が隠されていると言えるみたいな話があったかなと。

それ自体は小説ですから、良い悪いは無いのですが、東大理三というタイトルからすると、少し印象が乖離してしまっているように感じました。

1997年にはすでに世界の理の話として、超弦理論や多元宇宙論もあって、三流大学の自分ですら当時、そういうことを夢想するのが好きでした。

なので、もう少し物理学的な話が出てくるのかなと思ったのですが、そのあたりについてはあまり深く突っ込まれてはいなくて、文系的な内容がメインです。

そこが個人的には☆5ではなくて、☆4になってしまった理由。

“論理は1次元、理解は2次元、実感は3次元”という時点で、人間主体というか、主観による世界がメインになっているので、当たり前といえば当たり前なのですが。

また、実際に飛躍した考えを書いてしまうと、誰もついていけなくなるから、こういうテイストにしたのかもしれません。

そういう意味では、かなりエンタメ作品でもありますね。

個人的には、次元というのは、重ね合わさっているもので、人間が認識できる限界が3次元と考えています。

量子の振る舞いを確定しようとする行為は、次元を落としている、人間が認識できる3次元に確定させようとする行為で、結果として確率になってしまうという感じ。

わかりにくいかもしれないですけど。

何が言いたいかというと、そういう感じの筆者独自の世界の捉え方を知りたかったなあということです。

あと、超越的な何によって人がひらめくというのも、ちょっと文系的かなとは思いました。

神を否定しながら、神の存在を証明しようとしているような感じというか。その点も個人的にはちょっと違和感を感じた点です。

今の物理学の流れとは違うとか、そういう話じゃなくて、東大生が考える物理学の話を知りたかったというのが近いかも。

マルチバース的な話であれば、別にどんな物理法則も成り立つ可能性がありますし。

なので、もっとぶっ飛んだ感じにしても良かったのかなあとか。まあ、そうなると誰もついてこれないのかもしれないですが・・・。

ああ、個人的に一番近い感想としては、エヴァに近いかも。

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