ドラマ 悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~ 最終話まで見ると評価が180度変わる傑作

投稿者: | 2022年6月16日

評価・レビュー

☆5/5

最終回まで観て欲しいドラマ。序盤はポンコツ新入社員のドタバタものなんですが、本作の主題は「なぜ女性の管理職が増えないのか?」という話。

この主題に入るまではすべて前フリなので、最後まで観ないと本作の面白さが1ミリも伝わらないのが残念なところ。

https://www.youtube.com/watch?v=acAzaJtlNeU

軽いノリで見れる女性の社会進出の本質を描いた傑作だと思います。

話としては

ワークライフバランスや副業、リモート会議…『働き方』が大きな転換期を迎えている今、底抜けに明るい1人のポンコツ新入社員が、誕生する! その名は…田中麻理鈴。窓際部署に配属された彼女は、同じ部署で働く謎の先輩社員・峰岸さんから「あなた、出世したくない?」と、そそのかされる。デキない、しかし、メゲない麻理鈴は、各部署のクセ者社員たちが抱える職場の問題にぶち当たりながら、持ち前の明るさと、峰岸さんの小ずるい出世メソッドを武器にして出世の階段を駆け上がる! どうして、麻理鈴はがむしゃらに頑張れるのか?それは…一目惚れした名前も知らない先輩社員に近づきたいからさらに、峰岸さんが麻理鈴を出世に導くことにも理由があって…! ?暑苦しく働くのが青臭い?でも、一生懸命働くって、カッコいいじゃん! ニッポンのお仕事を明るくする、ラブ・ジョブ・エンターテインメント開幕!

悪女(わる) 〜働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?〜

原作は深見じゅん先生のマンガ 悪女(わる)。1988年〜1997年まで連載。もう20年以上前の作品なんですね。

その後、1992年に石田ひかりさんが主演でドラマ化。本作は今田美桜さん主演のリメイク版となります。原作とは異なる点が多く、現代風に作り変えられているのが特徴。また本作に石田ひかりさんも出演していてにくい演出だなと思いました。

今田美桜さんは本作が初主演らしいですね。とても爽やかな演技で好感が持てました。

中盤まではまあ普通

冒頭でも書きましたが、本作は中盤までの話は普通に新入社員の葛藤を描いた面白いドラマだなあぐらいの感じです。

この段階でかなりの人が振り落とされる感じ。最終話の1つ前、9話の視聴率が7%ということで、そこまで奮ってない感じです。

まあわからんでもないって感じです。

JK5からが本ドラマの真骨頂

終盤では女性管理職5割計画、通称JK5が推進され、会社組織がガラッと変わります。その結果、様々な軋轢が生まれ、会社組織としてうまく機能しなくなるわけです。で、それを主人公 田中麻理鈴が変えていくという流れ。

この構図が今のフェミニスト界隈の構図に酷似していて、個人的面白いなと思いました。

また、こういうドラマの登場でフェミニズムもちょっとずつ変わっているというのを感じます。というか、そもそも論としてフェミニズム自体は変わっているわけではないんですけど。

少なくともフェミニズムの名の下に男性を攻撃することを正義とするフェミニストはもはや時代遅れなんだろうなと。

そんなことを感じさせてくれるドラマでした。

第1話ダイジェスト

最近ではダイジェスト版を公開しているドラマも多いので、途中までダイジェストで見て終盤を普通に見るのも手かなと思います。特に終盤が素晴らしい作品ではあるので。

https://www.youtube.com/watch?v=HT7NDmA1_g0

以下若干ネタバレありの話

個人的に今の社会問題をガッツリ抉っている最終回が本当に良かったのもあり、ちょっとネタバレしてしまいますが、本作の良さを書いていこうと思います。

女性管理職を増やすことが目的?

本作では女性が働きやすい会社を作るという目的の下、女性管理職を増やすことを目的に組織改編がされていきます。

この手の話ってTwitterなどでも良く書かれていますが、そもそも女性管理職を増やすことを目的にすることが間違っているのでは?という話です。

本来あるべき姿は、会社の従業員が幸せに働けること。そこに男性や女性という区分けはありません。しかし、女性管理職を増やすことを目的にしてしまうと、その目的とはズレてしまうんですよね。

そもそもフェミニズムって、

フェミニズム: feminism)とは、女性解放思想、およびこの思想に基づく社会運動の総称であり[1]政治制度、文化慣習、社会動向などのもとに生じる性別による格差、性差別に影響されず男女が平等権利を行使できる社会の実現を目的とする思想または運動である[2][3]男女同権主義に基づく、女権拡張主義、女性尊重主義である[1][4]

フェミニズム – Wikipedia

であって、そこに女性管理職を増やすという目的は無いんですよね。女性という理由で管理職になれないことが問題であって、女性だから管理職にするというのは、フェミニズムの思想とは真逆なんです。

本作ではそれをしっかり描いているのが素晴らしいなと。

上司のダメな部分をみせる意味

個人的に本作で良かったなと思ったのは最終回で完全無欠な上司のダメな部分を見せるという点。これは管理職にとってとても重要なスキルなんですよね。

ダメな部分を見せることで、部下から信頼されるようになるため。信頼されることで、チームとして結果を出しやすくなります。例えば報連相というルール。上司が部下に対して厳しく求めますが、上司を信頼していれば、ルールが無くてもなんでも報連相してくれるようになります。上司を信頼していなければ、報連相しても意味が無いと思うからです。

そもそも完璧な人間なんていないという当たり前の真理があるのに、なぜ上司は完璧でなければいけないのでしょうか?

神様にでもなりたいのでしょうか。

その傲慢が心が、部下からの信頼を失い、チームがうまく機能しない理由です。1on1とか部下の話時間を増やす施策が多くの企業で導入されていますが、それが機能していないのも同様の理由です。部下に一方的に話せなんて、もはやパワハラと一緒。

そして、どんなに素晴らしい考えやシステムであっても、それを推進する人が信頼されていなければ、誰もついてきません。

管理職になりたく無い人

また本ドラマでは管理職になりたくない女性も登場します。職人のようなエキスパートして働きたいという考えの人もいるわけです。

それを女性管理職を増やさないといけないから管理職にしようとするのは、これもパワハラと一緒ですよね。。。

前述したように、そもそも論として「会社の従業員が幸せに働けること」が大切なのであって、女性の管理職を増やすのが大切ではないのです。

これはもうかなり前から言われていることですが、こうやって多くの人が見るドラマで描かれていることが、重要かなと思いました。


女性の管理職が増えないたった1つの理由

これは個人的に思っていることですが、女性の管理職が増えない理由は「昇進による会社システム」に問題があると思っています。

産休や育児で働く時間が減ってしまうと、どうしても仕事に割り当てられる時間は減ってしまいます。本作ではその改善策として、全員時短勤務という案も出されていますね。これはこれは面白いアイデアだなと思いました。

ただ、個人的には名プレイヤー≠名監督ならば、優秀な部下≠優秀な上司ではないのか?で書いたように、昇進して給与がアップするという仕組みそのものが間違っているのでは?ということです。

そもそもスポーツの世界では名プレイヤーだから名監督になるとは限りません。それは誰しも言ってることです。自明の理でしょう。

これはプレイヤーに求められる能力と監督に求められる能力が異なるためです。

同じように会社においても、仕事で成果を上げる能力と管理職に求められる能力は異なるはず、というか異なります。

しかしながら、現状の昇進による会社システムでは、管理職の能力がどれほど高くても仕事で成果を上げる能力が低いと昇進できないため、その能力を発揮できないわけです。

これが女性管理職が増えない問題の本質だと思っています。産休しようが、育休しようが、管理職の能力があれば管理職になれるのが本来あるべき姿ではないでしょうか?

つまり、それぞれの役割に最適な能力を持った人を配置するということです。めちゃくちゃ当たり前のことを言っているのですが、それが今の昇進による会社システムでは実現できないんですよね。

それを改善すれば、女性の管理職は一気に増えると思います。

まあ、女性という枠でひとくくりにするのは良くないですが、多くの場合、女性は人の話を聴く方が多いです。それって管理職に求められる重要なスキルの1つ。だから女性の方が実は管理職に向いているんじゃないかなと思ったりしています。

リンク