映画 Winny – 日本が停滞している根本的原因が垣間見える

投稿者: | 2024年4月4日

評価・レビュー

☆5/5

社会問題にもなったP2Pファイル共有ソフト Winnyに関する裁判をメインにしたドキュメンタリー映画。

個人的には当時20歳過ぎぐらいで、Winnyはかなり話題になっていたのを今でも覚えています。

映画では最初の有罪判決までを主に描き、最後に無罪になったところで幕。

また、エンドロールでは実際にWinnyを開発した金子勇氏(47氏)の映像で締めています。

Winny事件については、様々な意見があるとは思いますが、少なくとも日本において大きな意味のある事件ということもあり、2023年にこうして映画になったことは個人的に良いことかなと。

ドキュメンタリー映画ではあるので、エンタメ感はあまりありませんが、当時Winnyを知っていた人が見たら、いろいろと感じるところはあるんじゃないかなと。

以下はかなりざっくりしたWinnyに関する説明と、個人的に感じていることについて書いています。

厳密には技術的に異なる点もあるかもしれませんので、雑感として考えてください。

Winnyとは

Winnyは簡単に言えば、誰かがアップロードしたファイルをパソコン同士でダウンロードできるソフトウェアです。

ポイントはパソコン同士という点。

普通インターネットはサーバーという専用のパソコンがあり、そこにみんながアクセスして、情報を得たり、ファイルをダウンロードしたりしています。

例えば、YoutubeはGoogleがサーバーを持っていて、そこに動画のファイルがあり、パソコンやスマホからそのサーバーにアクセスすることで、動画をダウンロードして見ているわけです。

しかし、Winnyの場合は、そのような専用のサーバーではなく、パソコン同士でファイルのやり取りができ、かつ匿名性が高いというのが当時の特徴でした。

実際に匿名性については、そこまで高くなく、結果著作権があるファイルをダウンロードした人たちが何人か逮捕されています。

Winnyがなぜ問題になったのか

Winnyが社会問題になったのは、Winnyでやり取りされているファイルが、著作権のある映画や音楽などだったため。

例えば、Winnyで映画の映像を入手した人は、DVDなどを購入しなくなりますよね。

そのせいで映画や音楽などが大きな経済的被害を受けていることが原因です。

つまり、Winny自体にはまったく問題はありません。

映画の中でも説明がありますが、ナイフで人を刺した時、罪に問われるのは刺した人であって、ナイフを作った人ではないということです。

だからこそ、当時、金子勇氏が逮捕されるとなった時には、激震が走りました。

なぜなら、自分が作ったソフトウェアが、自分が意図しないことで犯罪に使われた場合、そのソフトウェア開発者が逮捕されるかもしれないからです。

これは非常に由々しき事態で、人を刺した事件が起きるたびに、ナイフを作った人が逮捕されるような社会になる可能性があったため。

なぜ、そんなことになってしまったのか。

その理由は簡単で、新しいテクノロジーに対する恐れです。

歳を取ると新しいものを理解できない

自分も歳をとってより感じていますが、新しいものやわからないものに対して、間違った認識を持つ、レッテルを貼ってしまうことがあります。

例えば、LINE。

個人的にそれまではSkypeなど様々なチャットツールを使っていたのもあって、LINEがここまで伸びるとは思っていませんでした。

しかし、現在LINEは多くの人が使っている当たり前のサービスになっています。

完全に自分は読み違いをしていましたし、当時のLINEについてはクソだと思っていたぐらいです。

自分はIT関連の仕事をしていましたのもあって、新しい技術や新しいサービスに対して、それほど忌避感は無いのですが、LINEについては若者の間で流行っているということもあって、そこがたぶん読み違えてしまった原因かなと。

たぶん、20代の頃だったら、すぐに飛びついて、どんどん使っていただろうなと思います。

結局、Winnyについても同様で、若者たちを中心に爆発的に利用者が広がり、それを理解できない大人たちがWinnyについて誤った認識を持ったことが原因だろうなというのが、個人的な見解です。

なぜなら、前述したようにWinny自体には、何ら問題は無いからです。

問題なのはWinnyを使って著作権のあるファイルをアップロードやダウンロードしている人たちなので。

それが歳を取った人たちには理解できなかったというわけ。

正直、爆発的に広がったWinnyをただ規制するのではなくて、改良し、テクノロジーとして進化させていけば、おそらく違った未来があったように思います。

現在では例えば、分散型台帳、いわゆるブロックチェーンなどがありますが、そこまでたどり着ければ、著作権に関する問題もクリアできたでしょうし、日本からブロックチェーンのような技術が生まれて世界を席巻した可能性すらあります。

理解できないものを排除するというのは、人間に備わった性質なので、Winnyの技術の面白さを理解できなければ、やはり排除の方向に動いてしまうかなと。

未だに続く味の素問題

Winnyについては、そもそも理解が難しいというのはわかりますが、同じような事例に味の素問題があります。

個人的に味の素についてはまったく問題ないと思っていますが、未だに味の素は危ないと思っている人たちが結構いるのに驚きです。

味の素についても結局理解できないから怖いという先行イメージが強いのかなと。

自分が知っている例としては、味の素は危ないという人にチャーハンの素をおすすめされたことがあります。

完全におかしな話なのですが、味の素に対する悪いイメージをどこかで植え付けられ、そもそも味の素が一体何なのかも理解しようとしていないので、悪いイメージのまま引きずっているんだろうなと。

これもWinny問題と本質的には一緒だと思っています。

失われた20年いや30年、もっとかも

日本は近年成長がかなり鈍化し、それを失われた20年と表現されることがあります。

失われた20年については、様々な考察やデータを元にした言説がありますが、個人的に失われた20年を生み出したのは、この「理解できないものに対する恐れ」によってそれを排除してきた結果ではないかなと個人的には思っています。

結局社会の権力を握っている人たちが高齢者で占められていて、新しいものに対して理解ができず、それらを潰してきてしまったということです。

バブル崩壊は、その恐れをさらに強くしてしまったように思います。

Winnyもその被害を受けた1つかなと。

自分は出版系にいた時に、日本の出版社が協力して、電子書籍プラットフォームを作るべきだと主張していました。

まあ、一切受け入れられませんでしたが、結果として現在、電子書籍はKindleが未だにトップかなと。

自分も使っていますし。

20年ぐらい前の話ですが、自分が関わっていたのはIT系の出版社だったんですよね。

それでも電子書籍に対する抵抗感が強かったです。

他にもいろいろとあるのですが、たぶん、多くの人がそういう経験があるんじゃないかなと。

結局、決裁権を持っている人が承認しなければ、何も起こせないわけです。

それが日本全土で起きていて、結果として失われた20年になってしまったと思っています。

正直言うと、失われた20年ではなく、もう30年経ちますし、今後当分日本は苦しい経済状況になることは間違いありません。

なので、失われた時間はもっと長くなるだろうなあと個人的には思っています。

解決策はシンプルで、もっと若い人たちに決裁権をもたせることなんですよね。

でも、政治の世界を見ても、経営者の世界を見ても、高齢化から抜け出せていません。

未だに昭和感覚がとても強いです。

それを変えることは、おそらく難しいでしょう。

そんなことを映画 Winnyを観て改めて感じました。

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